草々オリジナルお茶パッケージ『ゆい』をつくりました。
畑中篤さんの個展、後半へ向けてもうひとつの「おたのしみ」があるのでここで紹介します。
実は…
草々オリジナルのお茶パッケージをつくりました。
お茶は、奈良市田原地区のお茶農家、田原ナチュラルファームさんの『ゆい』。農薬・化学肥料を一切使用せずに、太陽の光をたっぷり浴びた茶葉を育てています。
ゆいは、草々オープン以来ずっっとお客さんにお茶を出し続けてきたあのお茶で、ついに本格的に販売をスタートすることになりました。今日はこの販売に至った経緯などをたっぷり語らせてください。
田原ナチュラルファーム・福井佐和さんのこと
この茶葉を丁寧に育てているのは、田原ナチュラルファームの福井佐和さん。いつも太陽みたいに眩しい笑顔で迎えてくれる、すてきな方です。
福井さんとの出会いは、私がまだ奈良に移住したばかりの2019年ころだったと思います。JR奈良駅で開催していたマーケットで、たまたま『ゆい』を見つけて購入しました。同じ奈良市内で茶葉をつくっていることがうれしくて、家に帰って飲んでみたらとてもおいしかった。お茶の苦みや渋み、そしてほのかな甘み。まだ移住したてで新生活がはじまったばかりという状況も重なって、とても癒されたのをよく覚えています。
それから、ほかにも色々な奈良産のお茶を試しましたが、やっぱり私は『ゆい』に戻ってしまいます。
正直なことをいうと、『ゆい』には尖った特徴はありません。スモーキーだとか甘みや香りが強いとか、そういうものはない。しかし、クセがなく後味がさっぱりしているのもあり、食事にすごく合うんです。気を使わずに長く一緒にいられるパートナーのような存在で、それからずっと愛飲し続けました。
しばらくたったある日、私は「茶畑を見てみたい」と思い立って、レンタカーを借りて福井さんのところへ押しかけたこともありました。
福井さんの茶畑がある田原地区は、奈良市の中心から12Kmほど離れた東部の大和高原で、標高400-500mのところにあるのですが、眼前に広がる光景がものすっごくきれいで。緑豊かな田園や茶畑が眩しくて、同じ市内なのにこんな場所があるんだ!とすごく感動しました。
さらに、福井さんのお茶に対する熱弁を聞いていたら、「この方はほんとうにお茶が好きなんだ」と思って、ますます好きになったのを昨日のことのように思い出します。
福井さんは、もともと百貨店に勤めていました。
最初はたのしくてやりがいを感じていたのですが、一日中建物のなかにいて、外の気温や天気もわからず、毎日同じことを繰り返す生活に「わたしの生き方はこのままでいいのだろうか」という思いが強くなっていきました。
それから農業に興味を持ち、体験を重ねるなかで、ある日新茶の刈り取りを手伝ったことをきっかけにお茶へと興味が広がり、2004年に思い切ってお茶の世界へ飛び込みました。
とはいえ、福井さん、お茶農家さんになるのは初めて。
最初はたいへんな苦労があったといいます。まずは、何年も放置された茶畑を再生させることからはじまりました。周りの助けを借りながら、試行錯誤を繰り返して少しずつ少しずつ、いまのスタイルで茶葉を育てる方法を確立していったのでした。
『ゆい』 という名前に込められた想い
「結ぶ」と書いて、『ゆい(結)』。
この名前には、福井さんのこれまでの歩みが込められています。
独学でお茶農家さんになり、さらにお米や野菜も育てるなかで、福井さんは色々な人に助けられてきました。周りの農家さんをはじめとして、最近ではボランティア団体まで立ち上がり、全国から有志で集まった方たちが福井さんの畑を支えています。そんな流れを繰り返すなかで、「農業はひとりではできない。人の関係性も野菜もお茶も虫も、助け合いながら、繋がり育てていくもの」という学びにたどりつき、「そのこころを大切にしていきたい」という気持ちから、『ゆい』は生まれました。
だからこの名前には、福井さんだけではなく、これまで福井さんのお茶に関わった色々な方の想いが詰まっています。『ゆい』という響きもやさしくて、じんわりとあたたかな気持ちになるような言葉なのです。
草々オリジナルパッケージ 『ゆい』 へのこだわり
そんな福井さんのお茶をもっと味わいたいし、届けたい。
そんな気持ちから草々でも新しいパッケージをつくらせてもらうことになりました。
今回デザインとイラストは画家の溝端ことみさんがつくってくれました。溝端ことみさんとコラボでつくることが夢だったので、感激…。
『ゆい』の文字は飲みやすくてさらりと香ばしい喉越しをイメージしながら伸びやかに、イラストはお茶の葉が広がっていき、新しい世界へ運ばれることをイメージして描いてくれました。
かたちは縦長のクラフトパッケージ。
内側は、茶葉が湿気たりしないよう多層フィルムになっています。
なぜ縦長にしたのかというと….
入り口が小さめだから急須に茶葉を入れやすいという利点もありますが、なにより置いたときに文字とイラストが見えてかわいいものにしたかったんです。
たとえばこんな感じです。ほらね、かわいいでしょ?
種類は「緑茶」と「和紅茶」の2種類で、
緑茶はいまのシーズンのみ、収穫したばかりの「新茶」が入っています。
新茶ですよ、新茶。うれしいですねぇ。
さらに、「おいしい飲み方」の紙もつくりました。
紙は、『ゆい』なのでおみくじのように結ぶか、そのままのかたちで木のクリップで止めてお渡ししますね。
まずは騙されたと思って、分量も時間もこの紙に書いてある通りにお茶を淹れていただきたい。ほんとうにおいしいお茶が飲めますから!私が保証します。
ちなみに透け感のある、上品な紙です。
価格は、緑茶(新茶)が100グラムで1,400円、
和紅茶が50グラムで1,000円です。
お茶の価値、茶葉やパッケージに込められた手間暇を考えて福井さんと相談して決めました。たとえばこれからの季節、50グラムあれば水出しで3リットルほど(500mlペットボトル6本分)はつくれます。
ちなみにこのパッケージはオリジナルデザインなので草々でしか手に入りません。もう一度いいます。草々でしか手に入らないのです。
自分用に、大切な人へのプレゼントに、ぜひどうぞ。
***
最後に、お茶農家さんの現状をお話させてください。
田原地区でもお茶農家さんがどんどん減っています。
原因は色々あるのですが、ペットボトルが普及してから、急須でお茶を飲む人が減ってしまったことが大きいといいます。さらに味も、苦みや渋みをおさえ、甘みを強くしたお茶ばかりが出回ることで、その味に慣れる人が多くなり、太陽の光を浴びて育った茶葉(※)が売れなくなっていきました。
(※)お茶は太陽の光によって苦みや渋みに関係するカテキンに変化する性質があります。
私も実際にお店をはじめてびっくりししたのですが、家に「急須や湯呑みがない」という人がとても多いです。急須がないから茶葉を買わないし、湯呑みではなくマグカップにお茶を入れて飲む人が多い。私は幼いころから急須でお茶を淹れてきたので、この事実を知ってなんだか切ない気持ちになりました。
近年では光熱費もあがり、機械を稼働してお茶をつくればつくるほどに赤字になるといいます。
そんな現状でありながら、しかし福井さんは会うたびにいっっつも笑顔で「お茶が好き」 だといいます。
さらに、先週会ったときは「最近ますます好きになってる」とうれしそうに話してくれて、その背景には人との繋がりや出会いが大きいといいます。
日本のすばらしいお茶文化、福井佐和さんがつくるお茶、絶やしたくはありません。陶芸家さんと同じく、真っ直ぐに向き合っている人たちが生み出すものをうつわに限らず届けていきたい。
そんな思いから、草々オリジナルのお茶パッケージは生まれました。
ぜひみなさん、福井さんのお茶を一度味わってみてください。
こころがほぐれるようなスーッと伸びやかな味わい。
みなさんにとって、長く寄り添うお茶となること、間違いなしだと思いますよ。
田原ナチュラルファーム『ゆい』
緑茶(新茶) 100g 1,400円
和紅茶 50g 1,000円
※店頭で販売しています。
現在オンラインショップでも販売しています。ぜひ味わってくださいね。
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うつわと暮らしのお店「草々」
住所:〒630-0101 奈良県生駒市高山町7782-3
営業日:木・金・土 11:00-16:00
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