月次で作る財務3表モデル
なんとなくビジネスパーソンの中で話題になってきた財務モデル。解説記事も増えてきており、見ていると結構突っ込んだ内容ですし、かなりわかりやすいなと思います。
ただ、月次の3表モデルの解説はあまりないように思いましたので、少し記載してみようと思っております。
「とりあえず月次」は不幸の始まり
年次モデルより月次モデルの方が細かいですが、安易に月次モデルを作るべきではありません。
私は月次モデルの苦労を分かっていない上司やクライアントに月次モデルを依頼された場合、なぜ必要なのか?、十分な情報は手に入るのか?、限られ時間の中で本当にそれにリソースを投下していいのか?等徹底的に戦います。笑
月次モデルは以下の点で作業が甚大に増えます
・エクセルの視認性が落ち全体の作業効率が落ちる(結構重要)
・Inputも月次レベルのものが必要(InputなくしてOutputなし)
・PLの季節変動性の把握
・各種入金・支払条件の正確な把握
・税金等の月次キャッシュイベントの把握
・直近実績への置き換え(結構面倒)
・月次の試算表から決算整理仕訳の投入(必要に応じて)
ではここまでの苦労して月次3表*を作る理由は何なのでしょうか
※月次PLが必要なケースはビジネスで多々あると思います
私は「正確な資金需要」の把握のためと理解してます。
特に事業再生の時にいくらあったら会社を持つのか算定し、今後必要な運転資金分を調達(エクイティ・デット)するために必要になります。
PLを年次均等按分して、BSも回転期間で・・・って作った月次モデルは上記目的に対応できないため、私からしたら意味がないと思っております。
なので、月次で作る意思決定をした場合は、適当にせず、その目的のため、面倒くさい作業を惜しまずしっかり地道に作ります。
また月次モデルが有効なのはMAXで、今期+来期の2年以内分かと思います。
年次はカッコいい、月次はダサい
「投資銀行の財務モデル」ってカッコいいですよね。パラメータも見やすくまとまっていて、LBOとかファイナンスの知識もふんだんに使い、マーケット予測も反映と。
一方月次モデルはダサい、地道な作業が必要です。
以下ざっくりどのようなことが必要か記載します。
・PL
売上高も月次レベルのものが必要なので、顧客数×単価とした場合も閑散期、繫忙期で客数・単価がどのようなに変わるのかを、過去のトレンド、将来の見通しを考えながら予測します。
原価についても同様です、大量に仕入れるタイミング(在庫が増える)等でキャッシュの流れは違いますので正確に予測します。
販管費も、例えば、旅費交通費とか広告宣伝費とかそもそも月次での発生トレンドを押さえた上で、人件費では賞与支払のタイミング、租税公課では固定資産税支払のタイミング等キャッシュのタイミングが異なるものも正確に拾っていきます
営業外損益もかなり大事です。受け取り配当金の入金はいつ?支払利息は月次払い?、四半期払い?、年払い?等それぞれ借入契約ごとに性格に把握していきます。
・BS
一番伝えたいのが運転資本の項目です。
例えば売掛金の回収期日が月末締め45日後だとします。
この場合6月の売掛金は5月と6月分の売上高(+消費税)の計2カ月分が残っていることになります。
よく、6月単月の売上高の45日分、60日分が残るように回転日数のノリで売掛金を算定しているのを見ますが、ロジックとして崩壊しているのが明白です。
重要性がないならともかく、こんなことするなら月次の3表なんてはなから作らない方がいいと思います。
次は税金です。法人税の支払タイミングしかり、キャッシュに結構インパクトを与え得るのが消費税です。前年の消費税額により、中間納付の金額も変わってきます。
後は前払費用・未払費用についても年次で作る場合は、横置きもしくは、売上高等の比率程度で問題になりませんが、月次で見ると驚くほどに増減しており、それは売上高とかの比率でないことがわかると思います。
それぞれ年払い等の契約があり、そのスケジュールに沿ってキャッシュアウトがなされているのです。
最後、設備投資についても、期中央とかではなく、いくら分を何月に実施するのか?等を詰めていかなくてはいけません。
なんかとりとめのなく書いてしまいましたが、要は月次はプロジェクションとかではなく、細かいファクトの積み上げで作る地道な作業ということです。
なので、月次モデルを作る際はその必要性をしっかり確認し、作る場合はそれ相応の覚悟が必要になります。笑