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日常の記 202001005-1011

● ○ ● 10月5日 ○ ● ○ ● 
記憶がない。

● ○ ● 10月6日 ○ ● ○ ● 
鼎談した。

● ○ ● 10月7日 ○ ● ○ ● 
雨、雨、雨。一気に寒くなった。昼間は取材をし、その後は浅草で『いきなり本読み』を見に行った。岩井秀人さん率いるWAREが主宰するイベントで、何度か見ている。俳優たちがある戯曲の脚本を読み上げるという企画なのだが、ほんっとにそれだけじゃなーい。と声を大にして言いたい。俳優っていう人たちがどういう風に、脚本というテキストから人物をとらえて、それを表現するか。この人はどういうしゃべり方をするのか、どういう間やテンポで話すのか、どういう人との距離感なのか、どういう相づちを打つのか。台本にはト書きと台詞が書かれているだけで、その人がどこで生まれたのか、どういう親に育てられたのか、どこで育ったのか、どういう本を読んできたのかなんて書かれていない。でも、そうしたバックグラウンドを瞬時に考え、台詞を発する。それを目の前で見られるのが本当に面白い。さらに、岩井さんが演出を加えていくとみるみるその人物像が立体的になっていく。もっというと、途中で役をチェンジしていくのだが、まったく混乱が生じないのだ。スクリーンで台本を見ながら俳優たちを見ていることもあるが、一つの役を複数が演じていてもそれにブレがないのだ。今回は、片桐はいり、水川あさみ、山内圭哉という重鎮たちが演じた。いやあ笑った。あと、このイベントのもうひとつの面白さは台本を公演とは違ったかたちで楽しめるということにある。戯曲というのは、普通の本で読もうと思ってもなかなか慣れないと難しい。頭の中で舞台が想像しにくいのだ、私だけかもしれないが。それを俳優たちに読み上げてもらうと、ものすごく場面がクリアになりストーリーが頭に入ってくる。しかも一場を数回繰り返すので、より台本への理解が深まる。今回演じた『キヨコ』という演目は見たことがあったものなのだが、その時と同じいやまた違った感動が本読みで得られた。大笑いした後に心で号泣した。

● ○ ● 10月8日 ○ ● ○ ● 
朝から雨降り。雑誌の撮影なのだが、小道具を持っていくのでタクシーで行けると思うと気が楽。最近出かけるときにiPhoneでドラマを見るのがクセになってしまっており、今日は『人間レッスン』を見ていたが、車の中で動画を見ると気持ち悪くなってしまい途中で止めた。以前から気になっていた『人間レッスン』は『李泰院クラス』でチャン・デヒの愛人の子という難しい役どころを見事に演じたグンスくんことキム・ドンヒが主演の学園ドラマだ。イテウォンはパク・ソジュンとかももちろんいいなと思っていたのだが、最後の方はキム・ドンヒにしか目がいかなくなっていた。ナイーブな表情がいい。『人間レッスン』は、始まった頃は暗そうだからなあと思って敬遠していたが、見始めたら留まらなくなった。キム・ドンヒ演じる高校生のジスは毒親に育てられ、学費を捻出すべく売春斡旋と警固するという闇家業に手を染める。また、裕福な家庭に生まれたギュリ(パク・ジュヒョン、クール美女)は、自分のことを見ておらず体裁ばかりを気にする親から自由になりたがっていた。そして、ジスの営む斡旋所で働くミンヒ(チョン・ダビン)も親が早くに他界しおばさんに養われていて、彼氏に貢ぐために体を売っていた。韓国の小説を読むと時折受験戦争の話が出てくるが、どこの国も同じで親も社会も高校生へのプレッシャーが強い。大人がつくってしまったひどい社会を生き抜くために子供のままじゃいられなくなった、子供たちがどう生きていくのか。やくざに絡まれたり、車で逃走したりとかなりファンタジーが入る内容ではあったが、誰にも言えない秘密を抱えて込んでいるジス、ギュリ、ミンヒを見ているとなんとか救ってやりたいと心が痛くなる。ドラマ1話が終わるごとに「周囲に困っている青少年を知っていたら、話してください」という字幕と共にサイバー青少年相談センター案内文面が表示されるのは、制作側の覚悟の現れでもあるのだろう。この作品は韓国国内では絶対に企画が通るものではなく、ネットフリックだから実現できたということがネットの記事に書いてあったが、確かにそうだろうな。

ユトレヒトに『Welcome to Sylvanian Gallery』展を見に行く。アーティストがシルバニアハウスをギャラリーに見立ててミニチュアを展示するというものだ。これが本当に素晴らしい企画で、アーティストのウィットも楽しめるし、彼らが美術史をどうとらえているかもわかるし、何よりもシルバニアは可愛い。どうなんだろ、美術館ではできない展示なのではないかな。どの作品も素晴らしくて、迷いに迷ったあげく、青木陵子さんの作品を購入した。

夜は会食。広尾の韓国料理屋に誘ってもらったのだけれど、毎日毎日韓国ドラマを見ていたので、コチュジャンの香りが恋しくて仕方なかったから、もうとんでもなく嬉しくておいしくて。シャンパンマッコリもするするいってしまったー。また飲みたい食べたい。

● ○ ● 10月9日 ○ ● ○ ● 
展示会に行く予定だったのを中止して家で仕事。コロナになってからだろうか、外に出る用事がおっくうになってしまっている。でもそのおかげで、本当に重要な用事は何なのかを考えるきっかけにもなっている。

● ○ ● 10月10日 ○ ● ○ ●
台風が迫ってる。朝から頭が重い。上野動物園の予約をとらねばとスマホのアラームが8時53分に鳴る。予約は9時からだ。しかし、朝ベッドの中でとろけたチーズを乗せたトーストを食べたいなと思って、起きたらすぐにいそいそ作り始めた。トマトソースがあったんじゃない?と夫。そうだそうだ、ピザトーストにできるわ。とタマネギをスライスして、トマトソースの上に乗せ、チーズを乗せてグリルへ。コーヒーを沸かし、素敵な土曜日の朝を満喫していたら、動物園のことはすっかり頭からなくなっていた。気付いたのは10時前だ。あああああ、2週にわたり予約を忘れていた私たちは急いでサイトにアクセスするが、土日午前はほとんど埋まっていて、午後の時間も予約ボタンまでは押せるのだが、同時にアクセスしている人が多いらしくそれに競り負けてしまう。時間差なのか。やっとのことで来週の予約を入れることができた。
8時53分にアラームが鳴って、ほんの7分の間にやるべきことを忘れてしまう。そんな自分に落胆した。

夫が午後オンライン学会があるというので、昼過ぎに子と2人でお出かけ。都写美のエキソニモ展へ。展示室自体は小さかったが、そこに24年の彼らの活動が凝縮していた。インターネット時代のメディアアートというと、その仕組みやメディア特有の技術にフォーカスされがちだが、彼らの作品は常に新たな技術やデバイスなどの一見目に見えづらい特徴から、インターネットがない時代から既にある人間関係やコミュニケーションを想起させる。もちろんプログラムを用い、インターネットを介してしかできない技術で作品を見せるのだが、そのもとにはやはり人間がいてその営みを遠くで感じるエモーショナルな作品なのだなと改めて痛感した。

● ○ ● 10月11日 ● ○ ● 
子を連れて友人宅へ。

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