昔は桜が好きじゃなかった
昔は桜が好きじゃなかった。
テレビで花見に訪れた人のインタビューを見る度に「そこまでして見るものかね」と純粋に疑問に思っていた。
ところが最近長年の「桜嫌い」に終止符が打たれた。
先に言っておくが、はっきりとした理由やきっかけは分からない。
ただ、今年の春は桜の開花を心待ちにしていた。テレビの中の日本国民大勢と同じように。
よくよく考えてみればそもそも春が好きじゃなかった。
毎年4月1日を迎えるのが苦手だった。「迎える」というよりむしろ「迎えられる」気分だからだ。そいつは家でごろごろしている私に「起きろ」と否応なく迫ってくる。私はまだ3月31日で「何もせず」のんびりしていたいのに。
4月は私にとって陰鬱とした季節だった。
世の中の人々がこれからの「未来」に向かって希望に胸を膨らませるなか、私はただひたすらに下を向いて「過去」や「現在」に縋り付いている。そんな光景が毎年の恒例行事だった。
ところが今年はどうだろう。生まれて初めて自分から4月1日を迎えにいっている。さらに、桜の花がきれいだと心から思っている。一体私に何が起きたのだろうか。これからの人生に私も希望が持てるようになったということだろうか。
だとしたらこれは祝福すべきことだ。この記事はこの記念すべき4月1日という日をここに記し残すものである。
P.S. 先日某喫茶店で桜のデザインのグッズを爆買いしてしまったのはこの春の高揚のせいである、ということも合わせて記しておく。