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始まりは青空 ー新しい地図5thAnniversary

1991年9月9日、SMAPの始まりは土砂降りの雨だった。
2017年9月22日、新しい地図の始まりは新聞紙上に広がった青い空。
それは2016年1月18日以降、彼らとファンを容赦なく打ち続けた土砂降りの終わりを思わせた。

「新しい地図」はグループ名ではない。
公式発表によれば、それは稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんのファンサイトの名称だ。
しかし例えば「NEW(S)MAP」、そんな解釈に象徴されるように、ファンを含む多くの人たちが、そこに単にファンサイトの名称という以上のメッセージを感じ取った。
そして、沈み込んでしまっていた心を再び浮き上がらせる希望を見た。

そのように私たちに明るい青空を見せてくれたこの新しい出発が、しかし彼ら自身にとっては、先の全く見えない真っ暗闇の中での船出だったことを知ったのは、それから随分経ってからのことだ。

香取慎吾さんはこの頃の心境について、今でもたびたびこう口にする。
「ゼロになろうとか、ゼロからのスタートって言ってたんですけど、ファンの人たちに怒られて。私たちがいるじゃないかと。ホントに申し訳ないと思って。ゼロじゃなかったんです。」/NHK『明石家紅白』(2022年7月30日)

結果的にはそうではなかったことを実感できたとしても、間違いなくあの2017年9月22日を迎えた時点での彼らは、そう覚悟していた。
「ゼロからのスタート」。
当時既に25年を超えるキャリアを持ち、しかも誰もが「国民的」と認めたグループの一員が、所属事務所を変えたという「たったそれだけ」の理由でそこまでの悲壮な覚悟をしなければならなかったということ。
しかも、それがある面では事実だったということの「おかしさ」を、あらためて思う。

そう。確かに彼らは「ゼロ」になった。それは主に地上波テレビのキー局と呼ばれる、いわば長く彼らのホームだったその場所でのことだ。
独立前から続いていたレギュラー番組は、独立直後こそそのまま継続していたが、まもなく全て終了した。
またレギュラー番組の終了以外にも、彼らが主要な登壇者として出演したイベントの報道で、彼らの姿だけが不自然に切り取られて映らないといった「異常」な扱いもあった。
もちろん番組終了には様々な理由があるだろう。事務所から独立しても変わらずに同じ番組に出演し続けるタレントの例もあるので、ニーズの問題だと片付けてしまうことは簡単だ。
しかし彼らを巡っては公正取引委員会の調査により、元の所属事務所であるジャニーズ事務所が民放テレビ局などに対して3人を出演させないよう圧力をかけていた疑いがあり、2019年7月、独占禁止法違反につながる恐れがあるとして、ジャニーズ事務所への「注意」があったことが明らかになっている。
このことからも少なくとも地上波番組での彼らの処遇に、彼らの独立に絡む何らかの不当な力が働いた可能性があったことは事実だ。(そもそも視聴者でもある消費者ニーズを意識しているはずの企業CMに、彼らが独立後も新規で器用され続けていることを考えると、「ニーズ」云々の根拠の不確かさは明白なのだが)

またもう一つ「ゼロ」になったと言わざるを得ないのが、彼らのキャリアの主要部分である音楽面だ。
言うまでもなく、彼らはSMAPとして数々の楽曲を生み出してきた。たとえ解散しても、彼らがSMAPとしてそれらを実演してきた事実は変えようがないし、それらが広く愛されてきたのは楽曲の良さはもちろん、それを歌ったのが彼らだったからということと全く無関係だとするのは無理がある。それにもかかわらず、独立後の3人はSMAP時代の楽曲を一度も実演していない。
しないのかできないのかはわからない。しかし少なくとも2017年11月2~5日にインターネット配信された『72時間ホンネテレビ』(AmebaTV)で稲垣さんの言った「曲名を言ったら怒られる」、草彅さんの「僕らには曲がないから」などの発言は、彼らがSMAPの楽曲を実演することに関する何らかの制約を感じさせるものだ。
ところがこれも、彼らと同じ事務所からの独立後に前事務所時代の楽曲を実演している先例があることを考えると、独立したから「ゼロになる」ということが決して自明ではないのだとわかる。
しかもこの5年の間、SMAPの実績自体が「ゼロ」にされかねない事態も起こっている。音楽番組で過去のヒット曲を紹介する場面で流れて然るべきSMAPの楽曲や、局に当然あるはずの映像が流れない例は未だにある。

あの日、私たちには土砂降りの終わりを告げたかのように見えた青空の後も、彼らには多くの理不尽が降り注ぎ続けた。いや、ある意味ではそれが始まりだったと言っても良いし、残念ながら今もそれは続いている。
しかしそれでも、「ゼロ」から描き始めた新しい地図には、この5年でたくさんの足跡が刻まれ、その地図は益々大きく広がろうとしている。

あれから5年経った今も、あの朝の驚きと、まっすぐに差し込んできた希望をはっきりと思い出すことができる。
本当は満身創痍で.その行き先は真っ暗闇だったのに、それでも新しい一歩を踏み出してくれてありがとう。いつもたくさんのワクワクを本当にありがとう。

#新しい地図5thAnniversary



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