ジャックは私です。＃７

　「殺害されたのは峰田麻里奈さん。（15)昨日自宅のソファで寝ているところを死体で発見されました。喉からの大量出血が原因で死亡したと考えられております。」

間部はテレビのスイッチを切った。そして啓介の方をじろりと睨んだ。

「どういうことだ？愛知県でも似たような事件が起きているだと？」

「俺は何も知らねぇよ・・・・・・・」

「本当かな？だが東京で起きた事件に関してはお前が犯人なんだろ？あ？」

「だから違うって！」

「こんだけ証拠を見せてるのにまだ認めねぇか。おい。これ以上何をしても無駄だ。連れて行け。」

尾身は警官に合図をした。啓介は過呼吸になりながら警官二人に連れられていった。

啓介は部屋からできる時、亀岡を鬼の形相で睨んでいた。

　妹が殺された。十六歳だった。兄である修平も深い悲しみを抱えていた。口蓋垂にテグスが結ばれていて、その先にあったナイフが落ちて肝臓を貫いたらしい。

誰が何の目的でそんなことをしたのだろう。

千恋が死んでから母と父は喋らなくなった。父は現実逃避のために読書に没頭しているように見える。母親はほとんど家から出ない。

修平も引きこもることが多くなった。何故千恋がこんな目に遭わなければいけないのだろう。

誰が何の目的でそんなことをしたのだろう。最初の問いがまた繰り返される。ここ最近眠れていない。何も喉を通らないせいか四キロも痩せた。

髪をかきむしる。大事な妹を奪われて憎い。憎い。とても憎い。いや待てよ。そういえば自分も人の命を奪ったことがあった。でもあれは自分が悪いのではない。友達がやったのだ。

偶然に偶然が重なって結局死んだというだけなのだ。だんだん思い出してきたぞ。名前は思い出せないが誰かの弟だった。

小三の夏休みだった。自分が九歳でその子が八歳の頃だ。どこかの裏山を秘密基地と称して、名前が思い出せない子とその兄と友達と自分とでよく遊んでいた。

その日は兄はいなかった。

自分達は弟にゲームを貸していた。確かミクロウォーズとかいう奴で青いカセットケースの中にオレンジと赤のデザインのゲームカセットだった。

その子はゲームを返したがケースの端が少し欠けているのを見つけた。

それに怒って友達が突き飛ばしたら泣き出したのだ。それにかっとなって二人で蹴ったり殴ったりした。

よろよろと逃げようとするその子を友達が思い切り突き飛ばした。

すると弟は廃屋の窓ガラスの破片に突っ込んで動かなくなった。自分達は怖くなって逃げ出した。そして秘密にしようとした。

翌日警察の人が家に来た。喉に破片が刺さって流血したことによる失血死だった。

だが少年法という奴で服役や報道を免れてのらりくらりと過ごしていた。

その後遺族はどこか遠くへ引っ越したらしい。それ以来一度も会っていない。遺族にも直接謝罪していない。

今思うととても馬鹿なことをしたと思う。

修平は心の中で深く謝った。