【スペイン巡礼7日目】100kmを超えた日の道は暑くて、生命に溢れてた Logroño→Navarrete
2021/9/8
巡礼7日目。
いつになく、気持ち良く目が覚めた。
昨日の幸せな夜の余韻が体に残っている感じがする。
いい夢を見ていたような気がするけれど、どんなだったかは覚えてない。
外も部屋の中もまだ真っ暗。
他のメンバーはまだみんな寝てる。
ボランティアのみんなが寝る前に用意してくれたであろう、朝食の席に一人つく。
シリアルと牛乳類、クッキー、パンと各種ジャム、お湯とコーヒーがテーブルに用意されていた。
まず起きてきたのは、ナイースとマリーナ。
やっぱり2人は健康的やなぁと、食べながらぼーっと思う。
簡単に朝食を済ませて出発しようとしている2人。
この後の行程の話をしていると、彼女たちはサンティアゴまでは行かないことがわかった。
今回は短い休みしかとれなかったので、ここから約50km先にあるSanto Domingo de la Carzada(サント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサーダ)という街がゴールらしい。
「また次の休みがマリーナと一緒になったら、続きを歩くつもりよ」と言うのはナイース。
スペインに住んでいると、そうやって休みごとに少しずつサンティアゴを目指すこともできるのは羨ましい。
「また、どこかで会おうね」とハグして2人は食堂を出て行った。
2人の歩くペースは僕らよりも早いし、カミーノ上ではもう会えない気がした。
その後、我々の出発の前にマドリードで泊めてくれることになったヘロニモ、母娘のルフィとノラ、ボランティアスタッフのマリアたちが起きてきて、挨拶ができた。
マリアは以前このフランス人の道を歩いていた日本人の女性を家に泊めたことがあるらしく、その話をしてくれた。
その女性は世界一周の途中にカミーノを歩いていて、たくさんインスピレーションをもらって良い友達になったそう。
寝坊するかな、と密かに思っていた韓国のクニョンは、やっぱり起きてこない。
インスタは交換していたので連絡はとれるが、挨拶して出て行きたかったので、ちょっと心残りやなと思いながらバックパックを背負った。
すると、外へのドアを開けるタイミングでちょうど起きてきた。
「やっぱり何となくお前は特別だわ」と言われ、こやつも前世で一緒やったんかも、と思う。
彼とは世界のどこかでまた、しっかり友達になりたい。
***
外に出ると、だいぶ明るくなっていた。
今日目指す町Navarreteまでは、12.5km。
途中に町は無い。
昨日荷物が減らせてゆりの肩への負担は軽くなったけれど、まだ腫れているのもあって焦らず短めに設定した。
いつもの矢印を見つけながら、ログローニョの大きめな市街地を抜けていく。
街を出たところで、釣竿持った地元のおじさんたちが水辺でのんびりたむろしていた。
この光景、どっかで見たぞ...とデジャヴを感じて考えたら、早朝のツバルの海岸だった。
(↑ツバルの早朝おじさん会議)
毎朝おじさんたちが3、4人で集まってゆるいミーティングしてる姿は、どこの国でも共通で多い光景なんやろうな。
「そうか日本人か!ここを侵略したアラブ人と違って君たちは平和ないい民族だよなあ」と飛んでくるブラックジョークにどう反応していいか困る。
娘がルナ・デ・ミエル(スペイン語でハネムーン)で日本に行って大好きになって帰ってきたが、自分は飛行機が嫌いで行ったことがないんだ、とのこと。
僕らのカミーノがいいものになるように、と願ってくれた。
***
綺麗な湖だった。
朝の空気の中歩いていて、本当に気持ちがいい。
おじさん会議のスポットになるのが頷ける。
(↑鴨が可愛かった)
しばらくすると、木々が茂るエリアに入った。
なんとなーく、木々から楽しげな空気が漂ってきた。
急に鳥の声が大きくなって、にぎやか。
入ってみると、なんとたくさんのリスが!
しかも人懐っこくて寄ってくる。
前後を歩いていた巡礼者たちも、リスたちに魅了されて立ち止まっていた。
海外で野生動物には無闇に触らない方がいいのはわかっていたので、あまりこちらからは近寄らないようにしていると、
見るからに「地元のリスおじさん」的な人を発見。
彼はすぐ近くに住んでいて、「気が向いたら餌の無塩ナッツを持って、リスたちに挨拶しにくるんだ」と言っていた。
彼のインストラクションのもと、我々も餌やりさせてもらった。
そのほか、アヒルに餌をやりにくるおばさんも。
彼女を見ると、アヒルたちが自ら駆け寄っていく。
地元の動物好きの人たちが毎日立ち寄って良くしてくれるから、ここの動物たちはこんなに人間を警戒しないんやということが良くわかった。
***
その先で、立ち止まって静かに耳を澄ませている巡礼者のおばさんに出会った。
一緒に我々も立ち止まって耳を澄ませる。名前もわからない鳥たちが元気にさえずり合っている。
横を、"Buen Camino〜" と言いながら足早に男性の巡礼者が2人通り過ぎて行った。
鳥の声をしばらく聴いていた彼女が、ふと一言。
"I don't want to walk fast and far. I want to see. I want to listen.”
(私は早く歩きたくないし、遠くまで歩きたいとも思わない。私がしたいのは、見ることと、聴くこと。)
ちょうど、休憩中に他の巡礼者から時折り耳にする「早く歩くのが凄いし、いいことだ」的な論調に疲れていたところだったので、彼女の言葉に癒された。
名前は、アイリーン。カナダから来ていた。
「カナダのリスは色が違うの。種類が違うのね」と教えてくれる彼女と、しばらくペースを合わせて一緒に歩いた。
***
途中で休憩すると言うアイリーンと別れて、歩くこと1時間半。
今日泊まる宿がある街、「ナバレテ」が見えてきた。
それなりにサイズ感がありそうな街並み。
それにしても、今日はいつにも増して影がなく、日差しが強い。
7日目の時点で真っ黒になっていては肌がもたないと思い、羽織っているパーカーの袖を伸ばしてブドウ畑の間を歩いた。
近くで見ると、レンガや土壁の古そうな家や通りも多くて、ちょっと砂っぽい感じ。
人口はそれなりに多そうやけど、日差しが強いこの時間(12時半ごろ)は歩いている人はほとんど見かけない。
と、家の建築をやっている作業員の人と目が合った。
「暑い中、作業大変ですね」と声をかけたら、「そうやね、でも仕事は簡単だから全然しんどくないで!」と。
雰囲気も笑顔も爽やか。
「日本人か、スペイン語上手やね!」と言ってくれる彼も、スペイン人じゃなくポルトガル人だった。
「あんたも上手やんか!」と返す。
アイリーンと別れ、日差しが強くなってからは誰にも会わなかったので、会話ができてだいぶ元気を取り戻した。
人とコミュニケーションすることは、やっぱりエネルギーの循環・交換なんやなあと、ふと考えた。
Buen Camino! と見送ってくれる彼と別れて5分ほど街中を矢印に沿って歩いたら、モノトーンな景色の中にとっても目立つ、青い看板が目に入った。
宿を発見!
三階建ての広い家を改装したような感じ。
きれいな玄関を入って、階段を上がったところに受付があった。
チャキチャキと受付をしてくれた彼女は、ここのオーナー。
この宿の名前 "Cántaro(カンタロー)" が僕の名前とめちゃくちゃ似てるので由来を尋ねたら、カンタローとはスペイン語で陶器の壺のことを言うらしい(入り口に大きなカンタローが置いてあった)。
「でも、なんで陶器の壺を名前にしたの?」という質問を受けた彼女が指さした壁には、アフリカの写真がたくさん飾ってあった。
オーナー夫妻は、ボランティアでアフリカに毎年通っているとのこと。
ここ2年間はコロナで行けていないが、早くまた行けるようになる日を心待ちにしていると、話してくれた。
この町ナバレテも壺の陶器が有名な場所で、アフリカで関わる女性たちが頭の上に乗せる水汲みの壺も印象的だったことから、アルベルゲの名前をカンタローにしたらしい。
(↑「壺に16リットルの水を入れて頭に乗せるのよ」と教えてくれた)
本当に、気軽に行けるようになってほしい...。
案内されたドミトリーはこんな感じ。
とっても綺麗。
コロナ禍のため、キッチンは電子レンジと水道以外は使用中止になっているけど、共有スペースとしては使えてベランダに洗濯物もばっちり干せる。
(↑机にあった雑誌。自転車で巡礼する人のことをビシグリーノと呼ぶらしい)
少し休んだ後、同じ部屋に部屋に泊まることになって話が弾んだこちらの夫婦は、フランスから。
ちょうど我々の倍の年齢だった2人は、慣れたカミーノを気ままに楽しんでいた。
それからの時間は、シャワーを浴びて、洗濯して、ご飯以外はどこにも行かずに体を休めて過ごした。
(↑ナバレテの町中にあった巡礼者の像。サンティアゴの方を向いているらしい)
(↑ランチに食べたベジタリアンサンドイッチ)
(↑広場にも、カンタローを頭に乗せる像があった)
***
夕方、洗濯物を取り込もうと共有スペースに立ち寄ったら、知らないお姉さんが座ってサラダを食べていたので声をかけた。
スペイン語で話しかけたら、言い終わらないうちに 「ごめんなさいスペイン語わからないの」と反射的に返されてびっくり。
英語でも大丈夫なことを伝えたら、心底安心したように "Oh god, that's fantastic...!" と力が抜けたようで、
「スペイン初めてなんだけど、こんなに英語が通じないとは思ってなかったわ...!前に行ったドイツとは大違い。スペイン語話せる友達が今買い物に行ってていなくてね。私がわかるのはHolaとManzana(リンゴ)だけなの。話しかけられるたびにSorryって言うのに疲れちゃった。友達に誘われて気軽に来たのに、こんなに大変だとは思わなかったわー......」
と、安心したのか今度はマシンガントーク。
そのまましばし一緒にお茶した。
巡礼者にはスペイン語を話さない人も英語が通じる人もとても多いので、巡礼するのに困ることはあまり無さそう。
けど確かに、英語の普及率がドイツ並みだと思って来ると違いにびっくりするやろうなあと思う。
言語は英語だけというアメリカ人や、フランス語だけというフランス人の方も、不便は時折感じながらも問題無くたくさん歩いているので、カミーノを検討される際は言語はそこまで気にしなくても大丈夫です。
※以前、言語は日本語だけという友人も楽しんでサンティアゴまで歩ききっていました。
***
部屋の外からかなりの音量で笑い声が聞こえてきて窓の外を見たら、宿の前のベンチでオーナーが地元の人たちと団欒してた。
毎晩、同じ顔ぶれが集まる憩いのベンチなんやろうな。
なんだかその空気にめちゃくちゃ癒された。
部屋は、食堂で出会ったフランス人夫婦とアメリカ人のお姉さん、そしてイタリア人の若いカップルが一緒だった。
イタリアの彼らと話しているときに、今日で出発地のパンプローナから歩いた距離が100kmを超えたことに気がついて、一緒に喜んでくれた。
彼らの名前は、ルイージとジュリア。
歳が近くて、何となく近い空気を感じた2人。
彼らとは、明日以降もどこかでまた会う気がする。
みんなそれぞれ歩き疲れを感じているよう。
夜は言葉少なに、早めに消灯した。
明日は距離を少し伸ばして、22.6kmを歩く予定。
***
8:15 出発
12:45 到着
4時間30分 12.5km 19,623歩
Albergue el Cantaro泊(€12)
出発地パンプローナから107.8km
この日の動画はこちらから↓