イノベーションを実現する創発的な組織づくり by Barry O’Reilly
BY JAMES GADSBY PEET ON DECEMBER 1, 2017
行動のあり方を変えることができれば、これまでとは違った方法で世界を体験できるようになるでしょう。そうすれば、考え方も変わります。Barry O’Reillyは「Mind the Product London 2017」での魅力的な講演のなかで、組織づくりにはこうしたことが常に求められると述べました。人々が問題なのではなく、人々の周囲に居座っている「システム」が問題なのです。
私たちが導入しているマネジメントプロセスやシステムは、市場のスピードや複雑さに合致していません。年次業績評価、四半期計画、予算編成といった方法では、効率的にビジネスを運営できるだけのスピードに対応できません。
大企業は、モバイルアプリや十分な資金をかけたディスラプティブ(破壊的)なアイデアを活用できないという結果は避けたい、と考えています。こうした問題の根源は、成果(アウトカム)ではなく結果(アウトプット)に対して報酬を出しているところにあります。
デリバリーのギャップを埋める
ベイン・アンド・カンパニー社による2005年の有名な調査「Closing the Delivery Gap」では、80%の企業が優れた提案をしていると答えています。ですが、それに同意している顧客はわずか8%です。組織を成功させるには、このギャップを埋めなければいけません。顧客の体験は「あればうれしい」というものではなく、組織の戦略の中心に位置づけるべきものです。
Barryは、これらの問題に対応している高パフォーマンス組織と一緒に仕事をするなかで、以下のような共通点を発見をしました。
テクノロジーは、顧客に関するイノベーション・テスト・学習をこれまで以上に可能にする戦略的な能力である。
実験を可能にするために、仕事のプロセスやプラクティスを反復的・適応的にする必要がある。
組織全体の学習不安を軽減すれば、新しい価値をもたらす新規的な事柄を試すことができる。
大規模にイノベーションを実現する能力は、単一のチームに依存すべきではない(すべてのチームに組み込まれ、すべてのチームが責任を負うべきである)。他人の教訓に耳を傾け、そこから学び、それを自分たちの領域に適用する必要がある。
コマンド&コントロールの神話
よく勘違いされますが、現代の軍隊は「コマンド&コントロール」の構造を使っていません。彼らは目標に対する理由が得られる「ミッションの原則」で動いています。成功に欠かせない「結果よりも成果」の哲学を本当の意味で受け入れているのです。
分析は確実性を与えるものではありません。2年間のロードマップによって確実性を高まることはありません。実装計画も確実性にはつながりません。これらは常に不正確で非効率であるにもかかわらず、組織は依然として固執し続けています。強固でレジリエントで成功する組織を作るには、プロセスも情報も命令も減らしていく必要があるでしょう。
年間計画を立てるのではなく、仮説ベースの手法に移行している人たちもいます。たとえば「Xを実施することで、Yという結果が得られる。そのことはZが起きたときに真だと判明する」といったものです。リーダーシップを司るチームにとって、これは優れた方法です。なぜなら、よいと思えるものを示すことができ、具体的な解決策についてはチームに任せることができるからです。
大きな変更も小さく始めよう
プロダクトにおける最も大きな変化は「人間の行動」です。これを変えるには、BJ Foggの行動モデルを参照すべきでしょう。このモデルでは「モチベーション」と「能力」が相互作用しています。たとえば、簡単に行うことができ、モチベーションの向上につながるようなものは、うまくいく可能性が高くなります。つまり、行動のトリガーになるのです。したがって、誰かに何かをやってもらいたければ、すべての抵抗を取り除き、簡単に行えるようにする必要があるのです。
BJ Foggの「小さな習慣(Tiny Habits)」では、ある出来事のあとに小さな行動をとることが推奨されています。たとえば、会議のムダが多い文化の組織では、達成できた成果について会議のなかでリーダーから質問してもらうようにするといいでしょう。そうすれば、抱えている問題が明らかになります。こうすることで、時間をかけて連鎖的に行動が変化していくのです。
本当の意味でアジャイルになるには
アジリティとイテレーションは技術的な手法ではありません。ビジネスの戦略です。スプリントのストーリーと同じように、ビジネス全体のミッションに仮説のアプローチを簡単に適用することができます。
ビジネスの変革は、他の人たちではなく、自分自身を見ながら始めなければいけません。他の人たちがどのように動いているのかに注目するのではなく、あなたが何をしているのか、それによって組織がどのように変わるのかに注目しましょう。たとえば、優れた答えを探すのではなく、優れた質問をすることで、優れたリーダーになるといいでしょう。
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