遅延コストとは何か? by Black Swan Farming Ltd.
遅延コストとは何か?
遅延コストとは、実現したい成果に対する時間の影響を伝える方法です。厳密に言えば、時間に対する期待値の合計の偏導関数です。
遅延コストは「緊急性」と「価値」を組み合わせたものです。人間はこの2つをうまく区別することができません。意思決定するためには、どれだけ価値があるかだけでなく、どれだけ緊急なのかも理解する必要があります。
なぜ「1つだけ」定量化するのか?
納期の遅れや「手遅れ」により失った価値は、莫大なものになります。開発費が少しだけ安くなるよりも、一週間早く何かを手に入れることのほうが、価値があることが多いのです。ですが、こうしたトレードオフは明らかではありません。遅延コストを理解していないからです。
優先順位付けの改善
遅延コストを使用して、前提を明らかにして、価値と緊急性にフォーカスしましょう。CD3(Cost of Delay Divided by Duration; 遅延コストを期間で割ったもの)を使えば、望むものが素早く手に入ります。
優先順位付けを「直感」「MoSCoW地獄」「HiPPOによる意思決定」で進めたくないのなら、遅延コストを理解する必要があります。
優れたトレードオフの決定
プロダクト開発はトレードオフに満ちあふれています。遅延コストを使用して、こうした決定を正確に伝え、組織のあらゆるレベルに意思決定を分散させましょう。
コストになっている待ち行列は何ですか?頻繁にリリースすることの価値は何ですか?WIP制限を何にすべきですか?キャパシティを向上させることは理に適っていますか?
会話の変化
システムに価値や緊急性に関する情報がない場合、他の何か(通常はコストと期日)に最適化する可能性があります。それが間違った行動を引き起こします。
Maersk Line社のケーススタディを読んでください。ポートフォリオ全体に遅延コストを適用したことで、会話の中心が価値と緊急性になったことがわかります。
遅延コストをどのように使い始めるのか?
興味はあるけど、どうやって始めればいいの?我々にお任せください。世の中には、Maersk Line社のような大企業からスタートアップまで、公的組織から民間セクターまで、さまざまな組織があります。
まずは、遅延コストのオンライントレーニングとサポートを提供しますので、これで概要を掴み、遅延コストを組織に適用してください。
Maersk Line社のケーススタディ
遅延コストを定量化することの価値は、実際にそれを見たときに明らかになります。たとえば、Maersk Line社のチームが提供した機能のバリューストリームマップが以下になります。
全体で38週間も待たされているとは、どうかしていますね!ですが、あなたの組織で「価値を生み出している時間」と「待機している時間」を追跡してみると、おそらく同じような結果になるでしょう。ほとんどの組織では、エンドツーエンドのサイクルタイムは、待ち時間によって占められているのです。
膨大な待ち行列のコスト
上記の例では、この機能の遅延コストは、1週間あたり20万ドル以上でした!つまり、このような機会をさまざまな待ち行列に38週間ほど費やした結果、組織は800万ドル近くの収益を失うことになったのです。
こうしたことを把握すれば、待ち時間のコストを視野に入れることができますよね?この機能の遅延コストの見積りに5分でも時間をかけていれば、重要な決定はまったく違ったものになっていたでしょう。
それが、組織に待ち行列に目が見えないことのひとつです。もうひとつ別のレベルで待ち行列が見えないことがあります。それは、待ち行列のコストを知る手がかりがないことです。意思決定をうまくやりたいならば、システムを流れるモノの遅延コストを理解する必要があります。
速度に最適化
ほとんどの組織と同じように、Maersk社もエンドツーエンドの価値提供の速度よりも、プロセスの効率化にフォーカスしていました。
たとえば、承認する人の効率に最適化された承認プロセスや予算調達のプロセスがあるはずです。それがシステム全体の速度や効率に大きな影響を与えています。もちろんMaersk Line社も同じでした。
こうした貧弱なシステム設計につながる要因のひとつは、遅延が実際にどれだけのコストになるかを理解していないことです。遅延コストは、こうした待ち行列のコストについて、言語と理解を提供します。価値と緊急性の情報がなければ、システムは他のものに最適化するでしょう。そして、最適化されていない結果が生まれるのです。
結果
Maersk Line社は、その他の変更と一緒に遅延コストを導入したことで、チームが提供する成果の価値、エンドツーエンドの速度、品質を向上させることができました。
以上の結果は、遅延コストを理解することは(ドン・ライナートセンの言葉で)「開発組織のマインドセットを一新させる驚くべき力を持っている」ことを示す証拠です。「The Mastering Cost of Delay」コースでは、Maersk社や他の組織に遅延コストを実装した方法を詳しく説明しています。
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