455 米消費者物価 反応の大きさ
米FRBには二つの責務がある。物価の安定(PCE価格上昇率2%)と雇用の最大化(具体的数値目標はない)である。
1980年前半から続くディスインフレ時代は、専ら雇用の最大化が目標だった。なので、雇用統計発表が最大のイベントであった。今は、勿論、物価の安定が最優先である。なので、CPI発表が最大のイベントである。
(注)目標の対象はPCE価格指数であるが、それより発表が早いCPIが注目される。CPIのデータから、PCE価格指数は概ね推量できる。
インフレの鎮静化が怪しくなっている。にもかかわらず、パウエル議長は、物価鎮静化はbumpy(でこぼこ道)と言い、物価鎮静化には自信があると言ったり、わけがわからない。以前は、物価鎮静化に伴って実質金利(FFレート-コアPCE価格指数上昇率)が高くなり過ぎないように利下げすると言っていたが、今は、明確な理由もないのに、利下げすると言っている。不思議なことに、市場もそれを真に受けている。
本当の理由はわからないが、私の推測は何度か書いてきた。
・トランプ氏が大統領になったら、パウエル議長は再任されないので、バイデン氏支援のため。記者や投資家もトランプ大統領誕生に不安があるのだろう。暗黙にバイデン支援を是としている。
・高金利でFRBや政府の利払いが大変なことになっている。これが続くのは耐えがたい。よって、少しでも金利を下げたい。
で、肝心なインフレであるが、鎮静化のためには、賃金上昇率を抑える必要がある。そのためには、雇用市場を軟化させる必要がある。それができているかどうかはわからない状態だ。しかし、政府部門の雇用を除けば、要は民間だけの雇用は緩やかに軟化しているようではある。パウエル議長はそれに賭けている。
CPIについては、クリーブランド連銀が発表しているInflation Nowcastingが高い精度の予想を出している。今回のデータは、それよりわずかに高かったが、おおはずれしたというわけではない。しかし、金融市場(金利、為替、株価)の反応がすごい。それだけ市場の利下げ期待(予想)が大きかったということだろう。しかし、現実(物価上昇率)はそうはいかせない。
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