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SMAP出演番組の再放送について、NHKに情報公開請求をしてみた件


以前、こんな記事を書いた。

2011年にNHKで放送された『プロフェッショナル仕事の流儀 SMAPスペシャル』(以下『プロフェッショナル』)の再放送に対する要望の多さは、NHKの発表からも明らかになっている。下記で紹介するツイートは2020年当時のものだが、要望の声自体はその後も引き続き上がっている。しかし、未だにそれは実現していない。

再放送の決定には、著作権を持つテレビ局と出演者の肖像権を持つ芸能事務所の判断が大きく影響するとされる。
公式アカウントのツイート内容が真実なら、同番組については視聴者ニーズに加えて、少なくとも番組側(局側)は前向きにその実現を模索していることがわかる。
そうなると、それでも再放送がなされない理由は自ずと絞られてくる。

ところで、公共放送でもあるNHKには他の行政機関の「情報公開制度」に相当する「情報公開請求」という手続きがある。これは2001年7月からNHKが自主的に始めた取り組みで、ホームページには「放送による言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者への説明責任を果たすことは極めて重要なことです。このため、自ら情報を積極的に開示する『情報提供』と、視聴者からの開示の求めに応じて文書を開示する『情報開示』の二本柱で、情報公開に取り組んでいます」とある。
対象はNHK役職員が業務上共用するものとして保有している文書(電磁的記録を含む)。ただし、「放送番組編集の自由を確保する観点等から、放送番組および放送番組の編集に関する情報を記録したものなどは開示の求めの対象外」とされている。
試しに「文書目録」の名の検索ページで「再放送」を調べると、以下の文書が見つかった。

・一般放送事業者に対するテレビジョン放送の再放送の同意に関する取扱内規
・再放送同意書
そこで、長らく疑問を持ってきた番組再放送の仕組みについて知りたいと思い、思い切ってNHKへの情報公開請求である「開示の求め」の手続きを取ることにした。

今回求めたのは、以下三点に関わる文書。

・再放送の同意に関する取扱内規(同意を必要とする範囲とその対象についての詳細含む)
・『新選組!』再放送の同意に関わる文書(特に出演者について、その申請先がわかるもの)
・『プロフェッショナル仕事の流儀 SMAPスペシャル』再放送の同意を求める文書。動き自体が無い場合にはその旨。

『新選組!』については、稲垣吾郎さん、草彅剛さん、香取慎吾さんが前事務所を退所して以降、過去に出演したドラマが地上波で再放送された初めての事例だったので、それがなぜ叶ったのか、権利許諾があったのなら、その申請先を知りたいという意図があった。

もちろんこれらは開示の対象外とされている「放送番組および放送番組の編集に関する情報」と見做されてしまう可能性はあったが、それでも再放送に伴う許諾業務は恐らく相当頻回に発生するに違いないし、法的にも厳格さが求められることから、それに関する明確な局内規程が存在するはずだと疑わなかった。
そして、それ自体は直接的に特定の番組に関わる情報ではないと想定し、せめて、例えば許諾を必要とする範囲や、許諾申請先(番組制作時の権利者か、再放送時のか、など)について記しているはずの規程だけでも知ることができればと考えたのだ。

ところが結論から言うと、三つの文書全てに関して開示対象外で受け付け不受理となった。
先方から説明を受けた理由を要約すると
・「再放送の同意に関する取り扱い内規」という文書は番組の再放送に関する文書ではなく、ケーブルテレビ等での視聴の為の「再送信」に関する規定を指す
・再放送に関しては個々の番組によって様々なケースがあり、局全体の統一マニュアルのような文書や許諾に関するひな型はない
・具体的な番組の再放送についての許諾申請等のプロセスは、開示対象外の「番組編成や企画に関わること」と見做される

またこの制度では出された判断に対して不服申立てを行ない、外部委員会による再検討を申し入れることもできるので、今回の件でそれができるか確認したところ、開示対象外とされている情報には編成権等が絡むので、外部委員会の再検討の対象外とのことだった。
ちなみに、どういう基準で再放送が決まるかについても明確なルールはなく、現場が総合的に決めることになるという。

例えば権力サイドなどから番組編成に口を出させないためには、情報開示に伴うこれらの制約は仕方ないことかもしれない。しかし既に放送済であっても、少しでも番組に関わることだと見做されれば文書の存在の有無も含めて全て開示対象外とは、正直かなり厳しいと思う。
少なくとも、これでは「再放送」に関しては完全にブラックボックスだ。

ただ今回のことで、逆に再放送時の許諾が必ずしも毎回必須の要素ではないということもわかった。なぜならそれ程厳密なら、むしろ統一された規程があって然るべきだからだ。
そして、それが現場裁量でしかないことに、この「再放送」問題を引き起こしている大元の問題が隠されているのではないだろうか。

NHKによれば再放送の可否は、あくまでも様々な事柄を勘案した上での現場の判断だ。
しかし、その中でも最重要だと思われる本放送時の反響、視聴者ニーズ、制作サイドの要望、そして特に『プロフェッショナル』では、2011年3月に起こった東日本大震災の復興支援という大きなテーマがあったことを考えるならば、その公共性、それらの諸条件を十分に満たしているこの番組の再放送を、公共放送であるNHKがここまで行わない理由とは、果たして何だろうか。
仮にそれが「権利許諾」に関わる理由なのだとしたら、そこがいつまでもブラックボックス化されていて本当に良いのか。

これまでの様々な事象から判断する限り、SMAPの過去映像や過去番組の権利は、恐らく前事務所の所有だと思われる。
本来はタレントのものであるはずの権利を芸能プロダクションが所有できるとすれば、それはあくまでも業務委託契約のもとで許諾業務等をタレントに代わって行うためだ。
それが万が一にでも、現在所属していないタレントについても、なおその権利を所有し続け、しかもその使用許諾を行なわないことによってタレントと局の不利益、間接的にはその番組を見たいと願う視聴者の不利益をもたらせているとするならば、それは道義的、社会的に大きな問題ではないだろうか。
少なくともエンターテインメントを標ぼうする企業がやるべきことではないと思うし、この状況が一刻も早く改められることを切に願う。


<筆者から>
私のnoteを、特にSMAPファンではないたくさんの方々にもフォローしていただいていることに感謝しています。今回書いた内容は、特にそのような皆さんにこそ知っていただきたいものです。
多くのファンが長い間、それぞれの場所で地道に声を上げてきましたが、ここに来てどうしても最後の壁を越えられないような手詰まり感を感じています。
ここから先は、たくさんの方々の目がこの問題に注がれ、疑問を持ってくださる方が一人でも増えることが状況改善の力になると信じています。
どうぞ引き続き関心をお寄せいただければ嬉しいです。よろしくお願いいたします。

※ぜひ、こちらも併せてご覧ください。
「オトナの事情」なんて知らない ー「SMAPの映像」がトレンドになった日

<2022年10月15日追記>
「そもそも、肖像権はタレント個人のものであるはずなのに、なぜ芸能事務所がそれを所有できるのでしょうか?」というご質問をいただきました。
そうなのです。私もそう思っていました。
ところが専属契約等で、こうした本来はタレント所有のはずの権利を芸能プロダクションに譲渡することは、決して珍しくないそうです。
もちろん、あくまでも業務委託のためで一時的なはずですが、専属契約を締結する際の契約書に契約解除後も専属期間中の権利義務を継続することが記載されていることがあり、そうなると、本当であればタレント本人か新しいプロダクションに承継されるはずの権利が渡されずに前のプロダクションに残るというケースがあるそうです。

私が参考にした
第二東京弁護士会:エンターテイメントの法務
には、その例として『テレビの出演契約などで、元プロダクションが二次利用の許諾をする運用となっていることもあり、出演契約の内容次第ではタレントの移籍後にトラブルが生じかねないケースもありますので、留意が必要です』とありました。
こうした契約上の制約によって過去の出演作の二次利用が許されないとなれば、公取委が問題にしたタレントの移籍や独立の妨げになる可能性は高く、個人的には改善に向けた何らかの是正措置が取られるべきだと思います。

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