“空気“が生む、企業のメンタルヘルスの課題を解決する
"空気"は人を殺す力を持っているーー。最初に聞いた時、思わずハッとさせられるような言葉を、自らの経験で持って感じ取り、今回の最終審査に挑むのは慶應義塾大学文学部の黍田(きびた)龍平さん(19)だ。
KBC Students Accelraretor Progrum(SAP)セミファイナリストを紹介する企画【#SUMMITへの道 】。第十回はStudent Startup Hub 1期として、またCode Republic Startup School2020 3期やJOBS CAMP 1期など、スタートアップのグループに携わった経験のある黍田さんをご紹介します。
今週末に最終審査が行われるなか、果たして黍田さんはKBC SUMMITのファイナルピッチに進むことはできるのか。ぜひご注目ください。
――事業内容について教えてください。
私が取り組んでいる事業を一言で表すと、カウンセラーへのオンラインマッチングサービスです。これだけでは既存にも存在するサービスですが、他社との優位性は言語を用いず、働く人のメンタルを把握するという点です。具体的には、色彩心理学に基づいた色の選択と音声入力を用いたアンケートを週に1回行い、潜在的精神疾患者(予備軍など)を選定し、カウンセラーと繋げます。
――今回のビジネスアイデアのきっかけは?
私がこの事業を取り組むきっかけなった出来事は、中学生の頃です。
人の顔と名前を覚えられない後天性相貌失認症を患っている私は、幼い頃から人の顔つきや口調などを気にして、周囲の”空気”を読んでいました。そんな中、中学生の頃、学校でいじめの調査が行われました。私は初恋の相手がいじめを受けていた事実を知っていたので、担任に伝えようと思っていたのですが、担任からいじめの事実を隠蔽する脅迫行為がクラス全員に行われ、他の生徒は何も言わないため、私はその教室内に蔓延る”空気”を読み、声を上げることができませんでした。その後いじめは加速し、居場所を失った彼女は最終的に転校してしまいました。初恋の相手を失う経験を通して、初めて周囲の”空気”を読んできた自分に対して激しい憤りを感じました。
その頃、私が小さい頃から憧れていた企業で過労死自殺事件が発生しました。私は、自分が憧れていた企業で過労死自殺が起こったという事実を認められず、東京の本社ビルまで出向き、話を伺い、そこで返ってきた言葉は、「死ぬまで働くことが当たり前という"空気"だった」でした。この時、私が学校で感じた"空気"は、学校だけでなく、企業にも同様に存在していることを知りました。また、企業の場合は、生計をたてないといけないなどの問題から、この"空気"は人を殺す力を持つものだと私は感じました。
学生時代、私は、この"空気"が原因で大切な人を救うことができませんでした。この人を殺す"空気"が企業内にも蔓延っているのであれば、私は自分の大切な人がまたこの"空気"によって押しつぶされないように......と思い、メンタルヘルスの領域でプロダクトを考えています。
――SAP期間を通して取り組んだことや苦労したことはありますか?
SAPに参加してから私は、事業案をピボットし、ユーザーヒアリングをすることからもう一度始めました。しかし、センシティブ内容だからこそ、中々上手くヒアリングできず、苦労しました。
自分の過去の苦い経験を社会問題として改めて捉えた事業内容だと伝わってきました。そんな彼にSAP期間を通して伴走してくださったアドバイザーさんは、音声から気分状態を可視化する音声感情解析AI「Empath」を提供し、メンタルヘルスやマーケティングでのアプリ開発を行っているEmpath Inc.の代表取締役CEO下地 貴明さんです!
――今回のアイデアについてどう思われましたか?
領域としては非常にマネタイズが難しいところを攻めているので、突破口を見つけるのにとても苦労しそうだなと感じています。ただ、何か1つでも黍田さんしか成しえないユニークなアイデアで本当に困っている人を助けられたら、道は開けるのではと感じています。柔軟に選択を変えていくことはビジネスの上でも重要なので、突き進むべきものが見えるまではどんどん変えていくとよいと思います。
<SAP CSメンバーの南條健吾(16期)からのコメント>
様々な事業についてのアイディアやそれに対するビジネスとしての有用性を互いに話し合いながら検証し、その中で一つ一つの原石のようなアイディアを磨いてとても魅力的且つ現実的なアイディアが磨きあがっていく様子を見ていて、私自身も毎回のミーティングごとにワクワクしながら話を聞いていました。
――最後に黍田さんから意気込みを。
今はまだ未熟なプランですが、僕が創るサービスは、いずれ働く人の未来を照らします。
自分の過去の苦しい記憶、「やってしまった」という感触をさらけ出すことは、難しい。だからこそ、自分の過去の事実にしっかりと目を向けて、前に進んでいく黍田さんのアイデアには誰よりも手触りの実感が込もっているように感じました。最終審査まで残り1週間、このKBCのSAPを通して研ぎ澄まされているものは、この短期間だけで終わらず、その先をすでに見通しているように感じます。(執筆=KBC16期 青木陽花)
【KBC SUMMIT 12月20日 (日) 15:00-19:00 開催!】
昨年300人もの来場者によって話題となったKBC SUMMITが「YOAKE」をテーマにオンライン開催決定!!感染症の拡大によって「私たちのあたりまえが変わってしまった」と悲観するのではなく、今まで以上に未来を広げていく"チャンス"だと感じてもらえるようなワクワクをお届けします。
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慶應義塾大学准教授の琴坂将広氏、XTech株式会社代表取締役CEOの西條晋一氏、ANRI代表パートナー佐俣アンリ氏、そして株式会社ビビッドガーデン 代表取締役社長の秋元里奈氏をゲストとしてお呼びし、感染症拡大の今に聞きたい「転換期」のトークセッションをしていただきます!
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