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【お店雑記】「大事かもしれないとき」に立ち会っている。
草々がオープンしてからもうすぐ4ヶ月。あっという間だったとは決して思わなくて、毎日ドキドキしながらお店に立っているし、毎月ドキドキしながら会計を締めている。
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好きが高じてやりはじめたのものの、やっぱりお店を続けていくために経営のことはちゃんと考えなくてはいけない。家賃や光熱費を払っていきたいし、継続的に仕入れもしていきたい。いったいどうやったらいまのゆったりしたスピード感を保ちながら、続けていけるのだろう。1年後2年後も、来たいと思ってもらえる場所にするためにはどうしたらいいのだろう。日々会計を見ながら試行錯誤をするし、やっぱり数字を見ることの前に、「人の顔」が思い浮かぶ。
草々にうつわを届けてくれる陶芸家さん、そしてこの4ヶ月で出会った一人ひとりのお客さんたち。
いつもお店を閉めた帰り道は、その日のことを反芻する。あのお客さんとあんなこと話したな、こんなうつわを選んでくれたな。たまに反省もあるけれど、いまのところうれしいことのほうが圧倒的に多いから、ひとりにやにやしながら運転している。(草々までは車で通っているんです)
そして先週あらためて思ったのが、『大事かもしれないとき』に私は立ち会っているのかな、ということだった。
お客さんと話しているとふと、それを感じることがある。
「..久しぶりに、こういうお店にきました」
静かにうつわを眺めていたお客さん。ぽつりぽつりと話したその先で、こぼしてくれた言葉。
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「はじめてのうつわなので、大切にします」
帰り際、ずっと溜めていたかのように放ってくれた言葉。あぁ、だから最初からずっとあんなに真剣に見てくれていたのか。きっとお店に入るときも、買うときもドキドキしていたのだろう。
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「あれが、ほしい」
うつわを見ていたお子さんが、お母さんにかけた言葉。もしかして、お子さんにとってはじめて選ぶうつわなのかもしれない。やさしい空気が一瞬流れたようで、その気持ちを受け取ったかのようにわたしも心を込めて包む。
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どれもたった一言なんだけれど、その瞬間にお互いのなかでワッと流れるなにかがある。ワッとってなんだよ、と自分で書いていて思うんだけど、この場所でなにかが動き出すような、でも小さな音で、力強い「ワッ」である。
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話していると少しずつ前後関係がわかってくる。そのときに、「あぁこのお客さんにとって、今日選ぶうつわは大きな転機になるのかもしれない」と思うことがある。ただの都合のいい思い込みかもしれないけれど、帰り道にふと、そう思うことがあるのだ。
たぶん、そんな大事なことはわざわざ見ず知らずの店主に言わなくてもいいことだ。でも、私はそのかけらを感じるとき、うつわにも気持ちが宿るような気がして、じんわりとうれしくなるのだ。
私も、3,000円のうつわからすべてがはじまった。
どんなときでも、一期一会。
「人」も「もの」も思いが届き合う、そんな場所にしていきたいなぁとあらためて思ったのでした。
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うつわと暮らしのお店「草々」
住所:〒630-0101 奈良県生駒市高山町7782-3
営業日:木・金・土 11:00-16:00
(7月は企画展のため、営業日時が変わります。詳しくはインスタまで)
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