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組織のジレンマを成長の機会にするために

イノベーションのジレンマでも出てくるこの曲線。
人や組織の成長をよく表しています。S字になっているのがポイントですね。

今までと違う何かを始めても急に結果は出ません。積み重ねていく中で、ある時グッと伸びていく時期があります。

運動でもそうですね。私はマラソンをするのですが、より効率的に速く、長く走るための身体の使い方をYouTubeで学んだりします。良さそうだと思い、練習で取り入れますが、すぐには結果はでません。頭で理解していることを表現できるような身体になっていないからです。それでも繰り返す中で、身体が変わっていき、結果が出るようになります。

組織も同じです。外部環境に変化があり、戦略の変更が必要になることがあります。たとえば、BtoBが中心だった事業をBtoCに振り向けていくとしましょう。自分たちの商品の強みを消費者向けの市場にも向けていけば、シェアが取れるはずだ、のような仮説を持って進むわけですね。当然ながらすぐには結果はでません。市場が変わるということは、社内プロセスも変わる部分がでてきます。社員のスキルも変わっていく必要があるでしょう。そのような変化が積み重なってS字の最初の上昇カーブを描くわけです。

ところがどこかで頭打ちになります。このとき、一人でトレーニングをして、パフォーマンスを変えていくなら自分の考えだけで判断ができます。これ以上やるか、やめるか、新しく何を試すか、そのためのリスクは何か…などをいちいち人に相談する必要がありません。自分の判断で、新しい次のS字カーブを描き始めればよいのです。

では、組織だとどうでしょう?
頭打ちになっているとはいえ、それなりに機能している部分もあります。うまく行かなくなったからといって、率直にそれを発言するのは勇気が必要です。もう限界に来ているのではないかと発言すれば、後ろ向きになっていると非難されてしまうかもしれません。分業が進んでいれば、犯人捜しのようになってしまう可能性もあります。まさにジレンマです。

この時のジレンマは、いままでの成功パターンがあるので、それを捨てられない、変えられないということです。サクセストラップとも表現されます。S字の成長カーブを上る過程で、単一の方法論に熟達することだけを選んでしまったのですね。うまく行っている過程においても、別の方法はないのかと社内だけでなく、社外へと目を向け、変化に対するアンテナを育てておく必要があります。加えて、今までのやり方を良い意味で疑うことも求められます。あたり前に目の前のことをやるだけでなく、何のためにしているのかを考えるのです。

組織は、人も入れ替わります。そうした中で、手段を新しい人に伝えるだけだと単なる維持になってしまいます。なぜそのような手段を取っているかなど、そもそもの目的に立ち返る機会を持つことが必要です。四半期、半期、年度ごとといったタイミングで振返りの対話の場を持ち、やっていることの意味づけを確認し、はじめること、やめることを明確にしていく必要があります。そのようにして学ぶ文化をつくることが何よりも大きな強みとなるはずです。

コンサルタントとして中期経営計画の策定に携わることがあります。経営計画において大切なのは、戦略ではありません。自社はそもそも何を目指していたか、どんな意義を社会にもたらしていたか、そして、今後どのように憶えられたいかといった存在意義を深め合うことが何よりも大切です。戦略を描くことがゴールなのではなく、それを補助線として、自分たちが何者であるのか、どのように試行錯誤して変わりたいのか、変わるためにどのような対話の場を生み出すのかといった学びの文化づくりを意識します。

戦略は、あくまで進化し続けるための手段です。その実行を通じて、常に次のS字を描けるような組織能力を育てていくことが大きな目的です。

ひとりではなく、複数人で事業をやっていることはジレンマを生みますが、それは、成長のエンジンを生み出す大事な機会でもあります。そのような機会として捉えられる素直さ、前向きさがリーダーには必要だと思います。

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