コロナ禍で、スシローが増収しているのはなぜか?
コロナ禍の外食産業で、この結果はすごいですね。
記事では様々な要因があげられています。郊外のロードサイドが中心なので、影響を受けにくかったという点が挙げられています。ただ、それだけでは増収にはなりません。他店、他業態の不調を機に、都心の一等地に出店、人手不足に対するDX関連の設備投資などを進めてきたとあります。
「緊急事態でも」という記事ですが、この危機にただ「対応」したのではありません。コロナ禍以前から進めてきた社会の変化への「適応」が加速したと捉えるべきでしょう。
対応と適応
わたし達は、社会の中でビジネスをしています。したがって、社会の変化に影響を受けます。それに、「適応」していくことが大切です。変化に一喜一憂していたのでは進歩することができません。
吉野家ホールディングスの安倍会長は、その著書の中で「対応」と「適応」を意識せよと書いています。
今この環境、状況においてあらゆるシーンで分野を問わず、あらゆることが変わらなければいけないと言われています。そのことは真実なんですが、そうするとその言動に支配され、変わらなければいけないという強迫観念で目の前のことを変えていくと、たいていは間違ってしまう。変化が必要とはいえ、そういう変わり方ではよろしくない。
そうではなくて、スピーディーでなくてはいけないけれど、対応すべきことと適応すべきことをきちんと分別して、その時間レンジもテーマも目標も考えて変化をすることが今こそ重要で、そのためにも、まずは役割を認識して、自らの個性や固有のアドバンテージを踏まえてしっかりと取り組んでいただきたい。
タイトルにもある通り、倒産、BSE問題を乗り越えながら吉野家と歩んできた、安倍修仁会長の著書です。BSE問題は、外食産業が社会から影響を受けたことの一つです。引用したのは、そうした経験を経てきた安倍会長のコロナ禍への向き合い方として書かれていたことです。
安倍会長は、三省堂の国語辞書を引きながら、「対応」と「適応」の違いを述べています。
対応は「相手や状況に応じて物事をすること」と記述されています。つまり、変化の主体はほかにあって、それに自らの意思とは別に反応しなければいけない。
一方の適応は、「生物が外界の変化に合うように変化すること」と定義されていて、これは変わる本質は自らの意思。つまり、外界、外側の変化の要素(質量)を測り、それに応じた期間と変化の想定に合わせて、自らが変わっていくという進化のメカニズムを説いています。
世の中は絶えず変化します。ゆっくりであったり、急であったり。良い変化もあれば、悪い変化もあります。それをどう捉えて行動するか。大切なのは「自らの意思である」と安倍会長は指摘しているのです。
好景気よし、不景気さらによし
では、経営者はどのような意思を持つべきなのでしょうか。
松下幸之助さんは著書「実践経営哲学」の中で「必ず成功すると考えること」とおっしゃっています。
不況だから利益があがらなくても仕方がない、というのも一つの見方である。しかし、現実に不景気の中でも利益をあげ、業績を伸ばしている企業があるということは、やはりやり方次第だということではないだろうか。
つまり、業績の良否の原因を、不況という外に求めるか、みずからの経営のやり方という内に求めるかである。経営のやり方というものは、いわば無限にある。そのやり方に当を得れば必ず成功する。
世の中は絶えず変化していくが、それは生成発展するという自然の理法である、というのが松下幸之助さんの根本思想です。好況であれ、不況であれ、世の状況は”日々新た”に変わっていく。その中で成功していないのは、誰かの役に立とうという意思がなく、ただ「対応」しているだけだからです。意志を持って「適応」していく姿勢が大切なのです。その姿勢で経営をしていれば「好景気よし、不景気さらによし」となるはずだと松下幸之助さんはおっしゃっています。
どんな存在としてお客様に喜んでいただきたいのか
スシローの例にもどると、記事の最後の方に以下の様なくだりがあります。
水留社長は「回転ずしはエンターテインメントだ」と強調する。次にどんなネタがレーンに登場するのか、ワクワクしながら待つのは店舗でしか味わえない体験だ。
不要不急の外出自粛が求められる時代に、どうすれば足を運んでもらえるのか。自動化を突き詰めると、店内の活気は失われかねない。感染防止対策を徹底しつつ、「にぎわい」を演出することも欠かせない。
ここで「にぎわいを演出する方法」に目を向けるのは本質的ではありません。コロナ禍では、感染予防対策に対応する必要があります。これを一歩踏み込んで、店舗に足を運んで楽しんでいただきたい、そのワクワクを作るのが自分たちの存在意義だというところに本質があります。
日々、お客様に喜んでいただく意思を持って適応している結果が、たまたま今の環境下で結果として表れているということだと思います。
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