遊郭で高人さんを見つけました。11
こちらは性的な描写が含まれるため、苦手な方は閲覧をお控え下さい。
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遊女が行方不明になる事はよくある話だ。
人知れず自殺していたり、同様に事故死だったり…。
足抜けだったり、誘拐だったり。
自殺、事故死は地区内なら探せばすぐに見つかるし、足抜けは2.3日もあれば連れ戻される事が殆どだ。
だが誘拐は、大きな組織が裏に付いている事が多く、探しても見つからない事の方が多い。
ここは貿易港もある港町だ。
誘拐されて海外に売られていく事もありる。
そうなればもう探す手立ては無い。
今日は珍しく朝から見世の者全員が大広間に呼び出された。高人もまた座敷の後ろの壁に寄りかかり成り行きを眺めている。
少しして、楼主の絹江が座敷へ入ってきた。ザワザワとしていた者らが静まり返る。
「最近、遊郭地区で行方不明事件が多発しているわ。地区内は男衆が見回っていますが、それでも安心できません。皆んなくれぐれも気をつけるように。」
真剣な、少し焦っているような楼主の顔に、手こずっているんだなと感じる。
ザワザワと周りが騒がしくなる。
「引き手茶屋の帰りに襲われた子も居るそうよ」
「1人で外に出るのは怖いわね。」
俺は男だし、守ってやるくらいじゃないとな。9つの頃までは父に短刀の使い方を習っていた。護身用として持っておくのも良いかもしれない。
「チュン太に頼んでみるか。」
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「え、短刀ですか?」
ぱくっと今日の御膳の最後の芋の煮付けを口に入れながらチュン太がきょとんとした顔で聞き返す。
最近はほぼ毎日、「夜ご飯食べにきましたー!」とか言いながら俺の部屋に押しかけてくるようになってしまった。食事をしながらその日あった事を話したり、チュン太の外の世界の話を聞いたりするのが日課になっている。
「ああ、ダメか?」
お酒ではなく、お茶を入れてあげながら俺は言う。
今日はもうチュン太の相手のみだからと、打掛や女装は無しで着流しで対応していた。本当に気楽で客である事を忘れてしまいそうだ。
「それって、ここ最近の拉致誘拐の件でって事ですか?」
「なんだ知ってるのか?」
今度は俺がきょとんとする。
遊郭地区の行方不明事件なんていつもの事だと外ではそんなに話題にならないものだと思っていたけれど。
「…えぇ、まぁ…高人さんが居るんですから、そりゃぁ聞き耳は立ててますよ。」
貰ったお茶を、ずずっと飲みながら言う。
「…大丈夫だとは思いますが、短刀持って…単身敵地に乗り込むとか…やめてくださいよ…?」
貴方意外と大胆な事するから…と、ジト目でこちらを見てくるチュン太。
「しねぇーよそんな事。護身用だ。短刀なら少し扱えるから。それで頼んだんだ。」
まぁでも自分が考え無しに突っ込んでいく姿は容易に想像できたので、チュン太の心配は的外れとは言えないのが悲しい。
チュン太は疑いの目を閉じてフゥーっとため息をつく。
「いつもは、こういう時は綾木のヤツが真っ先に来るんだが、最近アイツ顔出さないんだよ。」
ボソリと愚痴ると、チュン太の肩がほんの一瞬ぴくりとする。
「高人さんちょっとこっち来て。」
「な、なんだよ。…ぅわっ」
ちょいちょいと手招きされて近づくと、後ろからがばっと抱きつかれた。
「あの呉服屋って、高人さんにとってどんな人ですか?」
後ろからなので、チュン太の顔は見えない。ただちょっと声が低い気がした。
「ん?綾木は、弟みたいなやつだ。あいつがこんな小さい頃から知ってるぞ?」
ちょーんと小さな子供の背丈を手で表してやる。
「…そっか。弟なんですね。なら良かったです。」
ニコリと笑って顔を覗き込んでくる。
「短刀はこちらで探しましよう。ですが、お渡しするのに条件があります。」
俺を膝に座らせて、真剣に見つめてくる。
「なんだ?」
いつもよりも、幾分か心配の色が濃い瞳だ。
「決して自分に刃を向けない事、危なかったら何を捨てても逃げてください。遊郭内の事ならすぐに情報が入るようにしてあります。すぐ駆けつけますから何があっても絶対に無理はしない事。」
心配性だな
困ったように笑いながらチュン太の頭を撫でてやる。
「わかってるよ。護身用って言ってるだろ?逃げるために使うんだから、自分から危険な事に首突っ込んだりしねぇよ。」
当然!という風に自信たっぷりに宣言する。
「そうしてください。あと、ちょっと確認したい事があって…」
チュン太が言うのを躊躇うように口籠もる。
「ん?なんだ?」
「呉服屋の名前が出たので…。これは貴方の許可が降りないと出来ないので、嫌なら断ってくれて構いませんからね。」
「?…あ、あぁ。」
という事は、あっちの事か。少し身構えてしまう。
「その、前にチラッと見えたんですが、首のとこ、跡つけられてましたよね…あれ嫌なんです。俺ので上書きしたい。」
懇願するように抱きしめられる。
「ぁ…あと…っ?」
顔が真っ赤で暑い。そう言えば綾木にやられたんだった…。すっかり忘れてた。
「口付けの跡、ここにあったでしょ?だめ?消えたかの確認だけでも…ダメですか?」
なんで今更と思ったが、はっとした。
こいつはきっと、本当は全部知っているんだ。
綾木とのあれを思い出してしまうから感覚が消えるのを待っていたのだろう。俺から綾木の話が出る事を目安にしていたのだ。
「…わかった…」
チュン太の頬を撫でて、髪を撫でてやる。
こいつは俺に酷いことはしない。
「それじゃ、寝所に。」
チュン太は俺を抱いたまま立ち上がると奥の床間の襖を開けて入る。ひと組の布団が敷いてあるそこに、ゆっくり降ろされ、ストンと座る。
「寝るのに帯が邪魔だから取っちゃいますね。」
そうだった。今日は夜着ではなかった。
隣に座ったチュン太がにこりと笑い抱きしめるように後ろに手を回すと、スルスルと帯を解いていく。
されるがまま身を任せていたら、綺麗に帯を解かれて綺麗に畳まれて布団の横に置かれていた。
それを見て、客らしく無くて笑ってしまう。俺の方が奉仕されていて。
「ふふ、なんかほんと、変なやつ」
笑う姿にホッとしたのか、チュン太もにこりと笑った。
「貴方に好かれたいですからね。もっともっと好きになってくれて良いんですよ?」
ゆっくりと押し倒され、組み敷くように上から眺めてくるチュン太は、とても幸せそうだ。
「考えとく…」
その視線が恥ずかしくて、これ以上の言葉が出てこない。
「ふふ。是非前向きにお願いしますね。」
「口付けしたいです。…高人さん…いいですか?」
頬を撫でられて、熱っぽくお願いされる。
俺がこくっと頷くと、嬉しそうに唇を舐めてくる。
「口、あけて…」
恐る恐る言われた通りにすると、ぐっと唇を押し付けられ、中に舌が侵入してくる。ちゅっ、くちゅっと水音をさせながら舌を絡め取られた。
「ふっ…はッふ…」
角度を変え、深く深く舌を絡められる。
応えるように舌を差し出すと、ちゅうっと吸われビクリとした。
唾液が甘い。頭がくらくらする。
口付けって、こんなに甘かったかな。いつの間にか夢中になってチュン太の舌を追っていた。
口内を弄っていた舌が上あごをなぞるように動くと、くすぐったくて身体がビクリとする。
口付けをしながらジッと見つめていたチュン太が、また同じ場所を執拗に刺激しはじめる。
刺激されるたびに身体が跳ね、唾液が溢れてくる。
「はふっ…んンッ…んんっも…やッ」
飲みきれない唾液が口の端から伝う。
顔を背けて口を外そうとすると、左手を後頭部に回されて固定されてしまう。右手は俺の手に絡めてぎゅっと握った。
ぢゅるる…っと音がするほど舌を吸われては、口内を弄られて息の仕方が分からない。苦しさと気持ちよさで瞳が潤んだ。
満足したようにチュン太が唇を離してくれた時には、くたりと身体の力が入らなくなっていた。
俺は整わない呼吸に翻弄され、トロトロに溶かされて彼を見上げてる。
チュン太は舌先で口の端をペロリと舐めながら、俺を見つめて少し余裕が無さそうに笑っていた。
「ふふ…かわいいです。」
くすぐる程の軽いキスを顔中に、ちゅちゅとふらせる。
下半身がズクズクと痛くなっていて、もぞりと、身じろぎする。
そうしている間に、するすると着物を開かれ素肌が暴かれていった。
「触っちゃダメな場所…ありますか?…」
チュン太は自分の襟元のボタンを外し、邪魔そうにシャツを緩める。
欲情し熱く見つめてくる視線にドキドキと心臓が煩かった。
触れて欲しいと思ってしまう。
「…ない…、触って欲しい…っ」
恥ずかしくて両腕で顔を隠してしまう。いま俺はどんな顔してるんだろうか。
「…っ…本当に可愛い。高人さん…」
チュン太は熱の籠った声でそう言うと、ベロリと首筋を舐める。何度も舐めては、ちゅぅっと吸い付かれていく。
「……かわいい」
その度に身体が跳ねて快楽に支配されていった。
右手は胸に触れて突起をクリクリと弄んでいて、中々下を触ってくれない。もぞもぞと腰が揺らめいてしまう。
「こっち…、触って欲しいですか?」
俺に、俺自身を見せつける様に視線の先を開けてくる。欲望に反り立つ自分のものはすでに透明の液を垂らしている。羞恥心で顔が熱い。それ以上に触れて欲しくてたまらない。
その様子をじっとチュン太に見られている。
「はっ…ぁっ…触ってほし…っ」
「…っ…ふふ、ほんとに可愛い。」
余裕の無い声。隠しているが呼吸も荒い。
優しい表情なのに辛そうで頬を撫でようとすると、その手を掴まれ床に縫い付けられる。
「高人さんは動いちゃだめです。気持ちよくなってて?」
耳元でそう囁かれ、ベロリと耳を舐め始める。
「んんッ!」
ゾクゾクと身体が震える。そこに自身への刺激が加わってくるともう何も考えられなくなる。
「あっぁっ…っはぁっあっあぁんっ」
ぐちゅっぐちゅっと水音をさせて上下に擦られれば、身体はガクガクと強い快感に震える。
「あっあぁんっちゅた…イっちゃうッもうッ」
「いいですよ。イって?」
グチュグチュと上下する手はさらに早くなる。チュン太はじっと俺の顔を見ている。
「はぁっあっぁんっだめちゅんたぁぁ」
視線が合うとその熱の籠った視線が更にゾクンと快感を押し上げた。
「ダメっイクッイクッ…――――――ッ‼︎」
ビクンビクンと身体が跳ねて、腹に欲望を吐き出す。
「はぁ…はぁ…っ」
ぐったりとする俺を見下ろして嬉しそうに笑う。
俺の余韻を楽しむように、鎖骨や胸に跡をつけていく。
「…はっ…」
チュン太の汗がポタリと俺の腹部に落ちる。呼吸が荒く辛そうだった。
「ちゅんた…?」
ベロリと、下腹部に飛び散る白濁を舐めとられる。
その刺激にビクリと身体が跳ねる。
「んンっ…」
そのまま、あちこちにキスをしながら下へ下へと移動していく。
「ぁっ…だめ…ちゅんた…っいまは…っ」
チュン太は聞こえていないのか返事が無い。敏感になった身体は怖いくらいにキスに反応し、ビクビクと震えた。
太ももにキスをし始めた頃に不意に不安になってしまう。
「ちゅんた…チュン太!」
少し大きな声でチュン太を呼ぶと、ビクリと身体を強張らせる。はっと気付いてぱっと手を離した。
「はっ…すみません…俺…っ」
はっはっと呼吸が整わず苦しそうだ。
俺の事ばかりで、自分は後回しにして…。こいつはずっとそうだった。こんなのダメだ。
そう思ったらもう勝手に身体が動いてしまう。
気付いたらチュン太を押し倒して上に馬乗りになっていた。そこからチュン太を見下ろす。
「…た、高人さん?」
チュン太は驚いてじっと動けずにいるようだった。
「チュン太、お前に触れられるの凄く好きなんだ。だから、その…、お礼がしたいんだ。」
こいつとなら怖くない。
だから俺のできる最上級の持てなしをしてあげよう。
チュン太は、何か言いたそうにこちらを見ていた。
「大丈夫だ。お前とだから」
俺は艶やかに笑う。幸せだと伝えたかったから。
そして、ゆっくりとチュン太の唇に口付けた。
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