政府のサービスデザイナーになる7つのステップ by Sanjay Poyzer
公共サービスのデザインは、私がこれまでに経験したなかで最も意義があり、最も満足のできる、最もやりがいのある仕事です。政府のやっていることの背景にある真の意図を考え、大きく改善されたアウトカムを国民に届けられるように、公共サービスに携わる方々をガイドしています。
「どうやってこの仕事に就いたの?」とよく聞かれます。私の話をしてもよいのですが、みなさんが本当に知りたいのは「サービスデザイナーになることは可能なのか? 可能だとしたらどうやって?」なのでしょう。そこで、GOV.UKのようなステップ式のガイドを作成しようと思いました。
1. いろんなことに関心を持つ
私の知る優れたサービスデザイナーたちには、印象的な特徴があります。それは、世界について、そこで生活する人たちについて、それらすべてがどのように動いているかについて、執拗とも言うべき大きな関心を持っていることです。たとえば、Harry Vosは商品の物流について独自の考えを持っています。Kay DaleはDIYが本当に大好きです。Lou Downeはセーリングからゲリラガーデニングに至るまで、あらゆることに取り組んでいます。
物事に関心を持つことは、物事をよりよくするための最初のステップです。何かに興奮すれば、そこからアイデアが生まれてきます。サービスデザインとは、以前とはまったく違うアイデアを持つことだとされますが、それは新しいアイデアではありません。すべてはどこからか盗んできてたものなのです。私が興奮するのは、どこからか何かを取り入れて、それを新しい文脈に持ち込んでいるときです。そのためには、大きな関心の「パレット」を持つ必要があります。本を読んだり、映画を見たり、面白い人たちと話したりしてください。すでに関心のあるスレッドをフォローして、世界がどのように動いているかをもっと詳しく知りましょう。
2. 何らかのデザイン理論を学ぶ
みなさんは(おそらく)研究者になりたいわけではないでしょうから、ここでは意図的に「何らかの」という言葉を使いました。あらゆるデザインの専門分野において、優れたデザインの基本原則を理解することは必要不可欠です。私の専門は音楽でした。そこから多くの重要なスキルを学びました。それらは今でも使っています。たとえば、誰かと一緒に仕事したり、アイデアを生み出して反復させたりするスキルです。あるいは、観客とクリエイターの関係性を理解することも重要です。デザイン理論に関しては、私は以下のような本を読みました。
誰のためのデザイン?(ドナルド・A・ノーマン)
Research & Design Method Index―リサーチデザイン、新・100の法則( Bella Martin and Bruce Hanington)
ハマるしかけ―使われつづけるサービスを生み出す[心理学]×[デザイン]の新ルール(Nir Eyal)
これは網羅的なリストではありません。あくまでも私の役に立ったものです。私は「GOV.UK Service Manual」や「Design in government blog」からも多くのことを学びました。すでに公共セクターで働いている方は、GDSで開催しているトレーニングコースに参加してみてはいかがでしょうか。
3. サービスとそのデザイン方法について学ぶ
最近はちゃんとしたサービスデザインのコースが(Royal College of Artなどに)ありますが、私はそのようなルートを通っていません。
無料または安価なミートアップやイベントがあったおかげで、私は多少なりとも音楽の分野からテクノロジーの分野に移行できました。サービスデザインを学ぶための優れた方法は、このようなイベントに参加することです。たとえば、Global Service Jams、Service Design Fringe Festival、GovJam(労働・年金省が支援)などのイベントがあります。
ただし、このことは理解しておいてもらいたいのですが、サービスデザイナーに適した規定のアウトプットなどありません。あるのはよりよいサービスだけです。 ジャーニーマップ、ブループリント、ワークショップなどは、 そこにたどり着くまでに使用するツールにすぎません。
Design Councilがこうしたツールを紹介してくれています。ですが、全体的な「ダブルダイヤモンド」はかなり規定的なものになっています。この危険性については、Kate Ivey-Williamsの記事を読んでみてください。GDS Service Designトレーニングによるリーディングリストも素晴らしいです。
ある時点から「サービスとは何ですか? どうすれば優れたサービスになるのでしょうか?」と質問したくなるかと思います。この数年、GDSでは何度もこのような質問をしてきたために、サービスの実用的な定義と優れたサービスの特徴のリストを作成することができました。
4. 何かを届ける
サービスデザインは不思議な仕事です。マネジメント職でもないのに、ロゴやコードなどを指して「あれは私がやった」と言うことができないのです。これがサービスデザインの最大の欠点だと思うこともあります。私は何も生み出してないじゃないかと感じるのです。ですが、サービスデザインはチームスポーツです。私のやっていること(たとえば、実践的でありながら広い視野を持ち、野心的であるようにみんなを説得すること)は、実際に生み出されるものに大きな影響を与えています。
その方法を教えてくれたのは、スタートアップの経営でした。時間とお金がすぐに尽きてしまう環境で誰かのために何かを成し遂げることの本当のプレッシャーを教えてくれました。また、Bethnal Green Venturesのサポートを受けたことも幸運でした。サービスデザイナーを含むメンターを派遣してもらい、現場でサポートを受けながら学ばせてくれたのです。また、その頃にEric Riesの『リーン・スタートアップ』を読み「実用最小限の製品(MVP)」が何であるかを学びました。しかし、本当に重要なのは、自分の周りにいる人たちを集め、誰かの問題を本当に解決できるものを作ってもらうことです。そして、それがどのように使われるかを観察して、何度も繰り返していくのです!
5. 他のサービスデザイナーと仲良くなる
公務員は自分の友達を同僚として採用すべきと言っているのではありません(これは優秀な人材が不当に排除されるひどい考えです)。私たちは、チームの多様性が高まれば、ものに対する見方も多様で優れたものとなり、それがデザインの成果につながることを知っています。ですが、面接の場で机を挟んで向かい合うよりも、相手のことを深く知るほうが採用しやすいことも事実です。コーヒーを飲みながら、相手が重要だと思う原則やアイデアについて質問するだけでも、非常に価値があります。
TwitterやLinkedInを使っていれば、あこがれの仕事をしている人にメッセージを送ってみてください。ミートアップやカンファレンスに行くのなら、講演者に話しかけてみてください。彼らは忙しいかもしれませんが、コーヒーを飲む時間くらいは作ってくれます。喜んで質問に答えてくれるでしょう。
6. 仕事に応募する
まずは応募してみましょう。GDSでは事前にポートフォリオを提出してもらっています。ですから、あなたが何を生み出したのか、あなたがそこでどのような役割を果たしたのかを、我々は知ることができます。その確認が終わったら、優れた作品を作ったデザイナーを面接に招待します。面接というとなんだか怖い感じがするかもしれませんが、お互いに質問することになるので、会話のようなものになるでしょう。ですから、優れた作品ができたらすぐに応募する価値はあると思います。
実際に応募する前に、応募先の先輩にあなたがどのようなレベルを目指すべきかを聞いてみてください。他の職業から転職するのであれば、そのことを考慮しておくべきです。GOV.UKの職務記述書も参考になるでしょう。どのようなレベルが適しているかは、どのようなスキルが必要かによって決まります。
7. 学びをやめない!
私の仕事を誰かに説明するときのやり方は、2年前のやり方とは違っています。2年後のやり方もおそらく違っているでしょう。世界は常に変化しています。サービスデザインはそうした世界の変化を扱う仕事です。
私たちは幸運なことに、 政府の横断的なデザインコミュニティが活発であり、 ベストプラクティスを共有しながら「よさ」とは何かを追求しています。 公共サービスをデザインするにはいいタイミングです!
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