【受継ぎの家】 工事日記-2
工事は、まず建物の全体形の墨出しから。この木柵は、そのための糸を張るためのもので、よく見るとうっすらと黄色い糸が走っているのが見えます。これが基礎の外形線になります。(ちなみに上の写真で手前に土が見えているのは、解体時に降ろした瓦を置いていたところで、工事の邪魔になるので隅っこに週末一人で移動させたのですが、全部運びきるのに3日もかかりました↓笑)
この建物の設計で一番苦労したのが「基礎」と言っても過言ではありません。なぜなら今回の増改築では、全体が「新耐震基準」を満たすようにリノベーションをすることが求められたからです。
実はこれ、実質的に不可能なんです。その一番の障壁となるのが基礎。今回は増築部の面積が大きいため、建築基準法により"既存建築も含めて"全体の構造計算書を提出しなければならないのです。木組の上部構造に関してはクリアできるのですが、基礎に関しては基礎の中がどのように施工されているか分からないので、強度が信頼できません。しかも建設年代からすると鉄筋のない無筋コンクリート基礎であると考えられ、その上にどんなに立派な構造物を作っても、まったく成り立たないのです。文化財などであれば、基礎より上をジャッキアップし、その間に基礎を造り替えるという方法を取ったりするのですが、そのためにはかなりコストがかかるので現実的ではなく、また前回書いたように、自分が住んでいた訳でもない一般住宅なのでそこまでする必然性もありません。このような物理的な問題から法的ハードルを乗り越えるのが困難で一度は諦めかけました。が、まだなにかやり方があるんじゃないかという感覚が頭の隅にモヤモヤがあって、あれこれ考えてはたびたび確認申請機関まで相談に行きました。
そこである時閃いたのが、新しい基礎で古い基礎と土台を全て覆ってしまおう、という方法でした。結論としては、法的にその考え方でOKとなり、新耐震基準をクリアした増築リノベーションが確認申請を通ることになりました!
たぶん日本でも初めてのやり方なんじゃないかと思っています。
現場は大きな重機が入らないので、こんな可愛いユンボで増築部分を掘って行きます。現場には蚊が多いので、職人さんがタオルを被ってひと掘りずつネコ(右の一輪台車)に乗せて、丁寧に土を運び出します。根切りという土掘り工程はこんな感じで進んで行きました。