遊郭で高人さんを見つけました。13
性的な表現を含みます。苦手な方は閲覧をお控え下さい。
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高人は1人部屋から夏の青々と輝く葉桜を眺めてた。外には出ないし着流しは暑いので浴衣を着たのだが、これがなかなか涼しくて気持ちいい。
最近、チュン太は昼間の見世へ遊びに来るようになった。その際に見世の全員にと、珍しい菓子や茶葉などを持ってくる。
絹江さんは苦い顔をしていたが若い遊女や使用人達には人気が高く、東屋の若さんは気が利くだの、いい男だの評価が上がっている。
今も玄関先で数人に囲まれて談笑中だ。
「……けっ」
楽しそーで何よりだよ。窓辺に肘をついてじーっと遊女達に囲まれたチュン太を眺める。
昼の日が高いうちから見世にやって来ては、ああしてしばらく話をしている。
見世の中も昼間であっても快く入れてもらえる程に顔が通るようになったようだ。
「こえーやつ。」
あいつは人の心に入り込むのが上手い。
俺に会うための条件だったはずの取引だって、今では無くてはならない生活の基盤になっている。便利なものに慣れてしまえばもう不便には戻れないものだ。
あの時、絹江さんは東屋を喰い尽くす気だったはずなのに、今では東屋に見世を支えられている。ある意味こちらが喰われたと言ってもいい。
チュン太は花房屋に無くてはならない存在となった。絹江さんもチュン太関連は目を瞑るようになっていた。嫌そうにはしているが。
「まぁ俺には関係ないか」
見てみろよ…あの遊女に囲まれて嬉しそうな顔。
「ったく。俺に会いにきたんじゃねーのかよ。」
むすっとして言うと、立ち上がり机へと向かう。窓の外を見るのはもうやめだ。開け放たれた窓から吹いてくる風にサラサラと髪がなびく。
机に置いてあった、チュン太から貰った万年筆をくるくると回す。光に反射して金細工がキラキラと光る様を見るのが好きだ。
「お前はほんと綺麗だな。」
万年筆の鷺の細工は本当に細かく、よく見ると瞳には宝石らしき石が埋められて光を反射して輝いている。小さいのにとても輝く石だ。
「高人さん、それ本当に好きですね」
ぬっと、チュン太が俺を覗きこむ。
「うわぁッ⁈おま…入る前に声かけろよ!」
びっくりして後ずさるが、なにぶん真後ろが机なので下がれず、ガタンと音がするだけだった。
派手に音がしたのでチュン太が驚く。
「大丈夫ですか!?」
チュン太が慌て起こそうとするが、ワタワタと起き上がり近づいてきたチュン太をぱっと手で遮る。
「だ、大丈夫だ!」
あれ、なんでこんな事してるんだ?
チュン太はピタっと止まって座った。
「大丈夫なら良かったです。」
そう言うと、チュン太はニコリと笑った。
いつものチュン太だ。
いつもと違うのは俺の方か。
「お、おう」
顔が熱い。調子が狂うな。
手で顔を隠してそっぽを向く。
「高人さん?」
チュン太が顔を覗きこんでいるのを、チラリと見る。
最近…、俺は調子が悪い。こいつの顔を真正面から見れない。誰かと話している姿を見ると心がざわざわしてしまう。
先程もそうだった。そしてその後にコイツを見ると無性に腹が立ってくるのだ。
「お前さ、最近遊女達と仲いいよな」
「そりゃー高人さんのお家なわけですし、仲良くしとかないといざって時に味方居ないと困るじゃないですか。」
きょとんとしてチュン太が言う。
「ふ――ん。」
ここ数日のチュン太はよく遊女達と立ち話をしていた。何を話しているかは聞こえないけど、それはもう楽しそうに談笑している。それを見るたびに胸にドス黒い何かが溜まるようだった。
「お前さ、ホントは女の方が良いんだろ?そっちで遊んで貰えよ」
口が勝手に。酷いことを言う。
「え?」
驚いたように俺を見るチュン太。
「春に出会ってもう夏なのにお前全然抱いてくれないし…どーせ男抱く気もねーん…だ…」
…ハッと口を抑えるが、言ってしまった事はもう取り返しがつかない。
チラリとチュン太を見ると真剣に何かを考え込んでいる。
「チュン…太?」
怒らせた?嫌いになった?
「すみません…ちょっと…」
「…え、ちょ…、まっ――…」
すくっと立ち上がるとチュン太は、止める間もなく部屋を出ていってしまう。
へ?いきなりすぎて頭が追いつかない。
俺…なんであんな事言ったんだ。
「…嫌わ…れた…か?」
別にチュン太は悪いことをした訳ではない。
ここは遊女と話して遊んで楽しむ場所なのだから。
どうしよう。きらわれた?
涙で視界がボヤけていく。涙を拭う気にもならない。
別に喧嘩したいわけじゃなかったのに。
下を向いてポロポロと涙が落ちるままに任せる。
「高人さん?」
心配そうなチュン太の声。反射的に顔を上げてしまう。
「へ?…帰ったんじゃ…」
ポロポロと涙が頬を伝う。気付いたら抱きしめられていた。
「すみません。ちょっと下と交渉に…。すぐ帰ってくるつもりでした。」
背中をさすられ、温もりが伝わってくると安心して、また涙が出てくる。
謝らなきゃ。
「ごめ…―っあんな事言うつもりじゃなかっ…」
「わかってますよ。大丈夫です。」
背中をさすりながら優しく言う。
「…ごめん…っ」
チュン太にぎゅうっとしがみ付く。
「高人さん、嫉妬してくれたんでしょ?俺、嬉しいですよ。だってそれだけ俺の存在が高人さんの中で大きくなってるって事でしょ?」
「へ…嫉妬…?」
これ…嫉妬なのか。じゃあ、俺は、チュン太に惚れ…。
バチンと目が合ってしまう。
「…?…どうしました?」
優しく微笑む顔が首を傾げる。
その顔に首まで真っ赤になるほど身体が熱く、心臓がドキドキとうるさく鳴った。
「なん…っでも…」
好きなんだ…こいつが。下を向いて顔を隠す。今は顔を見られたくない。
「さっき、抱いてくれないって言ってましたよね…?」
ゆっくりと畳に寝かされて、見上げるとチュン太が俺を見下ろしてくる。
「…最後まで…抱かれてもいいって…思った?」
視線が熱い。こちらまで焼かれてしまいそうだ。
圧倒されて、心臓がうるさくて口が開かない。
「ねぇ…教えて?俺は貴方が嫌がる事はできない。だから貴方の許可が欲しいんです。」
日の光が、チュン太の明るい亜麻色の髪をキラキラ輝かせている。あの万年筆の金細工の色だ。
ああ、やっぱり好きな色だ。お前の色。綺麗だな。チュン太の髪を撫でる。そうか。なんだ…。
「俺はお前が好きらしいな…。」
眩しくて目を細めて笑う。そして首に手を回して抱き寄せた。チュン太の匂い、温もり。全てが心を落ち付ける。
「…抱いてほしい。」
ずっと欲しかった言葉が貰えて、チュン太はハッと目を見張り、そして泣きそうに笑った。
「俺も好きです。貴方以外なんてあり得ないほどに。」
そう言うとゆっくりと口付ける。どちらとも無く唇を開き、深く深く舌を絡ませて繋がる。
「はっ…っふ」
チュン太の背中に手を回し着物を掴み、もっと欲しいとせがむ。
ちゅっぷっと唇をを吸いながら離される。
「…そんな可愛い事されたら離せなくなります」
余裕のない顔で困ったように笑う。
「いいから…離さなくて…っ」
チュン太の頬を掴んで自分から口付けをねだる。チュン太は求められるままに舌を差し出してくれる。
「はっん…っは」
したいように口付けを楽しんでいる間に、浴衣の帯が緩められていく。
暑かったから丁度いい。
チュン太も、汗がポタリと滴るほどだ。帯には手が届かないけど、シャツのボタンくらいは取れそうだ。
口付けをしながら首筋に手を這わせると、チュン太がビクリとする。そのまま気にせずシャツのボタンを探し当てるとボタンを外していく。
外せるとこまで外して、中に手を差し込む。素肌が触りたかった。
「はっ…高人さん…積極的ですね…。」
口付けから逃れて身体を少し起こしたチュン太は、いつも綺麗に着付けている着物を、俺に見事に着崩されていた。
「ふふ、ぐちゃぐちゃにしてやった。」
「あなたもイイ姿になってますよ?」
いたずらっぽく笑う俺に、チュン太も俺を眺めながら目を細める。
「もっと乱れた姿見たいです。高人さん。」
耳元で囁くと耳を舐めて、ふぅーと息を拭きかけられるとゾクゾクと身体に快感が走る。
「んんぅ…っちゅた…耳は…ッ」
「耳は?何?…耳がすき?」
濡れた耳に低い声で囁かれて、はむはむと耳たぶを喰まれる。
「ちが…ッぁっんッ」
逃げるように顔を背けようとすると、ガシッと掴まれて、執拗に耳を舐めてくる。
「もぉ…シツコイっ…」
「だって高人さん、耳すきなんでしょ?」
そんな事言ってないっと睨みつけると、チュン太はイタズラっぽく、ふふっと笑ってくる。
「かわいい。高人さん。大好きです。」
穏やかで優しい声だ。俺の好きな声。
チュン太は首筋を強く吸うと所有の証を付けていく。一つまた一つと赤い花が咲いていく。
そのまま胸まで舌を這わせてベロリと突起を舐める。手は身体を這いまわり反応を楽しむ。
「ん…っぁっ…」
胸を吸われるたびに身体が跳ねる。
突起から口を離すともう一つへ移動してクチュクチュと舌で弄び吸ってくる。身体に這わせていた手が、もう一つを指先で擽る。
両方を刺激し始めてから身体がビクッと跳ねた。
「あッ!あっ」
「高人さん、これも好き?」
チュン太の言葉にコクコクと頷いた。
両方の突起を指の先でカリカリといじられるとビクンと身体が反応する。
もう、頭がふわふわして何も考えられない。
「ちゅんたぁ…っ」
「はは。かわいい…っ。高人さんもうトロトロですね。」
また口付けをされる。ぬるりと舌が入ってくると、当たり前のように受け入れて甘い唾液を飲み下す。
「もっともっと、気持ちよくなりましょうね。」
チュン太の言葉をぼんやりと聞く。
もっと…気持ちいいこと…。俺は快楽に流されるまま頷いた。
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