東北リベンジひとり旅④
十二湖散策
キョロロから有名な青池までは、徒歩ですぐに向かえます。
遊歩道の入り口に向かうと、すぐに見えてくるのが鶏頭池です。湖面が空を映してゆったりと広がっています。
広葉樹に囲まれた鶏頭池は大きめの池で、風で水面が細かく揺れ、周りの木々はところどころ赤く色づいていました。池に沿う道には落葉やドングリが散らばっていて、左右の木々が伸ばした枝がゆるくトンネルを作っています。
左手の景色を楽しみつつ道沿いに歩いていくと、看板がありそのすぐ横が青池です。
青池のそばには木でできた歩道のデッキがあり、すこし階段を上れば池を見下ろすことができます。
青池は太陽の差し込む量や角度で色に少し違いが出てくるらしいのですが、この日は黒に近い、濃くて深い青色でした。浅いところは水色っぽい、すこし緑の入った青色です。海の色とは異なるこっくりとした深い色の上に、空と木々の影が綺麗に映り込んでいます。そしてちらちらと落ちる黄色い葉が、水面に細かく浮かんでいました。風が吹くとその模様がゆっくりと変化して、じっと眺めているだけでも存分に楽しめます。
青池から道沿いに上っていくと、すこし開けたところに出て、分かれ道になっています。そこからブナ林を通り、次は沸壺の池を目指しました。
途中歩く自然林は、立派なブナの木々に囲まれていてとても静かです。高いところで枝を伸ばしているブナの木からは日がさし、木の幹には苔やつる草が見られます。すぐ足元には様々な木の実や葉や花が茂っていました。空気は柔らかく澄んでいて、土と植物の甘い匂いがします。さわさわと耳に届く音はとても心地がいいです。
ただ道は細く段差や勾配もあり木の根や落葉に覆われているので、注意して歩かなければなりません。
そうして自然林を楽しんでいると、水の流れるざあざあという音が聞こえてきて、沸壺の池が見えてきます。
この池は川から流れ落ちる水が溜まる、小さなダムのようになっています。青池よりも浅いです。
浅い分光がよく通り、澄んだ薄いブルーの水がとても美しいです。光の加減で水底が瑠璃色や淡い青緑色に見えて、沈んだ木の枝なども見えます。
川のせせらぎは聞いていてとても心が落ち着きますし、からだもリラックスできます。個人的には青池よりも好きです。
筆者はここから車道に出てキョロロに戻るコンパクトなコースを歩きましたが、ゆっくり回って一時間と少しかかりました。
次に利用するバスまで時間はまだたっぷりあったので、一度キョロロで休憩をして、もう一周しました。
先ほども述べた通りキョロロには軽食が売っていて、筆者はソフトクリームを注文。このソフトクリーム、観光地価格かあと思ったら価格に比例する大き目サイズで、手渡されたときびっくりします。味も美味しかったので、機会があれば注文してみてください。
ソフトクリーム片手に外でのんびり休憩していると、娘と二人旅だという女性にかなりヘビーな身内の話をされたりしました。相槌を入れる間もない勢いで、声のトーンに合わない激重話を、娘さんが迎えに来るまで話されていました。あまりにもヘビーなので、目の前のソフトクリームで話題を逸らそうとも試みましたが力及ばず。ただ旅行は心から楽しんでいらっしゃいました。ヘビーの合間に、にこにこと笑って娘さんとの旅行の話をしてくださって、そこは聞いているこちらも嬉しかったです。
ひとり旅のいいところはこうして思わぬ人と言葉を交わせることもあると思いますが、経験上わざわざ話しかけてくる方はかなりの確率で(良くも悪くも)一風変わっています。マイペースに自分の時間を楽しみたいタイプの筆者には、ちょっと困るポイントでもあります。もちろん、知らな情報をもらえたり親切にしていただくことも沢山あります。
少し特殊なこともありましたが、自然に埋もれるような贅沢で安らぐ時間を満喫できました。この記事を書いている今も、五感いっぱいの緑の懐かしく、恋しく思います。
何より熊に遭遇しなくてよかったです。本当に良かった。
不老ふ死温泉
十二湖から不老ふ死温泉までのバスは、14時台が始発になります。
バスに揺られて約45分、終点の不老ふ死温泉前で降ります。
すぐ目の前が新館の入り口になっていて、入ると日帰り入浴の案内のためにスタッフの方が待っていてくださいました。
不老ふ死温泉は、観光や旅行の情報誌や番組にも取り上げられる有名な温泉旅館です。雄大な海に面した露天風呂の写真は見たことのある方もいらっしゃると思います。
日帰り入浴も可能ですが、新館と本館、露天風呂でそれぞれ利用時間が異なります。筆者は訪れたときは、新館は13時半までの受付で利用できませんでした。
本館の大浴場入り口まで案内していただき、そこで入浴料を支払います。このときはオフシーズンだったのか、しらかみの切符提示で入浴料が少し安くなっていました。嬉しい驚きです。
受付カウンターと大浴場入り口は向かい合っていて、その奥にコインロッカーと休憩スペースがあります。機内持ち込みサイズのスーツケースなら入ります。
まずは内風呂で体を流してから、露天風呂へとのことでした。
露天風呂は男性(混浴)と女性専用に分かれています。女性の方用に湯浴み着も貸し出しているので安心です。
内風呂には大きな窓が張られていて、空と日本海がめいいっぱい広がっていました。
湯は赤茶色に濁っていて、強い硫黄のにおいがします。鉄臭いレベルです。湯の温度は二種類あるのですが、筆者が浸かったのは恐らく熱めなので、あまり長くは浸かっていられませんでした。
露天風呂へは少し歩く必要があります。スリッパと荷物入れのかごが出口にあります。歩いていると、内風呂でよく温まった体に強い海風が涼しくて心地よかったです。
露天風呂も熱めなので、風は強くても平気でした。むしろ半身浴にはちょうどいい塩梅で、いい時期と時間に来たなあと思います。時刻は夕暮れ前、段々足早に沈んでいく夕日、それに伴って色が変わる空とキラキラ輝く海を眺めながら湯につかるのはこの上ない贅沢に思えます。
空と海には遮るものが何もありません。文字通り見渡す限りの絶景はダイナミックで力強く、でもどことなく穏やかさもありました。強い海風の吹き抜ける音、海から届く波の音、刻一刻変わる空と海の色。湯は勿論、これらも含めて不老ふ死温泉の魅力なのだと思います。とても貴重な体験でした。波の音に惹かれたのは生まれて初めてです。是非また利用したいし、誰かにおすすめしたい素敵な温泉でした。
二日目はあと少し続きますが、長くなったのでここで区切ります。
次は夜ご飯編です。