可能性のある未来を見越した政策立案 by GOV.UK
2015年02月26日(著者:catdrew)
Policy Labでは、政府が公共政策の議論を促進するための新しいテクニックを紹介することができた。私はこのことを大変うれしく思っている。ここでのテーマは、高齢化社会における仕事(英国の高齢者数はこれから大幅に増加すると予測されている)。新しいテクニックとは「スペキュラティヴデザイン」だ。
GO-Science Foresight project on the Future of Ageing(高齢化社会における科学的未来洞察プロジェクト)では、高齢化のトレンドに関するエビデンスを集めている。その一環として、世論の関心を高める方法を試したいと考えた彼らは、Policy Labにアドバイスを求めてきた。
スペキュラティヴデザイン(あるいはクリティカルデザイン)とは、各部門が実験をするときにPolicy Labがサポートしているイノベーティブデザインツールのひとつである。可能性のある未来をいくつも想像し、そこにあると思われる物体や人工物を作成することで、未来についての議論を引き起こす。
こうした可能性のある未来は、もっともらしく、可能性があり、好ましいものであると考えられる。これらは予測ではない。未来の人工物を作るときに重要なのは、まだ見ぬ未来について考えさせるような、具体的な方法を提供することだ。そこに埋め込まれた未来のアイデアについて、人々がどのように反応し、どのように感じるかを、研究者、マネージャー、政策立案者は確認することができる。
人工物には、技術的なプロトタイプ(例:Bernd Hopfengaertner「Belief Systems(信念体系)」2009)もあれば、未来の世界を示したストーリーボード(例:Jaemin Paik「When we all live to 150(寿命150歳の時代)」2012)もある。なお、いずれもDunneとRabyの素晴らしい著書『スペキュラティヴ・デザイン』に掲載されている。膨大な統計情報を棒グラフや円グラフで説明するよりも、物語やストーリーを作ったほうが説得力が増しやすい。デザイナーは、人々が自分の考えを中断して、未来の世界にあるかもしれないと想像できるようなリアルなものを作ることと、すでに今あるかのように人々を騙してしまうことのバランスを慎重にとらなければいけない。
先週、スウォンジーで開催されたGo-Scienceのワークショップでは、研究とデザインの共同機関(Strange Telemetry)が、これらは可能性のあるシナリオであり、予測ではないことを参加者に明言していた。TobiasとGeorginaは、3つの異なるシナリオの3D画像を参加者に見せて、その反応を見るためのアクティビティを実施した。それは、これらを見てどのように感じたか、事態を変えるために自分や他人(たとえば政府)に何を望むかというものだった。
3D画像は以下の3つである。
地元の大通りにある24時間365日営業のロボット修理工場「Green&Green&Sons」。中古ロボットの売買だけでなく、オンラインチュートリアルの提供も行なっている。
居心地のいい自宅からちょっとしたフリーランスの活動(犬の散歩、ベビーシッター、翻訳など)に参加できる「Task me」タブレット。
好きな時間にログインできるコールセンター。会話の内容は書き起こされ、座っていた時間に応じて稼いだ金額が画面に示される。
いくつかは意図的にディストピア感のある挑発的なものにしてある。こうすることで、現在の高齢化しつつある社会の問題ではなく、大多数がすでに「年寄り」になってしまった社会の仕事について、参加者が批判的に語ることができるようになる。何を変えるべきか、どこを改善すべきかについて、自分の意見を述べられるようになる。なかでも重要なのは、しっかりと継続して議論を続けられるようになることだ。
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