「ちはやふる」のかなちゃんは、大江奏さんと言います。
「ちはやふる」がついに完結した。してしまった。
ここ最近の宣伝で、15年間続いていた連載なのだと知った。つまり、わたしが1巻を買ったのは15年前ということになる。
15年…恐ろしく長い年月だ……。
49巻が発売されてから間もなく、続きが読めると末次先生自らツイートしていた漫画アプリで迷うことなく課金した。だって49巻の終わり方あれムリじゃないですか?今までも何回か登場した“運命戦”だけど、あの場面での運命戦はさすがにムリじゃないですか?ずっと単行本の発売を待って読んでいたけど、さすがに12月までネタバレを避けて生きてはいけないと思いました。
わたしが「ちはやふる」を手に取ったのは、とても自然なことだった。
末次由紀先生が好きだから。それだけ。
百人一首にも競技かるたにもこれまで興味を持ったことはなく、それは「ちはやふる」が完結した今もほとんど変わっていない。多少は句を覚えたりしたけど、「かるたやりたい!」とはならない。けれど、それは漫画のおもしろさとは関係ない。
「ちはやふる」は、おもしろい。それはもう、マジでやばい。
だけど、決して“競技かるたを題材にしたからおもしろい”わけじゃないと思うんですよね。
もちろん「百人一首が好き!」とか「競技かるたやってました!」とかそういう人は、間違いなくその専門的な部分でも楽しめると思うのですけども。
わたしが何故こんなに「ちはやふる」をおもしろいと思うのか。
それは末次先生の描くキャラクターそれぞれの魅力、関係性、セリフにあると思うんです。
千早、新、太一の3人から始まったこの物語は、高校時代へ入ってすぐに、かなちゃん、肉まんくん、机くんが仲間になる。
新はひとり福井でメキメキと強くなるのだけど、千早と太一でつくった瑞沢高校かるた部は、チームとして成長していく。
この瑞沢高校かるた部がね、ほんと最高なんです……。
なんでだろう?キャラクターが個性的だからかな…個性的というか、ひとりひとりの感情や思想が、ものすごく丁寧に表現されているんですよね。
わたしはかなちゃんが特に大好きなんですけど、かなちゃんは呉服屋さんの一人娘で、和装がしたいからという理由だけで最初は弓道部にいるんです。だけど新設予定のかるた部が気になって覗いているところを、千早と太一に見つかってやや強引に勧誘される…という出会い。
かなちゃんの凄いところはいくつもあって、素敵なセリフもいくつもある。
大好きな百人一首をとても丁寧に解釈しているところ。
時代背景や歌人の人生から歌の意味を読み解き、美しく解釈するのがかなちゃんの素晴らしいところ。
競技かるたにその意味は必要ないと言われても、かるたは歌であることを忘れたくないと言うところ。
かるた部が体育会系だと言われても、身体一つで男女一緒に戦えるのは文化だからと言い切るところ。
百人一首にはたくさんの「逢いたい」があるから、自分にもいつかわかる日が来るのかと考えるのが好きっていうロマンチックなところ。
歌の解釈が曖昧なやつには容赦ないところ。
袴を着ると強くなるところ。
着物の魅力を誰よりも体現しているところ。
自分の弱さも仲間の弱さも受け入れて、励まし、努力できるところ。
まつげ3本しかなくて、すみれちゃんにマスカラ教えてって言えるところ。
ここまでのすべて、まだ10巻までの情報なので。かなちゃんの魅力はこの先どんどん増すばかりなので。
ところで、かなちゃんのフルネームは大江 奏さんと言います。太一が部員のことを苗字で呼ぶから、肉まんくんは西田くんで、机くんは駒野くんで、かなちゃんは大江さんっていう認識はずっとあったんだけど、かなちゃんて奏ちゃんだったんだなぁそういえば……って、この度読み返していて思い出しました。
百人一首を歌として愛し、詠む人に憧れるかなちゃんにピッタリの名前ですよね。奏。
素敵だなぁ。
ものすごい知識量で歌の意味と情景を伝えてくれて、和服の素晴らしさを教えてくれたかなちゃん。
部員として、チームとして、友として、千早のそばにいたかなちゃん。
かなちゃんの思想とか哲学とか信念とかそういうものが、大好きで、わたしまで一緒に救われた。励まされた。かなちゃんの「大丈夫ですよ」に、安心していました。
末次先生、かなちゃんを生んで描き続けてくださってありがとうございます。
「ちはやふる」のおもしろさは、競技かるたの枠におさまらない。
かるたをやる選手たちと、支える家族、教師、友人、それぞれの繋がり。それぞれの想い。それをビックリするくらい刺さる言葉で表現するセリフと表情のひとつひとつが、心をつかんで離さない。
単行本の50巻を手に取るのが、今から楽しみでしかたありません。
15年間の連載、本当にありがとうございました!
大好きな末次作品がこれからも増え続けますように願います。