安易な覚悟と判断じゃない。アレルギー一家が愛犬家になるまで
我が家は全員アレルギー体質。
動物が大好きだけど、飼えない。
残念だけど仕方ない。
みんなの体調が心配だし・・・
何事もないのが一番だ。
そう思って、諦めていた。
このまま飼いたい気持ちを諦めて、安全に暮らすことを選ぶのか。
でも…体調不良の可能性もあるけど、みんなが望んでいる。
ネコアレルギーは陽性だったけど、イヌアレルギーは陰性だった。
もしかしたら、気をつければ一緒に暮らせるかもしれない。
だけど、やっぱり無理!
息子は小さい時から喘息があって、本当に大変だった。
数年前に喘息が出なくなって、治療の必要がなくなって、
私は本当にホッとした。
私にとっては、この子の健康が最も大切なのだ。
かといって、ペットを家族に迎えたら、絶対手放すなんてしたくない。
どちらも守って、幸せにしてあげたい。
でも…できるだろうか。
どれだけ考えても、とても難しいことだった。
だから、
今までの私なら、絶対に飼う選択はしなかった。
私の考えを変えたのは、やっぱり乳がんだった。
怒られるけど、考えないわけにはいかなかったこと
がんと言われた時、考えないわけにはいかなかったこと。
”私はいなくなってしまうかもしれない”
仕事を頑張ってくれている旦那さん。
ひとりっ子の息子はゲーム大好きなインドア派。
2人ともゲームが大好きだから、とても仲良しだけど。
私がいなくなったら、この子は何を心の拠り所にするんだろう。
昼間1人で家で過ごす時、心を保つことができるんだろうか。
考えないわけにはいかなかったんだ。
「治療が始まれば、妊娠は禁忌です」
元々2人目は望んでいなかった私たちだけど、
実際にそう言われると、少しだけ何かが失われた気がした。
全摘になんの抵抗もなかった私だから、
妊娠してはいけなくなることもダメージを受けたかと言われるとそうでもないのだけど、
少しだけ、何か失くした気がした。
この感覚。
”今まで見えていた距離で焦点が合わなくなった老眼の感覚”や、
”素足で歩けなくなった年齢を重ねた感覚”に似ている。
要するに、
絶対になんとかしたい!
どうしても抗いたい!
ということではなく、
激しく悲しくもないけれど、確かに何か失われたな、という手応えみたいなものだけが残っている。
そんな感じだ。
受け入れて、老眼鏡を買ったり、タイツを履いたりして、
ベストを尽くしながら生きていく。
できることは、それだけなのだ。
”家族の幸せ”は何かを考えた
2022年、私の乳がんによって、我が家は穏やかではなかった。
旦那さんと息子は何故か超ポジティブで、絶対治ると信じていたけど。
8ヶ月ほどの治療期間、我が家はそれまでの凪いだ空気感ではなかったと思う。
でも、
ひとり息子は強かった。
私の病気の治療の間も、
治ると信じて一度も泣かなかった。
手術の日は定期テストと被っていたし、
入院も思ったより長くなったのだけど、
「現代医学を信じてる」と言っていつも通りの毎日を送ってくれた。
もちろん子供だからいろんなこともあるけれど、
私たち夫婦が一番大切だと考えている”こころの安定”を感じられる子になった。
旦那さんは職場に無理を言って、入院中は在宅勤務にしてくれた。
「もう中学生なんだから大丈夫だ」と言いながらも、
息子に寄り添って乗り越えてくれた。
そんな家族が望む幸せ。
何年も何年も夢見ていた”新しい家族を迎えること”。
家族を増やせない私にとってベストを尽くすということは、
”何事も起こしたくないから経験させないこと”ではなく、
掃除をして、換気をして、アレルゲンをできるだけ排除する努力をして、
家族みんなを幸せにすることだ。
「それぞれ頑張った私たちには、明るいニュースがあってもいいじゃない」
そう思わせてくれたのは、やっぱり乳がんだったんだと思う。
またひとつ、私は右胸さまに感謝することになった。
5月5日午前7時、片瀬江ノ島で
「心配はあるけど…みんなが幸せになれるならワンちゃん飼ってもいいかもね」
初めて私がそう言うと、2人はすごく喜んで、
旦那さんは「そうだよ、やりたいことはやっていこう!」とワクワクした声で言い、
息子は「俺、一生マスク生活でもいいから!」と言った。
でも、2人ともきっと半信半疑だった。
私だって、心が決まっていたわけじゃない。
一歩、前向きに踏み出しただけだ。
5月7日、ペットショップで
その2日後。
行動力の塊の旦那さんは、私をペットショップに連れ出した。
着いてすぐ、上の段にいた子犬と目が合った。
1人で遊んでいた、物怖じしない活発で明るい子。
本当に安直だけど、その瞬間この子だ!と思った。
他の子も可愛かったけど、私はこの子しか考えなかった。
この子をずっと幸せにしてあげたいと思った。
旦那さんはその場で即決した。
嘘みたいなスピードで、うちに家族が増えたのだ。
友達と映画を見に行っていた息子は、帰宅すると家族が増えていたので、それはもう驚いていたけど、とても嬉しそうだった。
目元が緩みっぱなしで、夢みたいだと何度も言った。
息子が差し出した手に、ワンちゃん(ももと名付けた)も耳と尻尾で喜びをいっぱいに表現してくれた。
こんな光景を見ることができるなんて
去年、私は先のことを考えるなんておこがましい気がして、
とにかく治療のスケジュールを追って、数日先のことまでを考えるようにしていた。
闘病中は考えもしなかった。
こんな光景を見ることができるなんて。
乳がんがなければ、
保守的な私は息子が何事もなく過ごすことを優先して、
こんな光景を見ることはできなかっただろう。
感謝でいっぱいだ。
とにかくすべてのことに。
本当にありがとう。
家族を幸せにするチャンスをくれて。
新しい家族も、心から愛おしく…
どんなことがあっても、ずっとみんな大切にしていくよ。
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