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中小企業が従うべき会計ルールとは?


【解説】中小企業が従うべき会計ルールとは?

■ はじめに

企業が適切に会計を行うためには、それぞれの規模や業態に合った会計基準を適用する必要があります。特に、中小企業にとって会計基準は経営判断や税務申告にも影響を与える重要な要素です。今回は、中小企業が従うべき会計のルールについてわかりやすく解説します。


1. 日本における4つの会計基準

日本には、企業の規模や業態に応じた4つの会計基準が存在します。

  1. 大企業会計基準(日本基準 J-GAAP)

  2. 中小企業の会計に関する指針(中小指針)

  3. 中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)

  4. 国際会計基準(IFRS)

特に、中小企業向けには「中小指針」と「中小会計要領」が存在し、それぞれの企業の実態に応じて適用されます。大企業は一般的に「日本基準(J-GAAP)」や「国際会計基準(IFRS)」を適用しますが、中小企業にはより簡素化されたルールが適用されるのが特徴です。


2. 中小企業の会計基準の選択肢

中小企業は、以下の2つの会計基準のどちらかを採用することが可能です。

■ 「中小企業の会計に関する指針(中小指針)」とは?

中小指針は、大企業向けの会計基準を簡素化したものであり、時価主義を基本としています。大企業向けの日本基準(J-GAAP)に沿った形で毎年改訂されるため、最新の国際会計基準の流れも一部取り入れています。

この基準の特徴は次の通りです。

  • 日本の大企業の会計基準に基づいている

  • 時価評価を基本とし、国際会計基準の変更に対応

  • 継続的な改訂が行われる

そのため、金融機関や投資家向けの説明を必要とする中小企業にとっては適用しやすい基準となります。

■ 「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」とは?

一方、中小会計要領は、「多くの中小企業には中小指針の適用が難しい」という背景を受け、2012年(平成24年)に公表されました。これにより、会計の知識が少ない企業でも簡単に導入できるようになっています。

この基準の特徴は次の通りです。

  • 会計の専門知識がなくても対応できる

  • 取得原価を基本とし、時価評価は適用しない

  • 国際会計基準の影響を受けない

主に、小規模な企業や家族経営の企業が活用するケースが多いです。


3. 中小企業が会計基準を選択するポイント

中小企業がどの会計基準を採用すべきかは、以下の点を考慮して決定することが重要です。

① 企業の規模

  • 大企業に準じた取引が多い企業 → 中小指針の適用が望ましい。

  • 小規模で簡易な会計処理を求める企業 → 中小会計要領を適用する。

② 取引先や金融機関への説明義務

  • 金融機関や投資家との関係が深い企業 → 最新の会計基準に対応した中小指針を採用。

  • 家族経営や地元の小規模取引が中心の企業 → より簡素な中小会計要領を採用。

③ 会計リソースの有無

  • 会計専門スタッフがいる場合 → 中小指針を採用し、精緻な財務報告を行う。

  • 外部の税理士に依存している場合 → 簡易な中小会計要領が適している。


4. 会計基準の選択が経営に与える影響

会計基準の選択は、経営判断や資金調達、税務処理に大きな影響を与えます。

(1)金融機関との関係 中小指針を採用することで、金融機関からの信用度が向上し、融資を受けやすくなる可能性があります。逆に、中小会計要領を採用すると、金融機関が財務状況を正確に把握しにくくなることもあるため、注意が必要です。

(2)税務申告との関係 会計基準が税務基準と異なる場合、法人税の計算にも影響を及ぼします。特に、減価償却や貸倒引当金の処理など、基準ごとに異なる対応が求められます。

(3)経営の透明性 適切な会計基準を採用することで、経営状況をより正確に把握し、事業計画の策定やリスク管理が容易になります。


5. まとめ

日本には4つの会計基準が存在し、中小企業は「中小指針」または「中小会計要領」のいずれかを選択することになります。

  • 金融機関や投資家との関係を重視するなら「中小指針」

  • シンプルな会計処理を求めるなら「中小会計要領」

企業の規模や業態に応じて適切な基準を選択することが、財務の透明性を高め、経営の安定につながります。自社に合った会計基準をしっかり理解し、適用することが重要です。

適用する会計基準について迷った場合は、税理士に相談し、最適な選択をしましょう!

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