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西南西には妻がいる

今年は2/2が節分の日らしい!
ということで恵方巻きを作る計画を立てていた
妻は仕事、僕は休み
なので妻が帰ってくるまでに僕が恵方巻きを作る約束をしていた

妻が帰ってくるまでにかなり時間がある
だから僕は、立ち飲み屋さんへ行った
最初に飲むのはビールと決めている
これはスムーズに注文できる
ところが僕は、優柔不断だ
おつまみを何にするか、決めることができない
コンビニのお弁当コーナーとパンコーナーを行き来して10分くらい悩む不審者タイプだ
お店の人が痺れを切らして
「何か頼みますか?」
と聞いてくださった
「決めれないタイプで…何かおすすめありますか?」と聞くと
「うちは漬物屋の立ち飲み屋なんです、だから漬物がおすすめです」
と教えてくれたので、お漬物を頼んだ

しかし、これがいけなかった
お漬物がうまい、うますぎる
これはビールではなくて日本酒にしよう
と僕は日本酒に手を出した
最高の組み合わせで酒が止まらない
そうこうしている内に
美味しい
を超えて僕の中には
好きだ
という感情が芽生えてしまった

いけないことだとわかっている
でも
本能が止めることを許してくれないのだ
僕は、家に帰って妻と約束した恵方巻きを作らないといけない
でも、日本酒が5杯目ともなると
もう恵方巻きを作ることは頭から消えており
僕は、目の前にある漬物と日本酒に
完全に溺れていったのである

家に帰って気づいたら寝ていて起きたら20:30だった
妻からラインが来ている
「20:40には家に着くわ」
あと10分で材料を買って恵方巻きを作らないといけない
僕はスーパーに走った
もしかしたら、何らかの形で遅れて帰ってくるかもしれないじゃないか
終わりよければすべてよし
できる人間は、できる方法を考える
できない人間は、できない言い訳を考える
俺はできる、絶対できる!

家に帰ったら妻が家にいた
「おい、今まで何をしていた?」
「すいません僕はある種恋に近い形で溺れてしまい、その気持ちを抱いて寝ていました。これはもうもはや浮気です、許してください。」

恵方巻きを作って
妻に先に食べてもらっている間に
他のおかずを作る
なので僕は
後追いで恵方巻きを食べる形となった
食べ終わってソファでくつろいでいる妻を見ながら恵方巻きを食べた
妻は黙ってスマホの画面に目を落としている
お漬物と日本酒にとはいえ
浮気をして約束を破ったからか
少し不機嫌そうだ
僕は黙って恵方巻きを口に入れた
今は喋る時ではない
と本能が悟ったのだろう
デリカシーのない僕でも、それは感じることができた

僕は気づいた
毎年どこかの方角を見て恵方巻き食べないといけないということに
僕はただ、ただ、不機嫌な妻を見て恵方巻きを食べただけだ
自分が蒔いた種か…と思いながら僕は
今年の恵方巻きを食べる時の方位を調べた

西南西だった
西南西には妻がいる
僕は、西南西に位置するソファに座っている妻を見ながら
不機嫌な妻に話しかけてはいけないと思い
黙って恵方巻きを食べた
完璧だった
自分が蒔いた種が、開花した

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