短編「女の子ドリル-女の子、それは僕らの永遠の問題-」第一問
はじめに
この作品はエッセイコミック向けの漫画原作の短編小説です。男にとって永遠の謎である女性を楽しく、ミステリアスにドリル(問題集)として描きます。創作大賞向けに三話までnoteにアップしました。
あらすじ
高校教師の西園寺慎吾は、伯母が理事長代理を務める共学になった元女子高に赴任する。女心が分からない西園寺は、彼女たちに振り回されて散々な目に合わされていく。
これは女の子という永遠の問題に立ち向かう、頼りない男の闘いの記録である。
すべての男たちよ、女の子ドリル(問題集)を手に取れ!
第一問 女の子の話に意味はあるか? 〇 or X
拝啓 庭のあじさいが鮮やかに花開き、梅雨の季節となりました。お母さん、そろそろ入院生活に飽き飽きしているのではないですか。早く面会が認められるといいのですが。
ボクはと言えば、伯母さんが理事を務める高校で働き始めて三か月ほどになりました。慣れたと言えるといいのですが、今までの男子校と違って女子生徒も初めて担当しています。なので、戸惑うというか、困るというか。
一昨日もこんなことがありました……
「西園寺先生! 聞いてください。私、限界なんです」
職員室で今にも泣きださんばかりの声を出しているのは、ボクが担任する二年三組のクラス委員・安藤優希だ。成績もよく、落ち着いた性格でクラスメイトからの信頼も厚い。
はずだったんだけど……
「クラス委員て本当に仕事がたくさんあって。でも、うちのママはPTAの役員だし、弟は付属の中学で生徒会長で」
なんだ、この話? 主語と述語はどこいったんだという感じで、ボクの頭には全然話が入ってこなかった。
「えっと、クラス委員が大変てことでいいのかな。もしかして辞めたいとか思ってるの?」
ボクの前には中間試験の解答用紙が積み上がり、採点に追われていたのだが。彼女の慌てようにそれどころではないのかと手を止めざるを得なかった。
「そうじゃありません。聞いてください、私はジョンの食欲がないから心配で」
ボクの質問はどうやら間違っていたらしい。それが証拠に彼女はイライラと足踏みをし始めた。
「ジョン? うちのクラスにそんな子いたかな」
「私のトイプードルです。すごくかわいいんですよ。エミちゃんはミックス飼ってて、一緒に散歩するんです。それでドッグランにいくと、すごく大きなセントバーナードがいて」
さっきまで泣いていた彼女は、今度はどんどんとテンションを上げてしゃべり始めた。結局、彼女は犬の話がしたかったのか……
「いや、安藤さん…… 先生さ、テストの採点を今日中にしないといけなくて」
「ひどい! 私の話よりもテストなんですか!」
「そうじゃなくて、聞きたいことがあるなら答えるけど」
「だから、私は聞いてくださいって」
「だから、聞いてるだろ。何を教えて欲しいのか、はっきり」
「バカぁ!」
彼女はそう言うと、机の上にあったテスト用紙を掴んで職員室の天井に向かって力いっぱい投げた。テスト用紙がボクの目の前でひらひらと空中に舞う。
「おい、何するんだ。まだ採点中なんだぞ」
「先生なんて、大っ嫌い!」
泣きながら走り去る彼女を、ボクは呆然と見ているしかできなかった。
「なんなんだよ……ボクが悪いのか? まったく最近の子は」
「わかってないなぁ、西園寺先生」
ボクに話しかけたのは、後ろの席に座る同僚の数学教師・山下真知子先生だ。リクライニングを思い切り倒して、伸びをしながらボクの顔を覗きこんできた。
「な、何がですか? ボクはちゃんと生徒の言いたいことをですね」
「教えてあげましょうか、さっきのこ・た・え」
いつも必要なこと以外はしゃべらない、普段は無口な彼女にしては珍しいことだ。どこに興味を持ったのか、思わせぶりな顔で僕を下から僕を見上げている。
「答え? 僕は教師として生徒の悩みを解決してあげようと」
「じゃぁ、問題です。女の子はなぜ話すのでしょう?」
「そんなの決まってます。悩み事があるから、担任である僕に答えを聞きたくて」
真知子先生の柔らかい人差し指が、ボクの唇をそっと押さえた。え、何?この人……
「女の子の話はね、意味なんかないの。ただのお・しゃ・べ・り」
「おしゃべりって、何の意味が? 問題が解決しないじゃないでですか」
「しなくて、いいの」
彼女はそう言って悪戯っぽく笑った。目元のホクロが一緒に揺れた時、ボクはなぜか正視できなくて顔を背けた。ど、どうやら彼女はボクを面白がっているらしい。
追伸 お母さん、女の子って何なんでしょうか? あぁ、僕にとっては謎だらけです。
短編「女の子ドリル-女の子、それは僕らの永遠の問題-」の続きは下記から
あとがき
まだ企画中の作品のため、今回はエッセイコミック向け原作としてまとめています。3-6ページくらいのコミックと、「女の子あるある」を問題集にしてセットで作れると面白いかなと思っています。
当面は短編小説として描く予定です。