高尾山に登り、もうこれさえあれば人生にこわいものはないと思えた話 (前編)
先日、高尾山に登ってきた。
最近、色々なことがあって人生の岐路に立っている僕に、仲の良い同期が気晴らしにと誘ってくれた。
「自分を見つめ直すなら高尾山がいいよ、俺も前にパチンコで1ヶ月40万ぐらい負けたときに登ったから、いっしょに登ろう。」
僕の人生の悩みとパチンコの負けをいっしょにするなとは思いつつも、言われるがまま登ることにした。
山登りは、小学2年のとき以来約20年ぶりだ。
そのときは、標高約1200mの英彦山という山を登った。
高尾山は約600mと英彦山の半分、小2で英彦山を制覇した僕は、高尾山なんて雑魚キャラだろと思っていた。
だが、高尾山の地面を1歩1歩踏みしめるたび、高尾山のパワーというか、言葉では言い表せない底力のようなものを感じた。
簡単に言うと、高尾山を舐めていた僕に洗礼が降り注いだ。
待ち合わせ、マイナスイオン、夫婦の形、山登り、洗礼、山失、御朱印、山美、失恋、ムササビ、ロープウェイ、大山と五十嵐、人生最高
今回は、そんな物語。
14時頃、調布駅に到着。
いっしょに山を登る同期のもとへ向かった。
高尾山なんてどうせ観光用の山だからそんな気合い入れなくていいだろと、僕は普段通りの私服で行った。
駅のホームで待ち合わせしている同期が遠くから見えた。
(おいおい嘘やろ、、)
どんどん同期が近づいてくる。
どんどん同期の姿が鮮明になってくる。
嫌な予感は的中した。
普段通りの私服できた僕に対し、同期は、これからフルマラソンでも走るのかというぐらいのガチスポーツウェアでやってきた。
おい言ってくれよ、聞いてないって。
僕は、同期に憤慨した。
高尾山を登るときはスポーツウェアじゃないとしんどいということを教えてくれなかったというより、1人だけ抜けがけしているその精神が許せなかった。
僕は、その旨を同期に伝えた。
「いやなんでお前だけスポーティなん、前もって言えよ」
「いや電話で言ったじゃん」
「いやもっと強く言わんとわからんやん、2人のうち1人がガチスポーツウェアで1人が私服はやばいやろ、どっちもスポーツウェアかどっちも私服やろ普通」
「たしかにな、ごめん」
「いいよ」
すぐ許した。
謝られると弱い。
すると、続けざまに同期が、
「俺なんなら着替えとかタオルとかも持ってきてるよ、いっぱい汗とかかくし」
その言葉にまた憤慨した。
そして、またすぐ許した。
でもこの時点ではまだ、高尾山ごときで着替えなんか大袈裟だろと思っていた。
そんな甘い考えがすぐ打ち砕かれることになる。
15時前、高尾山口駅に到着。
電車から降りると、大量のマイナスイオンが体を包んだ。
なんて心地良い匂いなんだ、もう来た甲斐がある。
ここぞとばかりに深呼吸しまくった。
駅から高尾山までの道のりで、一旦腹ごしらえをしようと、ふもと付近のご飯屋さんを探索した。
高尾山はとろろ蕎麦が有名らしい。
なので、ふもとには蕎麦屋さんが立ち並んでいる。
僕と同期は、1番風情のある蕎麦屋さんはどこかと彷徨った。
だが、僕は現金がなかったので、結局PayPayが使える蕎麦屋さんを選択した。
風情もクソッたれもない。
店に入ると、座敷へ案内された。
座敷に座ってご飯を食べるなんて何年ぶりだろ、なんかわくわくする。
そう同期に伝えると、
「おれ座敷嫌いなんだよね」
また憤慨しそうになった。
だが、今回はこらえた。
この短時間で僕は大人になった。
広々とした店内には、僕の右隣のテーブル席におばあちゃんが2人、右斜め前の席に中年夫婦がいるだけだった。
おばあちゃんたちは楽しそうだったが、中年夫婦は終始無言だった、なんなら怪訝そうだった。
「注文お決まりですか?」
おばちゃん店員が尋ねてきたので、いざ注文へ。
僕は、冷やのとろろ蕎麦、同期は温かいとろろ蕎麦を頼んだ。
僕の中で、とろろ蕎麦は冷やだと決まっていた、てか冷や以外考えられなかった、温かいのだと汁にとろろが分散されてとろろの味が薄くなるから、なんか損した気がする。
故に、ここは冷やを頼むのが正解。
僕は、心の中で温かい方を頼んだ同期を小馬鹿にしつつも、損を惜しまず温かい方を頼めるなんて大人だなとも思った。
蕎麦がくるまでの間、今回の山登りの目的について確認し合った。
今回は、自分を見つめ直すための山登り、山と触れ合いながら、今後のことを考えながら、黙々と登ることによって登頂したときに何を思うか、何か今後の指標のようなものが見つかるんじゃないか、そう考えた。
なので、登頂するまでは2人とも携帯を扱うのを禁止にした。
故に、この蕎麦屋が携帯を扱える最後のスポットとなる。
ここで、僕は思った。
(ここが携帯を扱える最後の場所か、、山登りは何が起こるかわからない、もしかしたら途中で力尽きてしまうかもしれない、じゃあ後悔しないように連絡しておこう、あの子に)
僕は、思い切ってある女の子をご飯に誘った。
実に2年ぶりの連絡である。
ぜんぜん異性としてとかじゃなくて、ほんとに下心とかなくて、久しぶりに会って楽しく話しがしたい、ほんとに純粋に、ただそれだけだった。
淡白な文を送信し、そっと携帯を閉じたところでとろろ蕎麦が到着した。
美味すぎた。
とろろが二日酔いの僕の胃に沁み渡る。
温かい方のとろろ蕎麦にだけ卵がついていたので、なんか損した気分になったが、そのことを口にすると負けた気がするので黙っておいた。
秒で完食し、PayPayで支払いを済ませた。
最初から最後まで、右斜め前の中年夫婦は会話を一切していなかった。
2人とも怪訝な表情で、天ざる蕎麦を黙々と食べていた。
あれが夫婦の形かと、逆に微笑ましく思えた。
店を出ると、僕たちはもう戦場に出る戦士のような面持ちしていた。
今から戦いだ、そう思いながら歩いていると、目の前にお土産屋さんが現れた。
可愛らしい和菓子の詰め合わせが売っていたので、同期に「彼女に買って帰ってあげなさい」と指示を出した。
荷物になるので、下山してから買って帰ることにした。
そして、高尾山の入り口に到着。
ロープウェイに乗り込む軟弱者たちを横目に、僕たちは、高尾山という名の戦場に足を踏み入れたのである。
いよいよ、戦いの火蓋が切って落とされるのだが、今回はここまで。
高尾山に辿り着くまでの過程だけで、まさか2500文字を超えるとは思っていなかったので、今回は前後編に分けさせていただく。
「いや同期に憤慨するくだりとかとろろ蕎麦のくだりとか長すぎるだろ、もっと省けよ馬鹿たれ」
こんな心ないことを思った人はまじでうるさいです。
自分が優しくないことを自覚してください、そしてもっと寛大になってください。
次回、山登り編スタート。
乞うご期待。
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