二刀流を可能にするANDの才能
ここのところお客さまとお話をしていると仕入れ価格の高騰の話が出てきます。こうなってくると目の前に迫るリスクに対して意識を集中せざるを得ません。お客さまによっては、もともと利益が出ておらず、とにもかくにも価格転嫁しないとならない、というケースもあります。また、将来に向けた投資を止めざるを得ないケースもあります。新しい人を雇えないということもあるでしょう。
その結果は、どうなるでしょうか。
一時的にはしのげても未来に影を落とすことになります。
私たちは、危機が迫ると視野狭窄になるようにできています。ある種の野性的な本能です。
そして、この行為を正当化するという傾向もあります。こちらは、本能とは異なり、知性の副作用です。実際は、自分の都合にあうように結論づけていることが少なくありません。
これは「ORの抑圧」という葛藤から逃げているとも言えます。
ビジョナリーカンパニーからの引用です。
確かに理性的ですが、進歩を妨げる落とし穴でもあります。
ビジョナリーカンパニーには、ORではなく、「ANDの才能」があります。
どちらかバランスをとるという話ではありません。両方を同時に追求するのです。
もしかすると、大谷翔平選手の『二刀流』を考えると分かりやすいかもしれません。投手か野手か、どちらかにした方が良いのではないかと悩むのは「ORの抑圧」です。大谷選手は、これに屈することなく「ANDの才能」を発揮しています。
大谷選手のすごさは野球の実力として表れています。しかし、注目したいのは、彼の長期的なビジョンとそれを実現するための日々の取組みです。
大谷選手も人間です。人知れず葛藤することもあるでしょう。
これまでも「ORの抑圧」に屈してしまいそうな場面もあったはずです。
しかし、彼は「ANDの才能」を持っていました。これは二刀流をやるという身体的スキルのことではありません。ビジョンを明確に持ち、両極にあるものを同時に追究しつづけるという才能です。
メジャーであのように二刀流で活躍することは、大谷選手だからできることかもしれません。しかし、「ORの抑圧」に屈せずに「ANDの才能」を発揮しようとすることは私たちにもできます。
苦しい状況が続く方もいるでしょう。もちろん、無理はできません。とはいえ、これまでも目の前の結果に一喜一憂するだけだったのではないかと反省する機会でもあります。
安易に「ORの抑圧」に逃げていないか、振返りたいものです。