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【Odyssey Oneman Tour】Sable Hills at SHIBUYA Club Quattro

経緯

Sable Hillsを見に行ってきました〜
1stリリース時から既にそのクオリティーがマニアの間では話題になり、その後もラウド/メタル両方の界隈で活動しつつ、海外フェスに出演したり主催フェスを開催するなど、若手国産メタル代表とも言えるほどの快進撃を見せるSable Hills。
2024年も2回目の主催フェス(FRONTLINE FESTIVAL)を開催するなど、変わらず精力的に活動。7月には3rdアルバムをリリースし、そのリリースを記念したワンマンツアーを開催するに至りました。
そして今回訪れたライブがそのツアーのファイナル、東京公演というわけです。
自分もSable Hillsは最近ちょくちょくチェックしていて、実際去年のワンマンライブなど何度か見る機会もありました。
そんな中発表された今回のワンマンツアー。しかし、めちゃくちゃ入れ込んでいるバンドでもないので、発表当初は正直見送りかなあと思っていました。
しかし、ある日彼らの新譜『Odyssey』を聴いたらあまりのレベルアップに驚愕。テンションが上がってそのままイープラスでチケットを購入してしまいました。
確かに、先んじてリリースされた「Battle Cry」や「No Turning Back」辺りはキャッチーかつスピーディーでいいなあと思っていたんですよ。でも更に驚いたのは中盤の展開。具体的には「Anthem」から「Carry The Torch」の流れですね。
中盤とも来るとアルバムとしてはダレがちな部分ですが、ここをガッチリとしたタイトなメタルコアナンバーで締めてくることにより、またもやキャッチーな曲が揃う後半へとスムーズに繋いでいます。またこの2曲がちょっと落ち着いた(メロディーのタイプとしてという意味)作風なのもミソ。時には硬派なナンバーを組み込むことにより、よりメタルとして信頼できる出来になっていると思います。
今作に関しては、他にもTakuya(vo)のスクリームが野太くなっているのも重要なポイントですね。よりパワフルになってメタルとしての攻撃力が増しています。
と、そんなこんなで今回参戦することになったわけです。

当日はまず新宿で進撃の巨人の映画を見てから渋谷へ。
今回の映画はアニメ4期となる【The Final Season】の中でも終盤のエピソードを再編集して一本の映画にしたもの。そのため、既に原作を読んでストーリーを知っているばかりか、アニメで映像としても見ていたものでした。しかもその映像をほぼほぼ流用しているため、ストーリー的には初見の要素はほぼありません。
ですが、やはり映画館の音響と共に見ると感じる迫力が段違い。巨人のスケール感や爆発音の衝撃がダイレクトに伝わってきて、家で見た時とは段違いの臨場感と恐怖を味わうことができました。
また、改めてアニメというペースが定まっている媒体でストーリーを追うと、キャラクターの心境も時間をかけて寄り添うことができますし、伏線回収や交差する物語が収束していく様もじっくり味わうことができて、より作品への理解を深めることができたのも収穫でしたね。
結末には賛否両論あるようですが、今回改めて個人的には綺麗にまとめたなあと思いました。まず、第1話のエレンの夢の内容やミカサの頭痛など、序盤からある伏線がここまで丁寧に扱われ、最終的に明らかになる流れは読者(視聴者)としても納得のいくものだったかと思います。またストーリーの結末も少年マンガらしい爽やかさもありつつ、しかし進撃らしい不穏な空気感も孕んだバランスの取れたもので、この塩梅も個人的には大満足。そう考えるとやはり上手いストーリーの展開だったのではないかなと。
中学生くらいの頃にアニメ1期を見てから追い続けて早10年余り、その集大成となる結末は何度読んでも(見ても)感慨深いものです。どうしても進撃の巨人の新刊が発売されるたびにドキドキしながら読み進めていた10代の自分が思い返されるんですよね。いや、完結までしっかり追い続けて、そして上手にまとめていただけて本当に良かった。
後半の巻末の嘘予告(単行本の予告ページの前に挟まれていたネタ的なページ)でシリーズとなっていた進撃のスクールカーストも今回初めて映像化され、それも感無量。というかそれを見にわざわざライブ前に新宿の映画館に足を運んだ、というくらいです。
ただのジョークのはずだったそのシリーズが、実は本編と繋がることが明かされる最終巻の進撃のスクールカースト。自分はこれをある種の別の結末だと感じていて、それを映像で見るとなんだか再び物語の完結を見届けたような気分に。いや、ここまで回収できるとは。そんな喜びを噛み締めました。
さて、そんなこんなで余韻に浸りつつ、空も暗くなってきたので渋谷に向かうことに。
いつも通りごった返すスクランブル交差点を抜け、フラフラ歩いているといつの間にかクアトロ前に到着。とは言ってもまだマーチの先行販売を行っている段階で、待機列はなかったため引き返すことに。結局向かいのビル内のイシバシ楽器で時間を潰しました。機材をぼーっと眺めているだけでも楽しいものですね。万年金欠マンなので手には入れられないけれど。
17時前に再度会場へ向かうと、さすがに待機列ができていたためそこで待つことに。CLUB QUATTRO自体がビルの4階にあるためか、待機場所は地上から4階までの階段。ですがいかんせん非常階段くらいのサイズ感なので、どう考えてもライブハウスのキャパシティには見合っておらず、学校の階段の踊り場くらいのスペースに50人待機する計算になっていたのは面白かったですね。仕方がないとはいえ無理でしょ。
実際はそこまですし詰めになることもなく、しかも割と整番が良かったみたいで、あっさり4階に呼び出されました。4階に上がると目の前には少し開けたスペースとロッカーが立ち並ぶエリアが。ここで更に少し待ち、物販と喫煙所の前を通過し、5階に上がってやっとフロアへ入りました。
こう書くと結構待った末の入場のような印象を受けるかもしれませんが、実際はかなりスムーズに入ったため、自分が入った時点でフロアはまだ広々としていました。
この時、後方でのんびり見るという案が一瞬頭をよぎりましたが、最近のマイブームは前方で周りの熱に巻き込まれながら見るライブ。そのため、思い切ってフロア前方へ足を進めました。
序盤こそ人がまばらだったフロアにも、その後次々とオーディエンスが入場。結果的に開演直前には7割ほどは埋まっていたかと思います。

さて、自分はこのライブハウス、渋谷CLUB QUATTROは初めて。
そのためワクワクしながらフロアへ入ったのですが、ここの構造はなかなか面白い。
フロアエリアは二段になっていて、一段下がった半円状のエリアと、それを取り囲むような一段上のエリアというように分けられています。ここの下のエリアがステージに面しており、上のエリアは自動的に後方となる形です。
上のエリアには壁際にバーカウンターがあり、更には下のエリアとの境の柵にテーブルと椅子が設置されているなど、少し落ち着いた印象。さながら生演奏付きのバーにでもいるような気分が味わえそうです。
一方下のエリアは普通のライブハウスのようなスタンディングフロアとなっていて、遠慮せずに盛り上がれそうな雰囲気。
このライブハウスは割と多種多様なジャンルのライブで使われるイメージですが、この構造を見るとその実情にも納得ですね。どんなファン層にも対応できる柔軟性が魅力だと思います。
あと、なんか全体的に色合いが落ち着いているのも趣向を感じますね。ただライブを見に来るためだけの空間じゃあないんだぞという意気込みが密かに漏れ出ているような気がします。どうりで洒落たアーティストもよくここを使うわけだ(?)。一周回ってサイクロンの密室感が根暗的には恋しくなるまである。
あと天井がそれなりに高いおかげで圧迫感がないのも快適。しかし、フロア内に2本柱が屹立しているのは玉に瑕。後方からは視界を遮ることになるし、その側に立つと左右どちらかのスピーカーの音が通りづらくなり、結果として音抜けが悪く聞こえるしとデメリットの方が大きい印象です(というかフロア内の柱のメリットってあるんでしょうか)。

ライブ

開演は予定時刻の18時ちょうど。
SEで「The Eve」が流れ、続けて「Odyssey」で本編スタート!!!!!!
スタートの完璧な流れに沿って、そのまま本編は『Odyssey』の完全再現コースへ。
途中、「Battle Cry」ではCrossfaithのkoie(vo)がゲスト出演するというサプライズも。曲も佳境に差し掛かり、koieのパートが始まった瞬間に本人が颯爽と姿を表すとフロアは一気に沸騰。急に前へガッと押しが入り、大歓声にも包まれました。自分はおそらくkoieは来てくれるんじゃないかなと予想してたので、特段驚きはなく。でも冷静に考えると、幕張メッセでワンマンライブを開催したりいくつもの海外フェスに出演したりしたバンドのフロントマンをこの距離で見られるチャンス、あまりに貴重でしたね。
その後も「A New Chapter」や「Carry The Torch」、「No Turning Back」と『Odyssey』からの曲を順調に演奏。
本編でのハイライトはやはり「Tokyo」でしょうか。アルバムリリース後も未披露のままの一曲となっていましたが、めでたくこのワンマンツアーで初披露となったナンバー。この曲はお前らの曲だ(意訳)とのMCを受け沸いたフロアに注がれるクサメロがあまりにメタルで沁みましたね。アグレッションだけではない、慟哭のメロディーの良さも伝えてくれるのがSable Hillsの良いところです。
本編はここで終了。アンコール(というより第二部と言った方が正確なのかも)は「The Path」からの「Embers」でスタート…といきたいところでしたが、「The Path」の生演奏後Takuyaがバックステージから現れず、再度「The Path」を演奏して「Embers」につなげるというアクシデントが発生していました。
そしてここからは旧譜タイム。1stや2ndから幅広く選曲したセトリで、「Snake In The Grass」などがプレイされていました。なお、途中のMCではRict(gt)の音が上手く鳴らず、BGMとして機能したなかったためTakuyaのMCがなあなあになってしまう緩い場面も。やはり長丁場のワンマンなので、こういう落ち着く瞬間があるのも悪くないですね。メンバーの素の部分も垣間見えますし、優しいひと時でした。
アンコール(第二部)は「The Eternal」で終了。メンバーがはけていき、これで終わりかと思いきや、まだフロアの照明は消えたまま。
これはもしかして、というひらめきが生じ、オーディエンスがSable Hillsコールをすると、メンバーが再び登場。
そしてまさかのダブルアンコは「The Envy」で開幕!!!!!!続けて「The Chosen One」までプレイし、このてんこ盛りの展開にフロアのボルテージは再度急上昇。ダイブもモッシュも俄然勢いを増してきて、改めてフロアのパワーに驚きつつ、自分もその勢いに乗せられて必死にメロイックサインを掲げました。なお、最後に自分の頭上にダイバーが降ってきて慌てて受け止めるハメに。実はこれを経験したのは初めてで、またライブにおける経験値が上がってしまいました。
こうしてボリューム満点のライブは幕を閉じましたが、全体的な感想としてはやはり気合の入った一夜だったなというもの。
まず演奏は全体的にカッチリ。
特に、リードギターであるRictのサウンドが通常時はバンドのアンサンブルの中に溶け込んでいるものの、リードフレーズを弾くときだけ浮き出るように存在感が高まるようになっていたのは好印象。もちろん太いリフワークも魅力的ですが、短音のリードフレーズが前面に出ると一気にヘヴィーメタルらしいエピックな雰囲気になるため、やはりメタルとしては外せないポイント。そのツボを押さえてくれていたのは嬉しいです。
一方、Wataru(gt)はリズムギターとして逆に一歩引いてバンドを支えるプレイに集中していた印象。ですが、コーラスではむしろバンドを引っ張るくらいの存在感がありました。『Odyssey』の一つの特徴として、彼の加入によるクリーンボーカルの導入が挙げられますが、やはりライブで聴くとその重要性を実感しますね。
バンドを支えるという意味では、Ueda(ba)とKeita(dr)もしっかりと貢献。Uedaのサウンドはしっかりとギターと帯域を分けていて、明確に低音を担当することで竿隊のサウンドに厚みを生んでいたかと思います。特にメタルではギターもベースも一緒くたになったサウンドになっていることも多いのですが、この日はガッツリ歪んだギターに対して、ベースは輪郭がはっきりした甘めの音を出していたため、どちらもしっかり聴くことができて楽しめました。Uedaの演奏には派手なベースソロ等はありませんが、その分鋭いギターサウンドをしっかり低音で支えるプレイに終始していて、これのあるとなしでは全体の印象は全く違うものになるかと思います。
そしてKeitaのドラムはタイト。今回要所要所のキメやブレイクダウンがガッチリと噛み合っていたのを肌で感じましたが、その安定感は正確なドラミングがアンサンブルの軸となっていたため成し得たものではないかと思います。
上記演奏面も大変満足のいくものでしたが、音響もバンドの良さを引き出すことに貢献していたでしょう。
まあ自分は左側の柱の右側面にいたため左のスピーカーの出音はほとんど聞こえず、あまり全体的にどうだったかなんてことはよくわかりませんが…。
ですが、そんな自分の位置でも特段不満はなくライブを満喫できたため、位置によってはもっと良い音響だったのかなと思います。
唯一Takuyaのスクリームは音が小さい場面もありましたが、他のメンバーのコーラスによって厚みが増し、結果しっかりとボーカルラインが構築できていたので満足でした。長丁場のステージでしたし、スクリームは疲弊が激しいという事実もありますからね。
そしてこの好演にフロアは当然のごとく熱狂。
最初こそ少し身構えたような雰囲気がありましたが、すぐに熱を帯びたフロアとなりました。
更に、Takuyaが曲間/曲中問わずサークルモッシュやメロイックサイン、WODからヘドバンと様々なムーブメントを次々に煽っていきました。もちろんフロアはそれに応えようとするため、ピットは回を重ねるごとに大きくなりますし、ダイバーは続出する大騒ぎ。バンド側の気合いに見合った熱量のあるレスポンスとなっていたかと思います。
個人的にはヘドバンをガンガン煽ってくれたのが嬉しかったです。そういうとこまでしっかり”メタル”なんですよね、このバンドは。芸が細かい。
あとは、『Odyssey』の完成度の高さを再度実感しました。
音源で聴いた時もびっくりしてチケットを買ってしまうくらいのクオリティーだとは思いましたが、やはり生で聴くともう一段レベルが上がりますね。
より重厚な音になっているためか、メロディーのクオリティーに加えて、アグレッションもしっかり感じられたため、更に満足。クサいメロディーと叩きつけるようなアグレッションが高度に融合していて、正にメロディック・メタルコアの理想形へと近づいているような、そんな印象を受けました。
無駄が削ぎ落とされているような感覚もありますね。音源を聴いていてもダレるパートはありませんし。
なお、個人的には何かあるのではないかと邪推していましたが、ライブ中/後の告知は特になし。何かドデカいものをぶち込んで来ると思っていたため、これは意外でした。まあ、そもそもこのツアーそのものに大きい意味があったんですかね。初めてのワンマンツアーらしいし。実際、MCではワンマンライブと比べるとワンマン”ツアー”の重みは違うという話もしていました。そう考えると、このツアーを完走することが2024年の彼らの最終目標だったのかなというところです。まあ具体的な話は出なかっただけで、来年も色々予定していることはあるそうなので、楽しみに待っていたいところですね。

総括

というわけで、Sable Hillsのライブの感想でした。
去年は代官山Unitで見て、今年は渋谷クアトロ。FRONTLINE FESTIVALも再び成功させた彼らは、来年はどこに連れて行ってくれるのでしょうか。
彼らの動向や戦略を予想するのも楽しいし、その答え合わせをするのも待ちきれない。今伸びているアーティストを追うのってワクワクしますね。無限大の可能性やまだ見ぬアイデアが飛び出てくる感覚、自分より前の世代のメタルやヴィジュアル系ばかり聴いてきた自分にとっては新鮮です。
さて、次のライブは12/13のJudas Priest!!!!!
メタルゴッドに謁見して2024年を締めたいと思います。

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