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TELLで使ったツールで振り返る2024年

大学では「TELL」という授業を担当しています。CALL で TELL をやってるわけです。なんのこっちゃ。

恥ずかしながら私はこの「TELL」という用語を知らず、担当が決まってからも「テルってなんだろう…」と思っていました。正体は Technology Enhanced Language Learning。アメリカの友人たちには「ピッタリじゃん!」と言われました。日本語では以下のように訳されているようです。

・ テクノロジーを活用した言語学習
・ テクノロジー支援型語学学習
・ 技術活用型語学学習
・ ICTを活用した語学学習
・ デジタル語学学習
・ 最新技術を使用した言語教育

全会一致でバチッと決まる訳語はなさそうですが、ま、だいたいあの辺のことだな、というのはわかりました。

とはいえ私はその分野の専門家ではありませんから、やっぱりよくわかりません。そもそもここでいう technology とは何を指しているのでしょうか。ちなみに事典にはこうあります。

Technology is the application of scientific knowledge to the practical aims of human life or, as it is sometimes phrased, to the change and manipulation of the human environment.

Encyclopedia Britannica. Technology.
https://www.britannica.com/technology/technology

ふむ。これらを踏まえ、新年度がはじまる直前の4月、私は自分の TELL をこう定義することにしました。

言語学習に関する知識や知恵、ツールを自分の生活や環境に応用することによって自らの学びを豊かにすること

まだ学生たちと出会う前。彼らがどういう理由で、何を目指して英語を学んでいるかも知りませんから、とにかくいろんな学習者が集まってくるとざっくり想定しました。授業を通じて学生たちがそれぞれ自分に合った道具ややり方を見つけ、それを自分なりに使って楽しんだり、効果を感じたりしてくれたらいいなと思いました。

というわけで、毎回なるべく多様なツールと使い方を投げてみました。普段のコーチングと違い、教室には各クラス25人もの学生がいますから全員にピッタリなんてことはあり得ません。各学期15回のチャンスの中で誰か1人でも、どれか1つでも刺さってくれればという願いを込めて、読み・書き・聴く・話す、単語、コミュニケーションなど切り口を変えて紹介しました。デジタルが優勢ですが、アナログもあります。主に宿題として課すことで少なくとも一度は試してもらって感想を聞きました。学生たちは「楽しかった」「ためになった」という好意的な声だけでなく、「うまく使えなかった」「やりにくかった」などの否定的なフィードバックも率直に寄せてくれるので、次のツールを選ぶときの参考になりました。また、学生たちが自分のお勧めを共有する場を設け、仲間から情報をもらい、仲間の学びに影響を与える経験もしてもらうことができました。紹介したやり方が後日、自主学習に取り入れられていたり、いつのまにか習慣化されているのを発見するのはうれしかったです。

以下、2024年に学生たちと一緒に使った主なツールと使い方をざっとご紹介します。

Calendly
学期序盤の個別コーチングに。その後はオフィスアワーとイベントの日程調整に使いました。

ChatGPT
ライティングの添削、質問やスピーキングの練習に。学生たちはプロンプトの出し方、回答の分析、AI に対する考え方など学びを広げていました。私も席替えや Quiz の作成、Quizlet のセット作りなどでお世話になりました。

Encouragement Cards
アメリカでよく見るミニカードを使って表現を学び、友達や自分を励ます文化や前向きな気持ちを体験しました。

Google Classroom
どメジャーですが、学校に関わりがなかった私にとっては新しいツールでした。資料や課題など主に情報共有に使いました。

Google Forms
Quiz や課題に。使用頻度としてはこれがいちばん高かったでしょう。学生にとっては自分の書いたコメントや質問、自主学習、リフレクションの記録、蓄積にも。

Google Maps
言語設定を英語にして、世界の街を歩きまわり、道案内の表現を学びました。以降ずっとスマホの言語を英語にしたままにしている学生もいるようです。

Google Sheets
Learning Tools の共有に。課題によって適切な場合は回答の公開に。仲間の学びを覗くことがいちばんの刺激になるようです。

National Geographic Learning Tools
教科書準拠のツールたち。教室ではプレゼンテーション・ツールが使いやすくて便利でした。学生たちは MyELT を主に自主学習で。好き嫌いが分かれました。難易度に難ありだからかも。

Quizlet
教科書の単語を覚えるのに。ユニットごとに Quizlet Live を楽しみ、毎回盛り上がりました。セットを作るのは大変でしたが、学生たちがあんなに喜んでくれるならしょうがないです。

Slido
毎回授業の最初に「今日のゴール」を投稿してもらいました。大喜利みたいになったり、謎のキャラクターが生まれたり、学生たちの個性が発揮されました。投票にも使いました。他のアンケートツールもいくつか試しましたが、結局これ一択になりました。

TED
教科書に掲載されているせいもありますが、意外と今の若者にも人気だということがわかりました。「えみさんの字幕を見つけました」と言われることも。笑

TED-Ed
TED は知っていても TED-Ed を知らない学生が多いことに驚きました。自分の好きな動画を紹介したり、TED-Ed 風に説明するプレゼンテーションをしたり。

YouTube
動画の視聴に。字幕、トランスクリプトの使い方や、英語系チャンネルを紹介しました。学生たちは授業で見た動画が気に入ると、そのチャンネルの他の動画をどんどん見ちゃうようです。

YouGlish
発音や文脈の確認に。「本当に言うんだー」と実感したり、地域による発音の違いに触れてもらうことができました。ハマるハマらないが分かれました。

Zoom
個別セッションと Language Exchange のイベントに。外国にいる日本語学習者とのリアルな対話は刺激になったようです。


「自分の好きな英語の歌を聴いて書き取り、歌詞を確認して発音や意味を調べ、読み上げてから歌う」という課題を出したら楽しかったらしいです。その後も勝手に続けている学生がちらほら現れました。

映画、ドラマ
洋画はもちろん、日本映画の英語タイトル、字幕やセリフから学んだり、お勧めを紹介しあいました。ちょうど『Shogun』が話題になっていたので関連動画や記事を教材にすることができました。

スマホのカメラ
課題やプレゼンテーションの機会を使って自分が英語を話す姿を撮影し、自分で見る体験をしてもらいました。最初は抵抗があるようでしたが回を重ねると慣れ、学習効果がわかると自主的に撮影する学生が増えました。

日記・スケジュールアプリ
自主学習の管理に。できた日・できなかった日を記録したり、やることリストを作ったり。これに関連して、『学習意識改革ノート』から「自分の時間の使い方を把握する」(p. 49) や「未来の自分に手紙を書く」(p. 99) を部分的に応用した課題を出しました。合う合わないが大きく分かれました。


異文化間コミュニケーションや日本文化を紹介する文脈で。大学図書館に蔵書がある本だと「読んでみよう」という気になるようです。自主学習では文法書や問題集のほか、英語で物語などを読んだという報告を見かけました。

その他
学生たちの間で人気が高かったのはDuolingomikanReadTheory、ポッドキャストなど。やはり気に入ったものが見つかると続けやすいようです。


ふう。こうして書き出してみると結構いろいろあったなと思います。記憶をたどるために授業で使ったスライドを見返したのですが、初期のスライドの見にくさ、構成の未熟さに愕然としました。どうやら私も成長していたようです。振り返りって大事ですね。



Photo by Rami Al-zayat on Unsplash

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