ネットワークビジネスにハマって一家離散した話⑫ ~現実は小説より奇なり~
この物語はフィクションだったと願いたい作者の記憶をここに綴る2015年の物語である。
ケアマネ介護福祉士のブログ
時事ネタと介護を絡めて毎日更新中。常にケアマネージャー、介護福祉士、医療、介護従事者、介護している方に最適の情報発信します
コチラも始めました
https://www.instagram.com/kousikikeamanekaigofukusisi/
前回の記事はコチラ⇩⇩
~探索~
行方不明だと聞いても何一つ動揺しない。
敷地内に居るのは分かっている。
二ヵ月も家でダラダラ過ごし、現実逃避していた人間が当日どこかへ逃避する手段を用意しているわけがない。
明らかに敷地内だろう。
それもWi-Fi環境が届く屋内かその範囲内の屋外か…。
大声で捜索願を電話するだけで出てくるだろう。
私だったら電話をかけずに電話をかけたふりをしながら家じゅうを歩くだろうな…。
~発見~
一時間ほどたったのだろうか?
いつも通り家路へ着き、家事を済ませているとスマホが鳴り響く。
案の定、実家からの電話であるがもう面倒で電話すら対応を迷う…。
だが、鳴りやまない電話が家中に響き渡りながら知らない顔で家事をしているのも家族に怪訝な顔をされる。
仕方がない。
気が乗らないが電話に出る。
『見つかったんだよ。やっぱり家の中に居た。』
興奮した父親の声に苛立ちを覚えながらも料理をしながら話を聞く。
家の中に居たことなど推測が付いた。
まだ雪は降らないとはいえ、こんな時期に外で長い事いられるわけもないし、現代社会において未納があるとしてもWi-Fi環境では十分に機能を果たす携帯電話がないのは隠れている間も手持ち無沙汰だ。
あわよくば充電ができる場所に隠れるだろう。
幸いにも家は比較的広い。
コンセントの有無を考えなければ一日中探しても見つからないだろうが、スマホを充電しながらとなればかなり限られてくる。
実際に見つかったのは私が以前使っていた部屋のクローゼットから。
Wi-Fi環境も整っており、クローゼットの中にある鏡にはコンセントが付いている。
環境としては確かに完璧だ。
本人はのんきに警察の事情聴取を終え、スーパーのお寿司を食べて部屋に戻っている。
とにかく安心したと父親の安堵した声とは裏腹に私の脳内は違うことを考えている…。
そんな事よりも面接をすっぽかすこのろくでなしをどうするべきか?
真剣に考える必要があるだろうと思っているが口には出せない…。
もう仕事なんかする気はないんだろう…。
面接の度にこんな騒動を起こされてはたまったものではない。
最終的に実家には警察車両6台が集結する大事になっていたらしい。
もう親も無理に就職を勧めることはしなくなるだろう。
最早それすらも計算のうちに入っているのかもしれないな…。
そう考えてしまうのは私の性格の悪さなのだろうか…。
ここから時は止まり1か月ほど無職期間が訪れる…。
このままきっと子ども部屋おじさんになって、借金は一家総出で返済していくのだろう。
唯一まともに働いている長男だけがあまりにも不憫だったが、もう実家の人間ではない私には関係のない事。
相談を受けても口出しする身分でもない。
私にできることと言えば、毎日のようにかかってくる父親からの
『仕事もしないで昼間寝て、夜は一晩中誰かと電話しているようだ。いったいどうしたらいいんだ?』
という酔っぱらいの愚痴を聞く事だけだった。
MLMで友達もいないはずの子ども部屋おじさんまっしぐらな人間が電話…。
だが今思えばこのまま子ども部屋おじさんにでもなってくれた方がよほどよかったのかもしれない。
~急転直下~
父親からかかってくる酔っぱらい特有の毎日同じことを繰り返す人間テープレコーダーを聞く以外は特に変わった事はなかった。
だが、事態は全く関係のない所から急変するものなのだろう。
幼少期から返しても返しきれないほど恩を受けた親類の訃報が舞い込んだのだ…。
その日のうちに荷物をまとめ、再び実家を目指す。
田舎特有の葬儀やその他もろもろを含めると3泊4日は必要だ。
実家にどうしても帰りたくない。
だが頼れるところもなく、深夜から泊まるところも見つからない。
二日目からの宿は確保したが、初日は仕事を終えてからの出発…。
到着は深夜…。
どうしても実家で過ごす必要がある。
嫌な気持ちを押し殺し、仕事が終わるとすぐに実家へと車を走らせる。
訃報をただ悲しませてほしいが私にはそんな暇はないらしい。
父親から連絡が入る。
実家に向けてまだ車を走らせたばかりなのに気分が滅入る…。
夕飯の心配でもしてくれているのかとわずかながら期待して電話に出るが、そんなことはないらしい。
『弟が仙台で暮らす。お金の心配はいらない。今週末に引っ越しをするっていってる。もうなんだかわからん。』
私には一秒も悲しむ時間は無く、弟に『時と場合』という言葉を誰も教えてはいなかったらしい。
最早ふくさを持ったか確認しようとか、喪服のスカートがしわだらけかもしれないとか、私にとっての最優先事項だった事は確認する余裕もなさそうだ…。
この先が気になった人や、作者を不憫に思った人は是非下のサポートボタンを押してくださると光栄です。
ワーキングプアのケアマネ介護福祉士に毎日楽しく生きれる愛の手を…。