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企業買収のための道具と化した会計 〜 取得原価主義から時価主義へ
企業買収のための道具と化した会計 〜 取得原価主義から時価主義へ
1. 取得原価主義の意義とは?
会計の基本原則の一つである 「取得原価主義」 は、資産や負債を取得時のコスト(取得原価)で計上する方法です。この手法は、
客観性が高く、操作の余地が少ない
企業の財務状況を保守的に評価できる
という特徴があり、長らく企業会計の基盤となってきました。
例えば、100万円で土地を購入した場合、企業の貸借対照表には 100万円の資産 として記録されます。この土地が10年後に市場価格500万円になったとしても、取得原価主義では、帳簿上の評価額は変わりません。
しかし、近年の国際会計基準(IFRS)では 「時価主義(フェアバリュー会計)」 へのシフトが進んでいます。これは単なる技術的な変化ではなく、企業買収のための「会計操作」が絡んでいると言われています。
2. 時価会計への移行とその仕訳例
時価会計(フェアバリュー会計)とは、資産や負債を 「現在の市場価値」 で評価する手法です。これにより、企業の財務諸表が市場の変動を反映しやすくなります。
仕訳例:時価評価の適用
【取得原価主義の場合】
(土地を購入)
借方:土地 1,000,000円
貸方:現金 1,000,000円
10年後、市場価格が5,000,000円になっても、帳簿価額は変わらず 1,000,000円のまま です。
【時価会計の場合】
土地の時価が上昇し、決算時に評価替えを行う場合、
(時価評価調整)
借方:土地 4,000,000円
貸方:評価差額 4,000,000円
これにより、企業の資産価値は5,000,000円に更新され、株主や投資家に「企業の資産が増えた」とアピールできます。
3. なぜ時価主義に移行したのか?
一見、時価会計は「企業の実態を正しく反映するための進化」と見えます。しかし、これは 企業買収のための道具として会計が利用されるようになった ことと無関係ではありません。
時価評価による「見せかけの企業価値」
企業の資産価値を市場価格で引き上げることで、買収対象企業の評価額が変動しやすくなる。
企業が時価評価を利用して、財務諸表をより魅力的に見せることで、投資家や買収企業の関心を引くことができる。
外資が企業を「買い漁る」ためのツール
時価評価を利用することで、企業の資産価値が一時的に上昇し、高値で売買される可能性が高まる。
一方で、評価損が発生した場合、企業価値が一気に下落し、安値での買収が可能になる。
このように、時価主義の導入は、会計を単なる 「透明性の向上」 という名目で進めながらも、実際には 外資のM&A(企業買収)を助長するシステム として機能し始めています。
4. グローバリズムと会計の危険な関係
グローバル経済の進展に伴い、IFRS(国際財務報告基準)の採用が世界中で広がっています。その結果、
企業買収がより簡単に
企業の財務諸表がリアルタイムで評価され、買収の判断が迅速に下せる。
時価評価により、資産の急激な増減が発生し、企業の価値が不安定になる。
国内企業の脆弱化
時価評価の変動が大きいため、企業価値が下落しやすくなり、外資による買収のチャンスが増加。
外国企業が国内企業を「適正価格」で買収しやすくなり、日本企業の独立性が損なわれる。
本来の会計の目的を逸脱
企業の実態を正しく評価するという本来の目的よりも、企業買収のための「調整ツール」として機能し始めている。
実際に、M&Aを仕掛ける企業は、時価評価を利用して財務戦略を立てている。
5. 会計は誰のためのものか?
取得原価主義は、企業の安定性と信頼性を重視した伝統的な会計手法だった。
時価会計は、企業の市場価値をリアルタイムで反映するが、買収戦略のためのツールとして利用されやすい。
グローバリズムの進展とともに、外資が企業を買い漁るための「会計の武器化」が進行している。
本来、会計は 「企業の財務状況を正しく伝えるための道具」 であるべきですが、近年では 「企業の売買を促進するための道具」 に変質しつつあります。
今後、我々はこの変化をどのように捉え、企業の独立性を守るためにどう対応すべきなのか。時価会計の導入がもたらすリスクについて、今一度考える必要があるのではないでしょうか。