右脳人間は年上を敬わない
後輩のK君とは、学年にして3年の差がある。
3年と言えば、学生時代なら大変な差である。
中高生なら同じ学校に在籍することさえできず、
大学生でもギリギリ顔を合わせるラインだ。
雲の上の存在と言ってもこの際差し支えない
(少なくとも私にとっては差し支えない)。
そう思うと、K君の日頃の態度に段々と腹が立ってきた。
今日こそは、年上を敬うということを覚えさせてやろう。
「というわけだから、今日から『様』付けで呼んでくれて構わないんだよ。」
「まず脳内で整理した部分を教えて下さい。」
「かくかくしかじかなのだ。分かったら今日から『様』をつけなさい。」
「先輩、普段喋らないのに時々弾けますね。」
「じゃあ『様』をつけるということでいいんだね。」
「何が『じゃあ』なのか分かりませんけど、お断りします。」
「なんて奴だ。君も運動部なら、先輩の偉大さは教わってきただろう。」
「僕は帰宅部ですよ。」
「エーッ!その体で!?もったいない。今からでも入部しなさい。」
「無茶言わないで下さい。」
「どうせ早く下校して喧嘩ばかりしてたんだろう。」
「いや、家に帰ってプラモ作ってましたよ。」
「エーーッ!その体で!?昔のプラモデルはそんなに重かったのか。」
「先輩だって別に運動部じゃないでしょう。」
「私か。私は中高6年間、空手部の主将だった。」
「そんな嘘ついて恥ずかしくないんですか?」
「Kよ…嘘というのはその人の病んだ心、
そしてそれを育てた環境が生み出したものなんだ。
だから嘘をついた人を責めてはいかん。」
「嘘をついた本人に説教されたのは生まれて初めてです。
と言うかやっぱり嘘だったんですね。
だいたい3つ上が偉いみたいに言ってますけど、
僕らぐらい『おじさん』になったら大して変わらないじゃないですか。」
「なっ!!なんてことを言うんだ!私はまだおじさんじゃない。青年だ。
この間もバスでおばあさんが、『おにいさん終点ですよ』と起こしてくれた。」
「相手がおばあさんだからだと思いますけど…
じゃあ先輩はいくつから『おじさん』だと思うんですか。」
「私よりひと世代上の人が『おじさん』だ。」
「奇遇ですね。僕もそう思ってました。」
こいつに”敬う”という観念を教えるには
まだまだ根気が必要なようだ。
※この記事は2007年までに公開した内容の修正・再掲載です。
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