10月1日で奈良に移住してからちょうど5年が経った。
あぁ、なんとも感慨深い。感慨深すぎる。
思い返せば5年前の今日、私はJRの奈良駅にたどり着いた。
ものすっごくワクワクしてこんな写真を撮っていた。
ひゃー、これ誰に撮ってもらったの?
タイマーじゃないと思うから誰かに頼んで撮ってもらったらしい。
指までさしちゃって…浮かれすぎである。
しかも奈良に来る前日、私は長野県で行われたトレイルランニング30kmの大会に出ていた。7時間ほどかけて完走。翌日身体はバッキバキで歩くのも辛いくらいだった。なんともまぁ、相変わらず無謀なことをしていたなと思う。
私は神奈川県出身で、奈良に来る前は東京でひとり暮らしをしていた。
19平米の1DK。コンパクトな部屋で家賃も高めだった。けれどそれなりに工夫しながら生活をしたり、お金をやりくりすることがたのしかった思い出がある。
奈良に移住することが決まってから、私は持っていた家具をほとんど捨ててきた。リサイクルや粗大ゴミに出して、残ったのはほぼ洋服周りのものと、思い入れのあるうつわや調理器具だけ。
それらを持って、私は奈良にやってきたのだった。
「捨てよう」と思ったとき、身体が軽くなったような感覚があった。
両親や友人にはもったいないと言われたけれど、ちゃんと自分の感覚を信じて生きていきたいから、それにそぐわないものは手放そうと決めた。そうしたら今まで無意識に思っていたマスト事項が解き放たれて、すこし楽になったような気がした。
奈良に移住したきっかけは、新しい職場で働くためだった。
とはいえ、職場以外に知っている人はいなかった。家族も親戚も友だちも知り合いもいなくて、まちを歩いてももちろん、誰も私のことを知らなかった。どんなメイクや洋服で歩いてもよくって、この状況はなんて快適なのだろうと感激した。自分がナニモノであってもだれもかまわない。周りを見て、繕おうとしなくてもいい。
「ゼロ」であることが失ったという意味合いではなく、「これから自分でつくっていける」という希望に変わった瞬間だった。
*
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私は奈良に来てから、たくさんまちを歩いた。
古い建物やしきたりが残っていて、そこに、長く息づくものを感じた。人々の暮らしだったり、切実な祈りや自然と調和して生まれた痕跡が、至るところに散りばめられていた。それは、現代に生きる私を大きく包み込むようなやさしさや強さで、それらのもとに自分は生かされているんだということを何度も実感した。
「手を動かす」ことも、増えた。
家でご飯をつくったり、畑で野菜を育てたりすることが生活の中心になりつつある。もちろん、他の家事もするけれど、「食」へ向き合うことに私は大半の時間を使っているように思う。
いやなことや不安なことがあっても、台所に立ったり畑で黙々と手を動かしているときだけは忘れられる。そして、そこで動かしたことは直接的に自分の身体に返ってくる。失敗もたくさんあるけれど、おいしいな、たのしいな、が増えていく毎日の積み重ねは、成長を感じることができるよろこびとなって自分の中に溜まっていく。
そういえば、去年会ったお坊さんが「戦後に手仕事が増えた理由のひとつは、人間性を快復するためだった」という話をしてくれたこと、度々思い出すなぁ。
「あの子、素直でいい子やねぇ」。
仕事を辞めて、悩んでいた時期に畑仲間のおばあちゃんたちが私のことをこうウワサしてくれたらしい。このときまで私は「素直である」ことに自信を持てなかった。どんな会社で働いても、私の素直な姿勢はあまりよくないと言われ続けた。あるていど演じなくては社会ではうまくやっていけないんだよ、と何度も言われてきたし、私もうまくやらなくちゃの焦りに押されて次第に自分の本心ではない言動をとることが増えていった。
だから私はこの言葉を聞いたとき、「素直でいいんだ!」とおそろしく開眼した。今まで自信がナイナイと思っていたことは、実は他人が勝手に決めたルールである。「自分が ”こうしたい” と思うならその通りにやってみよう」「一度きりの人生じゃないか」と思えるようになった。奈良に移住して紆余曲折ありながらも、ようやく見つけた道筋だった。
それからしばらくして私は、「暮らしとうつわのお店 草々」というお店をはじめた。
自分がお店をやるなんて、まったく想像していなかった。よく「なぜお店をはじめたんですか?」と聞かれるけれど、いまだによくわからない。
でも決めたときは、なにか、「心地いい場所を求めてたどり着いたという感じ」がある。大きなことや派手なことをしたいわけじゃない。ただ、揺るぎない「そこにある」ことを大切にしたいと思いながらお店をはじめて、その気持ちが少しずつ少しずつ、太い幹となって育っているような気がする。
そういえば「自分らしく生きるってなんだろう」と奈良に来てから考えなくなった気がするなぁ。
いま39歳で、これからまたさらに5年後は45歳になる。
人生もいよいよ半ばという感じだ。
また5年後、この場所で文章を書けるように日々を積み重ねていきたいなぁと思う。
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大阪の梅田で「うつわのある暮らし」をテーマにお話させてもらうことになりました。奈良に移住してから5年、お店をはじめてから2年半。いろいろな人と出会い、対話してきたことを振り返りながら、内容をつくっています。
教室受講の方限定ですが、ちょっとしたプレゼントもつける予定です。
まだお席たくさんあるのでぜひお越しください。
うつわのある暮らし
10/20(日)13:30〜15:00
場所:NHK文化センター梅田教室
大阪市北区角田町8-1 大阪梅田ツインタワーズ・ノース17階
受講料:会員4,004円、一般4,697円
※オンライン受講3,300円もあります。
▼対面受講の方はこちらを参照ください。
▼オンライン受講の方はこちらを参照ください。
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うつわと暮らしのお店「草々」
住所:〒630-0101 奈良県生駒市高山町7782-3
営業日:木・金・土 11:00-16:00
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