METAL BATTLE JAPAN 2024 at 代官山UNIT
METAL BATTLE JAPAN 2024に行ってきました〜
ドイツで毎年8月に開かれるメタルの祭典、Wacken Open Airで行われるイベント、Metal Battle。こちらのイベントに出場できるのは、それぞれ各国(地域)から1組だけということで、その日本代表を決めるために開かれているのがこちらのMETAL BATTLE JAPAN。
日本では2012年から開催されていて、2022年にはSABLE HILLSが、2023年にはPHANTOM EXCALIVERがドイツ行きの切符を手にし、そしてなんとそれぞれMetal Battle本戦でも優勝したということで話題にもなりました。
そんなMETAL BATTLE JAPANですが、自分も何年も前から存在自体は知っていて興味を持ってはいました。
それでもなかなか参戦する機会に恵まれなかったのですが、今回は遂にそのチャンスが到来。
しかも、例年に比べて会場やラインナップの規模感が豪華で、アクト発表後迷わずチケットを購入しました。
当日はまず恵比寿に12時前に到着。
駅前の家系ラーメン屋で腹ごしらえをしてから会場へ。
この日の会場は代官山UNIT。最寄り駅は代官山ですが、恵比寿からでも10分ほど歩けば着くほどの距離らしく、実際ぼーっと歩いていたら着きました。
UNITの前の道にできた待機列に並ぶこと少し。整理番号が2桁だったため、かなり早めに入場しました。
ここ代官山UNITを訪れるのは2回目。前回はSABLE HILLSの単独公演でした。
このライブハウスの魅力はなんといっても綺麗なところですよね。オープンは2004年とわりかし歴史のあるハコですが、建物や内装にはシンプルかつモダンな印象があり、個人的にはここ数年で開業したと言われても疑わないくらいだなと思っています。
さらに、広めの間取りと明るい照明でライブハウスにありがちなアングラ感を大幅に軽減しているのもポイントでしょう。土地自体は狭そうなのに何故かゆとりを感じる空間なのが不思議。
おまけに喫煙所もしっかりあるのも嬉しいところ。これだけ綺麗なライブハウスだと当然のように禁煙であるところが多いイメージがありますが、UNITはしれっと地下3階に灰皿がポンと置かれています。フロアより下の他の観客はまず来ることのないスペースということもあって、周りを気にせず吸えるのが嬉しいです。
さて、広めのフロアに入ってしばらくして開演間際になると、このイベントの審査員の1人であるライターの増田勇一さんがステージの端へ。
開会の挨拶的な話をカジュアルにされた後、トップバッターのFrostvoidを紹介。
イベントの性質上、出演順は公開されていなかったため、ここでフロアは大きく湧きました。
この時点でフロアの埋まり具合は7割ほど。時間が進むほどに埋まっていきましたが、コンテストバンド終了後にはまた少し余裕が生まれていました。そういう人は同日に渋谷で行われていたblessthefallのライブに向かったのでしょうか。
Frostvoid
本日のトップバッターはFrostvoid!!!!
北欧の風を感じるメロデスでしたね。
冷ややかながらも熱を持ったギターリフと低く唸るタイプなのにパワフルなグロウルの組み合わせは完璧。
加えてキーボードの淡く切ない旋律が所々顔を出すことで、”寒さ”や”寂しさ”といった質感が確立されているように感じましたね。
十分暴虐的なサウンドを奏でているにもかかわらず、受ける印象は寒色系の美しさ、というのがこのようなタイプのバンドの面白いところです。
一方、音響面では苦戦していたようで(多分)、なかなか個々の音が分離せず、一つの音の塊が襲いかかってくるような感覚がありました。まあ、その影響で逆にパワフルな仕上がりとなっていて、結果的にメタルとしては良いものになっていたんじゃないかとも思います。
なお、フロントマンの方はこの後早くからフロアに出てきて他のコンテストバンドやゲストバンドのライブを見ていました。この距離感の近さがライブハウスのいいところだよなあ。
SUGGESTIONS
2組目はSUGGESTIONS!!!!
Frostvoid終了後、特に暗幕等を下ろすことなく転換とリハーサルが進んだため、わかる人には次のアクトがすぐわかってしまう仕組みになっていました。出演順を非公開にしていた意味はどこへ…と思いましたが、なんとこれはドイツ本国からの指示によるものだそうで。
増田さんによるそんな公開転換&リハの経緯の説明ののち、SUGGESTIONSが紹介され、彼らのステージがスタート。
音楽性はニューメタルコアといったところでしょうか。ハードコアの軽快なリズムとは違う、タメのあるニューメタル的なヘヴィネスを感じました。
そういうバンドはデジタル方面、もしくはヒップホップ方面に寄りがちな印象がありますが、このバンドの場合はそのどちらでもなく。
ひたすら黒く重いリフがのしかかるように迫ってくる、ブラックメタルのような漆黒の質感がそこにはありました。
また、ボーカルの方のルックスとパフォーマンスがバチバチに尖っていたのも印象的でした。
まずスキンヘッドにアイシャドウ、そこにワイシャツというパンチのある出立ち。自分も含めて、彼がステージに上がっただけで何か異様な存在感を感じたオーディエンスは多かったかと思います。
そこに加えて過激なパフォーマンスの連続でフロアは一気にヒリつき、フロアにはある種の観劇的な雰囲気が漂うことに。
最初にマイクをガンガン自分にぶつけ出した辺りからあれ?とは思いましたが、そこからはマイクスタンドをブンブン振り回したりなんだりと大暴れ。
最終的にはステージから降りてバーカウンターの方まで歩いて行き、再び戻ってくるとフロアの中心でうずくまっていました。
kokeshiもそうですが、昨今は健康的なメタルが幅を利かせる中、こんな不健康かつ不健全なタイプのアクトは貴重ですね。自分はこういうタイプのメタルが好きなので、今回も彼らに思わず見入ってしまいました。
特に、パフォーマンスがハードコア的激情の結果ではなく、ブラックメタル的な絶望感を感じさせるものだったのにはなんとも心にくるものがありました。
今後もチェックしていきたいバンドです。
PARAMENA
そしてここ、3組目でPARAMENA!!!!
今回のバンドは、コンテストバンドもゲストバンドも実に多種多様な組み合わせだったと思いますが、じゃあこのPARAMENAにはどういう印象を受けたかというと…タイト。この一言に尽きます。
最初の一音から明らかな違いが見てとれました。粒の揃った正確なプレイにクリアなサウンドメイキング。単純に演奏の正確さ、および全楽器の音のバランスという点で考えると、今回のコンテストバンドの中では完全に頭一つ抜けた存在であることは間違いありません。
音楽性としてはDjentの影響下にあるメタルコア/デスコアといった感じでしょうか。不協和音的なシュレッドや繰り返されるぶつ切りにされた刻みリフなど、曲中にそれらしきフレーズが散りばめられていました。こういった音楽性を、前述した演奏面でのスキルで確実なものとしているところに彼らの強みを感じましたね。あのリフのキレはなんなのか、ほんとに。
また、演奏だけでなくパフォーマンスも上手かったのがこのバンドのもう一つの強み。ここはボーカルの方の尽力が大きかったでしょう。メタルコア/ラウドロック風のオラオラ系の煽りをフロアに投げ込み、それを受けたフロアはたちまちモッシュの嵐と化しました。挙句の果てにはブレイクダウンでは腕立て伏せやら腹筋やらする猛者まで現れる始末。この日のコンテストバンドの中では、間違いなく一番フロアを盛り上げたアクトでした。
それぞれのキャラクターが立ったルックスまでクールでしたし、かなりのインパクトを残したバンドでしたね。
Desolate Sphere
4組目はDesolate Sphere!!!
この日一の硬派なメタルバンドでした。
ジャンルとしてはデスメタルやスラッシュメタルあたりになるでしょうか。刻みにメロディーを混ぜ込んだリフと手数の多いドラムが実にメタリックでした。この日はメタルコアやハードコアをルーツとするバンドが多く、その中で完全にエクストリームメタル一本で戦う姿勢には雄々しささえ感じましたね。
とはいえここはMETAL BATTLE JAPAN。彼らのサウンドはオーディエンスには当然のように刺さり、結果フロアの大半は拳を突き上げて盛り上がっていました。
自分は少し予習不足であまり楽しめなかったのですが、体に染み込ませることで味が出るタイプのサウンドだと思うので、ちょっと聴き込んでみたいと思いました。
kokeshi
コンテストバンドのラストを飾るのはkokeshi!!!
自分にとって今回のお目当てのバンドだったのでフロア前方へ。今回、コンテストバンドが発表された時、正直kokeshiだけ少し異色なセレクトのように感じました(蓋を開ければ他にも個性豊かなメンツでしたが)。そんな彼らがこの場所でどのようなパフォーマンスをするのか、そしてオーディエンスはどんな反応をするのか。そんな興味を持ったことが今回のイベントに参加する一つのきっかけになりました。
さて、そんなkokeshiですが、リハーサルでは少しトラブルがあったようで、時間ギリギリまで調整。
それでもなんとか間に合い、ライブは定刻通りにスタート!
結論から言うと、いつもの彼らのライブでした。
確かに、20分という持ち時間の制約やコンテストというアウェーの空気感の影響を少しばかりうけているようには感じました。曲順も普段のライブとは違うようでしたし、亡無(vo)もいつになくギラギラしていたように感じます。
しかし、それは決してオーディエンスのウケを狙っていたという訳ではなく、パフォーマンスの方向生はいつもの通りでした。
「胎海」から始まった彼らのステージは、亡無の悲痛なスクリームが空間を切り裂き、メランコリーとデプレッシブとヘヴィネスが渦巻いている、激しさのなかにどこか寂寞たる世界が垣間見える音像を叩きつけていて、その様はつい1週間ほど前に見た時と変わりのないものではありました。
個人的には、今回下手のベースアンプ前で見れたので、純一(ba)の野太いサウンドをしっかりと聴くことが出来て満足しました。ここで初めて気づいたのですが、彼のサウンドはそこまで歪んでいないんですよね。ベース本来の豊かな低音がベンベンと響いていて、そういった点からもハードコアの影響を感じました。
そんな20分を駆け抜け、kokeshiのパフォーマンスは終了。その後これが果たしてこの日の客層にどれたげ受け入れられたのだろうと思っていましたが、Twitter(X)を見る限りだとかなり衝撃を与えていたみたいで、かなりのオーディエンスがkokeshiに言及していました。自分の好きなバンドがポジティブな形で話題になるのはいいもんですね。
Phantom Excaliver
ここまで計5組のコンテストバンドが終わり、張り詰めていた空気も少し和らいだところで、まずは増田勇一さんが再度の登場。ここまでのコンテストバンドでは毎度紹介の挨拶を行っていましたが、ここからは審査もあるので直接紹介するのは次のバンドで最後とのこと。
そして紹介したのはPhantom Excaliver!!!!!!!
正直、ここまで高クオリティかつ個性の強いコンテストバンドが続いたため、ゲストバンドは喰われてしまうのではないかと少し不安に思っていました。
ましてやPhantom Excaliverは去年の優勝バンドとはいえ、ゲストバンドの中では若手(と思っていましたが結成は2011年のようで、この日出たバンドの中ではなかなかの古株でした)。
下からの圧力はげに恐ろしい…と誠に勝手に震えていましたが、そんな心配は杞憂でしたね。
流れとしては「炎のラプソディ」から「やっさっさ」、そして「メタルは裏切らない」の3曲をのっけから一気に叩きつけるスタート(確か)。
まずこの曲選が功を奏し、フロアはさながらアンコールのような雰囲気に。皆拳を掲げ、"Metal never betrays us”の叫び、サークルモッシュで駆け回り…とアクセル全開。
加えて、曲中ではWackenの思い出などを交えたMCで、コミカルな調子にもかかわらず確実にオーディエンスのボルテージを上げていました。
このように、とにかくライブとしての進行が巧みだったのですが、それだけではないのも彼らの素晴らしいところ。
しっかり聴くと演奏のクオリティーも段違いなんですよね。
Matsu(gt)のシュレッドは一音一音粒が揃っていて、演奏そのものと音作りの両面において技術の高さを感じさせるものでしたし、Yusaku(dr)のドラミングもタイトながらスピードに乗っていて、この日彼らが持っていた爆発的な勢いを生む一助になっていたと思います。
いや、個人的にはこの日のベストアクトでしたね。早くどこかでまた見れたらなと思います。
余談ですが、ライブ中にKacchang(vo)が投げ込んだ剣を自分の横にいた人がキャッチしていましたが、流石に持て余していましたね…。自分だったら要所要所でシャキーンって掲げるのになあと思って見ていました。というわけでグッズ化希望です。
Serenity In Murder
ゲストバンド2組目はSerenity In Murder!!!!!
こちら、名前こそ知っているものの曲などは全然知らない状態で臨みました。
唯一知っていることがあるとすればAllen(dr)が正規ドラマーを務めているバンドであること。彼については元々YouTubeで何度か見かけるドラマーだという印象を持っていましたが、SATOち脱退後のMUCCのサポートメンバーを務めることになり、それからというものどんなドラマーなのか興味を持っていました。
そんなSerenity In Murderですが、ライブの印象としては、まあ手堅いな、というもの。Allenのタイトなドラミングも含め、きっちりとした演奏でした。Ayumu(vo)は、レースクイーンとしても活動しているということで、黒でビシッと纏めながらも流石に目立つルックス。しかしそんなことお構いなしに、高音域で思いっきりギャーギャー叫んでいて好感が持てました。伸びの良いタイプのスクリームやグロウルではなく、スラッシュメタルを想起させる短めかつピッチ高めのスクリームを使っていたのが意外でしたね。メロデスではあまり聞かないイメージがあるので。
以上、Serenity In Murderでした。Desolate SphereやFrostvoidと並んでオーソドックスなメタルを響かせてくれたアクトですね。彼らのようなバンドがいると、やっぱりメタル畑のイベントだということを強く実感します。
DEVILOOF
ゲストバンド3組目はDEVILOOF!!!!!
個人的には数週間ぶりの彼ら。
まず先日見た時と比べて音の良さに驚きました。さすがはUNIT。
スピーカーの向きに対する自分の位置も良かったのかなと思います。今回はPA卓のそばだったので。
フロアの一番後ろでしたが、低音の響きとメタリックな硬さが絶妙なバランスを保っていました。
パフォーマンスは桂佑(vo)を始め、安定したもの。それに加えて音楽性もこの日のファン層に適合していたのか、ピットができていたりフロアの反応も上々でした。
また、ヴィジュアル系だからってナメんじゃねえ的なMCは印象に残りましたね。DEXCOREやJILUKAもそうですが、しっかりラウド/メタルシーンでバリバリ活動しているにも関わらず、ヴィジュアル系という看板を掲げ続けていてくれる姿勢が素晴らしいです。ヴィジュアル系おたくの1人として非常に嬉しく思います。
というわけでヴィジュアル系の大物が彼らを何かしらのイベントに呼んでくれないかなあと思っているのですが、どうでしょうか…。
SABLE HILLS
本日のトリはSABLE HILLS!!!!!!
元々はFit For An Autopsyが出演するはずでしたが、ビザの問題だかで来日できず、急遽キャンセルに。
そのため、代わりにSABLE HILLSがトリを務めることになったという経緯がありました。
この前日には名古屋でDEX FESTに出演していただけに、かなり疲労も溜まっていたのではないかと思います。そんな中ライブしてくれただけでもありがたい…。
しかし、ライブ自体はそんな裏事情も微塵も感じさせないパワフルなもの。もう音もプレイも何もかもがパワフル。
まず音はかなり大きめ。耳栓をしていても迫力を存分に感じられるほどでした。
そしてバランスも良かったんですよね。流石にきめ細かく細部までクリアに聴き取れる、というタイプのサウンドメイクではありませんでしたが、メタルコアなので少々荒いくらいで結構。リフの鋭さをメインに全体的にガツンと響く重厚感のあるサウンドでした。
そして演奏のキレも抜群。
メタルコア特有の疾走感からスピードを落とす際のキメがビシッと決まっていて、その瞬間の空気が引き締まる感覚がよく分かりました。いや、こんなに上手いバンドだったっけ????
セトリとしては「The Envy」や「Odyssey」、「No Turning Back」、「Embers」あたりをプレイ。「The Eternal」まで聴ければ完璧だったのですが、まあそこまで欲張ってもね。
いや、メロディックメタルコアとしては完璧なライブだったのではないでしょうか。実際フロアも流石の盛り上がりで、今日一大きいサークルモッシュが発生していました。
どうやら今年もFRONTLINE FESTIVALを開催するようですし、行くっきゃないよなあ…。
まとめ
以上、METAL BATTLE JAPAN 2024の感想でした。
ちなみに、結果発表はSABLE HILLS終了後にあり、PARAMENAが優勝しました。まあ明らかに演奏のキレとオーディエンスの乗せ方が上手かったからね。
しかし、正直他のバンドもレベルが高く、PARAMENA以外のアクトが優勝していてもおかしくはなかったかと思います。
特に審査員がメタル畑出身の方が多かったので、もっとオーソドックスなメタルをプレイしているバンドが選出されても違和感はなかったでしょう。
まあそれだけレベルの高い一夜だったということですね。
ただ、この日唯一残念だったことは、自分のコンディションが悪かったこと。
そもそもこの前後は年度末ということもあり忙しく、ライブ自体には来れたものの、予習も満足にできなかった上にかなり疲れを感じていて、満足に楽しむことができませんでした。
いや、当日は楽しかったような気がしていたのですが、こうしてあの日のことを思い返してみると、もっと集中してステージ見ろよ、と言いたくなるくらいにはぼーっとしていたような気がします。
4月からは社会人2年目ということもあって、仕事という面でもよりエネルギーを使う場面が増えましたし、こんな状況下でもライブに全力で参戦したいのですが、どうなることやら…。
まあ、とりあえず次のライブはDIR EN GREY!!!!
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