プログラミング教育の必要性
iphoneの誕生から9年、スマホによるネット社会が出来上がったと言える現代において、そのネット文化がまだ根付いていない分野がある。学校教育である。私立高校こそ、一部の進学校ではタブレット端末を生徒に購入させ、教材、授業内容を配信することで復習、課題等ができるように「現代」にあわせてきた。それに反して、公立の学校は遅れを取っている状態である。
公立学校でも、ICT活用授業と言って、PC・タブレット・プロジェクタを用いた授業をしてはいるが、その目的の多くは生徒が興味を持つ工夫どまり。「タブレットを使わなければこの授業は成り立たない」なんて授業はあまりないわけだ(もちろん数年後にはどうなっているか分からないが)。
そんな状況の中、2020年から小学校で「プログラミング教育」が行われようとしている。詳しくは文科省が議論したまとめ
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/122/attach/1372525.htm
を読めばいいが、この教育の目的は「プログラミング的思考」を育むこと。これには賛同できる。IT社会が発達し、第4次産業革命としてAI、完全自動運転、IoT、ビッグデータなど、まさしく働き方が変わる時代が近づいているからだ。
過去にデジタルカメラの普及によって写真屋が衰退したように、研究によれば日本では10年〜20年後には、49%の仕事がAIに変わると予測されている。例えば、事務員やタクシー運転手、宅配便配達員、オペレーター、受付係、管理人など、ざっと挙げただけでもこれだけある。仕事のあり方が変わるほどの変化に対して、やはり学校教育も内容を見直す必要がある。将来ますますコンピュータに触れる機会が必然な環境の時代において、コンピュータサイエンスに関する学習(日本ではプログラミング教育)はもはや必須教育と思われる。
プログラミング教育を行うにあたり、「難しそう」というイメージがつくが、Scratch(ビジュアルプログラミング)は専門知識を必要とせずに直感的に覚えることができる。まさに「プログラミング的思考力」を養うにはうってつけのツールである。さらにこのScratchはウェブアプリケーションであることから、インストールする手間が省けるのも魅力である。このツールに限らず、他にもVISCUIT(ビスケット)やプログラミンなどがあり、小学生でも楽しく遊んで学べるものは多く存在する。
ただ、中にはわざわざプログラミング教育を取り入れなくても、国語の文章作成や、算数の読解問題等で論理的思考を育てればいいのでは、と疑問に思うかもしれない。だが、重要なのは「現代に合わせた論理思考」を養えることと捉えている。プログラミングにおいて難関なのは、作成したプログラムにエラーが発生した時である(もしくは思ったように動かないとき)。このとき、どこが間違えているのか、どこを改善すればいいのかを考え、組み直していき、完成させた時の達成感は計り知れないものがある。算数の計算問題でも一応はそれを味わうことが可能だが、プログラミングの比ではないだろう。
もちろん懸念材料も存在する。教える教師の力量だ。基本ロジックの指導は必要だろうが、作るときまで1から10まで「作り方」を教えてしまっては意味がない。基本さえ定着させておき、あとはゴールを用意しておけば子ども達が勝手に学んでいくだろう。それにも関わらず、しつけを強要するあまりに昨年問題になった「3.2+5.8=9.0」が不正解とみなされた事例のようなことが起こっては、すべてが無駄な時間と化すことだろう。教師側が教育内容を十分に理解していなければいけない。他にも、プログラムにエラーが起こった時など、子どもがさじを投げそうなときにどれだけサポートできるかも重要だ。
教師の力量を懸念してはいるが、いま学校はブラック企業化しているのも問題である。プログラミング教育の他にも、道徳教育の教科化が小学校では2018年度から始まる。既存の取り組みを排除せずに、新しい取り組みが次から次へと増える一方な状態は異常と言える。労働環境の見直しも必要だろう。
プログラミング教育が実施される2020年まであと3年。文科省で議題にはあげられているが、学校現場にはまだ何も降りていない状態である。どれだけ良い施策でも、指導者がそれを熟知しなければ子ども達は何も学べずに終わってしまう。円滑に進めるためにも、そして子どもたちが将来のためにも、十分な下準備を行った上で、取り組めるようにしたい。