涼やかな風が通り抜けた。
夏が終わる気配を感じて、心臓がつままれたように胸がキュッとなった。
ジリジリと蒸し返すような日差しを送っていた太陽も、いつの間にか加減をしてくれている。
胸を張っていた入道雲は、ただ置かれているだけの置物のように元気がなくなった。
真っ青な空も、気がつけば霞がかり少し遠くへ行ってしまったようだ。
夕暮れ時に聞こえるのは、ひぐらしの声。
カナカナカナーー
もの寂しい気持ちになってくる。
季節の変わり目はなんでこんなに切なくなるのだろうか。
そういえば。
近所の神社から聞こえていた、昼間に遊ぶ子供たちの声もなくなった。
「俺が勝ったから、2段なー!」
「さっき1段っていってたじゃん!」
そんなことを言い合いながら、階段をピョンピョンと降りたり上がったりする子供たち。
懐かしい。
そんな遊びをまだやっているんだね。
ジャンケンをして、勝ったら2段上がり、引き分けはそのまま、負けたら1段下がる。1番上に早くたどり着いた人が勝ち。
昔、やったなあ。
喧嘩しながらも、上がったり下がったりする様子が可愛らしい。
昼間の癒しだった。
神社から聞こえていた無邪気な声も消えてしまった。
お盆で里帰りをしていて帰ってしまったのか。はたまた、夏休みの宿題が終わらなくて、家で必死にやっているのか。
またひとつ、
夏の終わりを感じた。
茹だるような暑さが終わり、寝るときには窓を開ければ冷んやりした空気が入ってくる。
頬に優しくふれて離れていく風が気持ちいい。
窓を開けると、鈴虫の大合唱が聞こえた。
リンリンリンーー!
うるさいほどだ。
秋が始まる。
そう思うと、さっきまでのキュンとした切ない気持ちはどこへ、期待が止まらなくなった。
栗に、梨に、サツマイモに。
涼しくなれば登山にも行きやすい。
そうそう、温泉も気持ちよさそうだ。気温も下がり露天風呂もいっそう楽しめるだろう。
「この秋は何をしようかな♪」と期待を胸いっぱいにつめ込んでホクホクする。
さあ、秋が始まる。
お読みいただき、ありがとうございます。
また次の記事でお会いしましょう。
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