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EURO2024をベストイレブンを考えながら振り返る。

欧州各国のサッカー代表チームによって争われる「UEFA EURO 2024」。6月15日に開幕し、7月15日の決勝まで1ヶ月の間、行われた。サッカーファンなら誰しもが楽しみにする4年に一度の国際大会だ。私もそのうちの一人である。

今回は、そのEURO2024のベストイレブンを選んでみた。

EURO2024の概観

今大会を振り返ると、強豪チームが順当に勝ち上がり、真正面からぶつかる見応えの多い試合が多かった。特に、スペイン、フランス、ドイツ、ポルトガルは予選の試合から優勝候補として期待を持てるチームの仕上がりだった。4チームで特徴が異なるのも面白い。なお、イングランドは予選ではあまり調子が良くなく、特にシステム面で問題を抱えているように見えたが、決勝トーナメントで修正して調子を上げた。

また、私はプレミアリーグの長年のファンで、中学の頃くらいからアーセナルを応援している。今大会は、近年のプレミアリーグの強さがよく分かる、プレミアのクラブ所属の選手の活躍がよく目立った。

一方で、普段あまり見ないリーガ、ブンデスのクラブに所属する選手の活躍も目立った。例えば、ナーゲルスマンが率いるドイツはその典型で、他にはスペインのダニオルモ、ヤマル、イングランドのベリンガムあたりはそうだ。これを機に、他の国のリーグの観戦もしたくなった。

強豪チームを取り上げてきたが、ダークホースと呼ばれるクラブの活躍もよかった。私の中では、デンマーク(特にイングランド戦、ドイツ戦)、オーストリア、ジョージアの試合展開はとてもよかったように見えた。これらのチームは総じて、守備ブロックをしっかりと固めつつ、トランジションのところでのスピードが速かった。フルマッチでも見る醍醐味は、こういった想定外の展開を過程を追跡しながら見れることにある。


EURO2024のマイ・ベストイレブン

さて、ベストイレブンに話を戻そう。このベストイレブンは、私の中では文句なしで選出したいという選手と、最後まで悩んだ選手が両方含まれている。ただのフットボールファンという立場からの選出なので、何も権威はなく、他の見ていた人と視点を共有できたらよいと思って共有している(フットボール談義を久しぶりにしたいという欲求も含め)。

ベストイレブン
ベストリザーブ(控え)


フランス代表からの選出・3名

試合を観ていて、この選手は違うなと思ったのは、フランスの3人の選手だった。テオエルナンデス、カンテ、サリバである。

今回のベストイレブンで一番違和感を持たれるだろうと思うのは、おそらく左ウイングのところにサイドバックのテオを入れているところである。このテオのパフォーマンスはかなり高かった。恥ずかしながら、この選手のことを知らなかったが、攻撃面と守備面で文句なしのパフォーマンスだったように思える。

もともと知っていて改めてその凄みを感じたのは、同じフランスのカンテである。ここ数年のデシャン監督が率いるフランス代表を支える間違いなく中心選手の一人で、トゥヘル監督のチェルシーをCL優勝に導いた時の一人でもある。マケレレロールという言葉があるが、マケレレのような的確なポゼッションや奪取能力だけでなく、カンテは運び屋としての推進力がすさまじい。今大会は、まるでドリブラーのようなドリブルまで何度か見せていた。フランスが優勝していたら、間違いなくMVPだっただろう。

そして、最後にサリバ。アーセナルファンという贔屓目はあるにせよ、現時点で世界最高のセンターバックと評価されるレベルにある。代表戦で、その実力を同様に発揮し、堅実に仕事をしながらセンターバックとしての格の違いを見せつけたように思う。


イングランド代表からの選出・3名

続いて、準優勝したイングランドからはリザーブを含めて3人を選出した。まずCBにおいては、サリバが個人的な圧倒的なパフォーマンスを感じた中で、もう一人安定してストッパーの役割を果たしていたのがストーンズだったように思う。シティはCBが豊富なので(ルベン・ディアス、アカンジとSBもできるアケ、グバルディオル)、クラブの方では今シーズン少し出場が少なかった。それでも、イングランドが苦しむ中で、勝ち切る試合につながるプレーが多く見られた。

イングランドは、特に決勝トーナメントに上がってラウンド16のスロバキア戦から、中盤のアーノルドを19歳のメイヌーに替えてテンポがよくなった。周知のとおり、アーノルドはリバプールで規格外の右SBとして活躍していたので、中央は合っていなかったように見えた。

攻撃的なMF、今は絶滅危惧種になりかけているトップ下のポジションで、ベリンガムを選んだ。ジダンを彷彿させるように、独特の違いを作れる選手でありつつ、守備面でもサボらずにチームに貢献する姿勢を見せ、イングランドの決定機にも何度も絡んだ。

最後にもう一人、ワトキンスをリザーブに入れた。今大会のイングランドで劇的な勝利をもたらしたワトキンスは、アストンビラでの今シーズンの飛躍と同様に、(今大会少なかったようにも見えた)従来通りの純粋なCFとして決定的な役割を果たした。選出しなかったがチェルシー所属のパーマーも同様に印象的だった。前評判通り、リザーブにとてつもない選手が並び、タレント集団としてのチーム力を見せる形になった。


CFに対する所感

ワトキンスのところでも触れたが、今大会を振り返りながら、CFの選出をどうするかに悩んだ。機動力があり、柔軟に試合を組み立てられるトップが今大会は目立った。たとえば、スペインのモラタ、イングランドのケイン、フランスのグリーズマン、ドイツのハバーツなど。一方で、それぞれのチームに点取屋やフィジカルの強い選手がもう一枚いたことも印象深かった(オヤルサバル、ワトキンス、ジュルーまたはテュラム、フュルクルク)。ポルトガルのCロナウドへの非難が多かったのも、こういう他チームの事情があったかもしれない(個人的には、リバプールで中央をやることもあったジョタのプレーがもっと見たかった)。

そのような中で、CFとして印象的でチームの躍進に貢献したオランダのメンフィスを選んだ。メンフィスは、テンポがよくてかつ裏をかく柔軟なプレーが多いので、見ていて面白かった(もう一つのラッパーとしての活動にも注目したい)。


ポルトガル代表からの選出・2名

ベスト4には入れなかったが、見ていてスペクタクルなフットボールを展開したのがポルトガルだった。とにかくテンポよくパスがつながると同時に、独特のリズムでボールを運んでいく。あとは、先ほど不満が集まったと述べたが、Cロナウドを中心にチームが勝利に向けて団結しているように見えた。

このポルトガルで目立ったのは、ベルナルドシルバとブルーノフェルナンデスだった。マンチェスターの2つのクラブに所属する司令塔は、違った形でゲームを組み立てた。個人的に好きなこともあるが、シルバはペースダウンのオプションを持ちながら、ドリブル、パス、シュートのクオリティでは圧倒的だった。

もう一人、Cロナウドと同様に、シニアとしてチームを牽引したのがぺぺだった。かつての悪童は形を潜め、堅実にディフェンスをしながら随所に気迫を見せてチームを鼓舞していた。41歳で延長戦を含めてトップチームのスタメンで出続けるというのは、自明ながらとんでもないことである。高校の頃に横浜のクラブW杯でマンチェスターUのロナウドを直に見たときのことを思うと、10年以上経っても世界の最前線に立っている姿にとても勇気をもらった。何よりかっこよすぎる。


スペイン代表からの選出・7名

最後に、優勝国スペインについて書いて終わろう。結果的に、16名の選出枠のうち、7名をスペインから選出することになった。決して意図的に大人数にしたわけではなく、自然とこれだけの選手を選んでいた。それだけ全てのポジションにハイクオリティの選手を揃えていたことがわかるし、リザーブの選手も充実していた。

リザーブから話すと、最大のサプライズはダニ・オルモだった。「スペインの至宝」とも言われる若き司令塔ペドリが大会途中で怪我をしてしまい、急遽オルモに出番がまわってきた。ペドリの落ち着きのあるテンポとはまた少し違い、オルモはスピーディにチームを前に推し進めながら自身も得点機会に積極的に絡んでいく。今大会のスペインには前への力が強い選手が多かったからこそ、そこが非常にマッチしているように見えた。特にドイツ戦の1ゴール、1アシスト、フランス戦の神がかったゴールはスペイン優勝に多大な貢献を果たした。

もう1人のサプライズには、ファビアン・ルイスがいる。特に予選リーグのスペインMVPは文句なしでルイスを挙げるだろう。それくらい好調を示し、チームを牽引していた。

さて、スタメンで選んだスペイン代表選手について話そう。まずはゴールキーパーのウナイ・シモンから。シモンの選出には、そこまで異論はないだろう。堅実なプレーとスペインを何度か救ったセービングに光るものがあった。他の選手で言えば、イングランドのピックフォードやフランスのメニャンなどが考えられる。今大会のスペインは当然、攻撃力の方に目が行きやすいが、最終ラインから攻撃を組み立てられていたし、守備の方にも安定感があったから、ドイツ、フランス、イングランドといったW杯優勝国にPKではなく勝ち切ることができた。

次にサイドバックの方は、文句なしで、スペインの左右の2人、左にククレジャ、右にカルバハルを挙げたい。この2人がいなかったら、スペインがここまで勝ちきれなかったのではないかと思わせるほど、予選リーグから決勝まで安定して高いパフォーマンスと一目置かれるプレーをしていた。

特に、ククレジャに関しては守備の面でも相手の攻撃の芽をつぶすようなところが多く、決勝戦のゴールアシストに代表されるように左サイドから決定的なところにクロス、オーバーラップで関与していた。久保と同世代のカンテラ出身として名前が通っており、ヘタフェでチームメイトとしてもその才能を示し、現在はチェルシーで活躍している。既にそうかもしれないが、近いうちに世界最高のサイドバックと呼ばれるかもしれない。

最近では、ポルトガルのカンセロやウクライナのジンチェンコのように、ペップ・マンCのもとで「偽サイドバック」という形で中央に入ってパスを組み立てる選手が目立っていた。しかし、この「偽サイドバック」は長期でチーム作りをできるクラブチームだからこそ可能なポジションだとも言える。ククレジャのような選手は、代表戦にとってぴったりだったのだろう。

もう一人のカルバハルは、若きスペインチームの中で、ベテランとしてのしたたかさとデュエルの強さが特に光る選手だった。準々決勝か準決勝のときに、わざとイエローカードをもらいに行って、右サイドを死守した場面はまさにその典型だったと思う。レアル・マドリードで長く活躍し、今大会が最後になるかもしれない中で優勝を勝ち得た後、カルバハルが見せた喜びと涙には感極まるものがあった。

中盤では、大会MVPにもなったロドリを選出した。マンチェスター・シティでは、ロドリの出場試合が負けないことから、「無敗の男」と呼ばれているが、スペイン代表でも同様の安定感を誇った。ロドリがいることで、とにかくチームが締まる。きちんと守備をするし、きちんと攻撃にも参加する、そういうチームが生まれるような気がする。そして、その中心にはロドリがいる。華やかなプレーがあったわけではないが、技術に長けたスペインのようなチームには、カルバハルと同様に、ロドリのようなしたたかな選手が効いてくるように思えた。

そして、前線の最後の一人に選んだのがヤマルだった。最優秀若手プレイヤーに選ばれたように、今大会の最大のサプライズ選手として取り上げられたのではないかと思う。ヤマルが持つと何かが起きるのではないかという期待に駆られる。今回のベストイレブンには選ばなかったが、スペインの左WGのニコ・ウィリアムズも合わせた両ウイングは、間違いなく今大会のスペインのストロングポイントだった。組織的に息詰まったときに、どちらかのサイドから個人の力で打開できる。ヤマルは、フランス戦のスーパーゴールもそうだが、得意のドリブルからカットインしてのシュートだけでなく、プレースキックの精度や決定機につながるラストパスのバリエーションも多い。ドリブル、パス、シュートどれをとっても精度の高いレフティーは、やはりメッシを彷彿とさせるものがあった。今後の世界を代表する選手になることが予想される。


以上が、EUROのベストイレブンの選出である。今回は、期待されていたチームがしっかりとパフォーマンスを発揮する大会で、決勝トーナメントに入ってからの試合は、どれもハイクオリティのものだった。ワールドカップの方が認知度は高いが、個人的にはEUROの方が好みだ。今大会新たに知った選手たちのクラブチームでの活動の観戦も合わせて、今後の観戦が楽しみで仕方ない。そして、他の観戦した人たちの感想も是非知りたいところだ。また、お酒や食べ物を囲みながら、ああだこうだと話したい。



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