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イベントレポ:박준と語り合う、詩人박준(パク・ジュン)とその世界。

日本で紹介される韓国文学のジャンルが広がりを見せるなか、韓国ドラマの作中などでも度々出てくる「詩・散文」が気になり始めている方も多いのでは。
今回は、今韓国で人気のある若手詩人パク・ジュンさんと、聞き手にパク・ジュンさんの新作邦訳本を手掛ける趙倫子さん、姜信子さんをお迎えして、多くの人を魅了してやまない詩人パク・ジュンの世界に迫った。

詩人に迫るキーワードは8つ「詩」「文学」「父」「金素月」「美人」「死」「旅」「爆」

「詩」「文学」――元々無口で恥ずかしがり屋で自分のことをうまく表現できない少年だったというパク・ジュン。自分の考えを書き留めたり、自分と似たような人が書いた本を読んだりすることで、寂しさを紛らわしていた。青少年期に、成績やスポーツなどで常に競争に晒されることも苦痛だったという。そんなとき、周囲に詩を書く人がいないことに気づき、文学の世界は、皆が同じものをゴールとする競争の世界とは違う世界なのではないかと思い始めたそうだ。

「父」――詩にも多く出てくる「父」。詩「종암동(チョンアムドン)(鐘岩洞)」についてのエピソードや、父親との京都旅行などのエピソードを交えながら、父と自分について語ってくれた。

「金素月」――韓国の民族的叙情詩人として愛され続けている金素月(1902~1934)。その継承者ともいわれているパク・ジュン。自分なりに考える二人の共通点や、金素月への思いを語った。

「美人」――パク・ジュンの詩には「美人」もよく出てくる。しかし、どうも文字そのままの「美人」ではないようだ。尋ねてみると、彼だけの「美人」の定義があった。「美しい人生を送った人」「今は存在していない人」「だからこそ恋しい人」この3つを満たす人が、パク・ジュンにとっての「美人」だそうだ。

「死」――詩には「死」の影が色濃く出ているものも多くある。いつも暗く「死」のことについて考えているわけではないが、生活のすぐ隣にあるもの、自分から遠ざけてしまうと良くないものとして捉えている。多くの悪党たちは自分が死ぬことを考えていないと言っていたのが印象的だった。生物学的な「死」だけでなく、人間関係において生じる「死」についても考えているとのことで、散文集の表紙を描いた画家についても触れながらその理由を語った。

「旅」――詩人にとって「旅」は、日常や周囲の人からの逃避。旅先で一人寂しく書いたものが「旅」の詩となっているという。ただ、旅先でしか味わえない珍しいものを題材にはせず、日常にも旅先にもあるものについて書くそうだ。旅に出ても2、3日で日常や韓国料理が恋しくなってしまうという性格に親しみやすさを感じる。

「爆」――韓国での「爆」発的な人気についてどう思っているのだろうか。一作目の詩集は50万部、散文集は20万部を突破するほどの人気ぶりだ。恥ずかしがりながらも、自分の作品が多くの読者の胸の内や心の中に持っている風景にコツコツと語りかけている部分が評価されているのでは、と語った。

韓国では詩が身近なものなのかという問いに、「韓国の人にとって詩人はお化けのような存在」と話していたのが面白かった。詩を見えないものとして捉え、怖く難しいものとして受け止めているからだそうだ。知らず知らずのうちに多くの人が、詩は良いもので素晴らしく偉大なものだと考えているとも。また、自身の詩が多くの人に読まれているからこそ、韓国語で表現しうる最も美しい詩を書こうとしているとのことで、今後も目が離せない。

特に20~30代の女性読者から多くの共感を得ているパク・ジュン。その人気の秘密が垣間見られたイベントだった。まずはこれから刊行される邦訳本を楽しみに待ちたいと思う。

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(レポート:松原佳澄)


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