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スキンヘッド家族

沖縄は、暑かった。
それを理由に、父と暮らしていた頃は長かった髪の毛をバッサリと切られ、私はショートカットになった。
服は基本的に、米軍基地のフリーマーケットで買ってきた、油性マジックの落書入りボロ古着Tシャツにハーフパンツ、キャップ。

眉毛が繋がるほど濃かったこともあいまり、他人から「ぼく」と呼びかけられる事が多くなった。

沖縄の夏は、更に暑かった。
ナベちゃんは、昔負った怪我が原因で髪の毛がほとんど生えないので常にスキンヘッドだった。暑がる私たちに、事あるごとにボウズの楽さをアピールしていた。
ぼく、と呼びかけられることに少しばかり慣れてきていた私は半ばやけくそに、まんまと
「暑いから、もうボウズにしたい!」
と自ら言った。ノリノリで、
「じゃあ〜、全員でボウズにしちゃおっか!🤗」
ということで、私たちは全員スキンヘッドの奇妙な家族風団体となった。

やってはみたものの、バリカンで刈り上げた頭を触ると案の定少し恥ずかしい気持ちになった。
バンダナ巻いときゃバレないバレない!と言われそうなんだ!と素直に納得した。
そう言った母は、バンダナから出すために前髪部分のみ髪を残していて、珍妙だったが本人は満足そうであった。

バンダナを巻いていればバレないという母の言葉を純粋に信じた私は、お気に入りの赤い小花柄のワンピースを着て赤のバンダナを頭に巻き、母の可愛いわよ!の一言に一抹の自信を貰って、公園に遊びに行った。
少し離れたところで女の子がひとりで遊んでいたけれど、人見知りの私は見て見ぬふりしてひとりで遊んだ。
バンダナを巻いてるから大丈夫だとは思うけど、あんまり近づいてワンピースなのにボウズなのがバレたら恥ずかしい。
その女の子は何やら大きな声で何かたくさん喋っていたが、沖縄弁が理解できない私には殆ど何を言ってるか分からず、こちらを見ている訳でもなさそうなので、話しかけられてるのか独り言なのかも分からず、
少し気まずい気持ちで無視をしていたところ
唐突に「マルコメ」という知ってる単語が耳に入りドキっとした。

マルコメといえばボウズ頭がトレードマークのお味噌さんだ。もしかして、私のボウズ頭がバレて茶化されてるんだろうか?バンダナ巻いてるのに!?

たまたまマルコメって言いたかっただけなのかもしれないと心を落ち着かせながらその子の方をチラチラ盗み見ていると、向こうも明らかにこちらを見て言った。
「☆¥%#*±×÷マルコメ。笑」
これはやはりボウズがバレている。
お母さんの嘘つき!
すっかり恥ずかしくなった私は、顔を真っ赤にして家へ逃げ帰った。

母にこのことを半泣きで報告したけど、なんて言ってたかは思い出せない。多分あはは、マルコメ君ね〜可愛いじゃない、仲良くなりたかったんじゃない?とかそんなフワフワした返答だったんじゃないかな。

とにかくこの日から、私はお気に入りの赤いワンピースを着ることはなくなった。

マルコメには似合わないもの。

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