3. ドイツ大学病院の現場から見た、日本の医療との違い
第1章: ドイツ大学病院で働く日本人医師に聞く
今回はドイツで活躍中のK.H.医師です。匿名でなんとかインタビューに応じてもらえました。
Q: ドイツの大学病院で働くことになった経緯を教えてください。
A: もともと日本の大学病院で研修医をしていたのですが、より専門性を深めたいと考えたときに、海外での経験が大きな刺激になるのではと思いました。ドイツは医療制度が充実しており、大学病院の研究体制も評価が高いことを知り、実際に見学に行ってみて「ここで働きたい」と感じたのがきっかけです。
Q: ドイツの医療現場はどのように感じましたか?
A: まず印象的だったのは、働くスタッフの国際色の豊かさですね。ドイツ国内だけでなく、東欧やアジア、中東出身の医師や看護師が多数在籍していて、公用語としてドイツ語が使われますが、英語や母国語を混ぜながらチーム医療を行っているのが面白いです。また、日本よりも労働時間の管理が徹底されていて、休暇の取得なども計画的に行える点は大きな違いでした。
Q: 日本の医療との最も大きな違いは何だと思われますか?
A: 患者の「自己決定権」がより強く尊重されている印象です。治療方針を決める際、医師が一方的に提案するのではなく、必ず患者とじっくり話し合って合意を得るプロセスが徹底していると感じます。もちろん日本でもインフォームド・コンセントはありますが、ドイツでは医療スタッフがさらに踏み込んで説明やディスカッションを重ねるのが当たり前になっていますね。
Q: これからドイツで働きたいと考えている若手医師へ、アドバイスを一言ください。
A: 言語のハードルは確かに高いですが、ドイツ語圏で働くことで視野が大きく広がります。現地の文化や制度を理解しながら、チームの一員として多様なバックグラウンドを持つ患者やスタッフと協力できるのは、とても貴重な経験です。一歩踏み出すことで得られるものは多いと思いますよ。
第2章: ドイツ大学病院の医療制度と特徴
ドイツの医療制度は社会保険制度が整備されており、基本的には全国民が保険に加入する仕組みです。公的保険と私的保険に大きく分かれており、医療機関への受診時も日本と同様に保険証を提示する形です。しかし、日本との大きな違いとして、ドイツの大学病院は国家や州の資金援助を受けているため、研究体制や最新医療機器の導入が進んでいるところが多いのが特徴です。
さらに、日本に比べて労働時間管理が厳格に行われているため、医師の働き方が徹底的に保護されるケースが多いです。夜勤や当直などを含めた勤務時間が法律で規制されており、一定の超過勤務を行うと行政当局が病院を監視・指導する仕組みがあります。これにより、医師が過重労働に陥りにくい環境が整備されていると言えるでしょう。
参考サイト
Gesundheitsportal (ドイツ語) … ドイツの健康情報ポータルサイト
Bundesministerium für Gesundheit (BMG) … ドイツ連邦保健省の公式サイト
また、ドイツでは専門医制度も特徴的です。日本と異なり、研修医が一定の研修プログラムを修了した後、専門医試験を通過してようやく独立した医師としての資格を得る流れが明確にあります。大学病院で働く場合、この専門医プログラムを通じて高度な専門知識や技術を学ぶだけでなく、研究活動にも積極的に取り組むことが推奨されています。学会や研究会の参加が義務付けられる場合もあり、国際学会での発表や英語論文執筆を通じてキャリアアップを目指せる環境が整っています。
第3章: 日本の医療との違いと相互のメリット
患者とのコミュニケーションと「自己決定権」
前述の通り、ドイツでは患者の自己決定権を非常に尊重します。日本でもインフォームド・コンセントが普及していますが、ドイツでは治療のメリット・デメリットを事細かに説明し、患者が納得いくまで何度もディスカッションを行う文化があります。これは、日本の医療現場においても今後さらに重要視されるポイントと言えるでしょう。
働き方とチーム医療
ドイツでは医師のワークライフバランスが配慮されていることが多く、医師が過剰な残業を強いられない仕組みが整っている点が大きなメリットです。日本では依然として長時間労働が社会問題化している一方で、ドイツの大学病院での経験が、日本の医療現場にも働き方改革のヒントを提供する可能性があります。また、チーム医療においても多職種との連携がより深く、看護師や事務スタッフが医師と対等な立場で意見を出し合う体制が見られます。
国際学会や研究活動へのアプローチ
ドイツ大学病院で働くメリットの一つが、国際学会や研究活動に積極的に参加できることです。日本の病院に比べて研究費が豊富に割り当てられることも多く、新しい治療法や臨床試験を主導的に行いやすい環境があります。近年では日本人医師がドイツの研究プロジェクトに参加し、その成果を国内の学会や論文に還元するといった事例も増えてきました。こうしたグローバルな視点や研究スキルは、帰国後のキャリアにも大きくプラスになるでしょう。
参考サイト
Auswärtiges Amt (ドイツ外務省) … ビザ情報や海外赴任についての公的情報
DAAD (ドイツ学術交流会) … ドイツへの留学や研究に関する奨学金・プログラム情報
もしこの記事が少しでもみなさんの役に立ったら、フォローといいねをお願いします。
転職エージェントへの登録は無料です。行動のみが未来を変えます。
気になる方はこちらの無料登録リンクをクリック。
関連リンク:医師の資産形成/転職Lab登録リンクをクリック。