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黄色い家(小説)
川上未映子さんという、すごいメディアに出ている方の黄色い家という小説を読みました。去年すごい売れていたらしい。今更ですが読みました。
おそらくは、1990年代当時、全く配慮されなかっただろう身近にいる精神疾患を持った登場人物が苦労し、苦労したまま終わるという、後味が最高に最悪な小説でした。現在の世間を反映しているような雰囲気もあるものの、この小説が売れてるって異常な世界だなと、そんな風に思います。
キャバやらガルバやら風俗やら、そんな場所でしか働けない女性がいることはなんとなく感じてて、でも、詳しくは知りたくなくて、みたいな自分の精神状況に容赦なく現実をブッ刺してくる小説で、こういう小説をたくさん読めば、男性は皆ヨンスさんのように優しくなれる気がします。
自分は男性なので、正直、登場人物の誰にも感情移入ができず、唯一感情移入できそうな主人公も、物語が続くにつれてどんどんぶっ壊れていくので何とも言えない気持ちになり、基本ハッピーエンドの小説ばかり選ぶ自分にとって、途中で読むことに挫けそうになることが多かったです。600ページぐらいあって、すげえ分厚い。水車小屋のネネとか、毒親にいじめられる系の物語って今のトレンドなのかな。ファンタジー作品とはまた違う感じの、王国ものとか、戦国ものとか、肉親に苦しめられる系の物語も昔からあるものの、子育て出来ない系の登場人物は身近で想像でき過ぎてやっぱり馴染めない。
黄美子さん
黄色い家には、様々な登場人物が登場するけど、誰が主人公といえば黄美子さんのような気がします。メインとなる人物は別にいるけど、全ての始まりは黄美子さん。助け合いだけでは、どうにもならない。精神的な病気は恐ろしいし、自分はそうでなくて良かったと心から思う。
黄美子さんはどこか不気味で、どこか魅力的に映るものの、その不気味さは常人ではないところから来ているのが、読んでてとても切ない。
絶対的にサポートが必要な状況であるものの、もう一人の主人公である花も追い込まれてしまい、それができないのもまた切ない。
とにかく切なくなるし、同じ状況の人がおそらく現実の世の中に本当にいるし、そういう人を助けられずにいる自分の無力感が嫌になります。
読後感として、切なさとか、無力感とか、いろんな感情がないまぜになる感じがあり、とりあえずため息つき、酒に逃げたくなります。女性が読むとまた感じ方が変わるのでしょうか。とりあえず男性にはあまりおすすめできないけど、読んで良かったと思える小説でした。 了