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タンス三棹分の着物

実家にあるピアノを引き取ることにした。

幅145cm、高さ135cm、奥行き65cmのものを新しく家に置く、となると、まずは置き場所の確保が必要。ということで、和室の一角にあるスノコで作った着物の棚を押入れに押し込み、そこに置くことにした。ということで、押入れにそれだけのスペースが必要となり、大騒ぎである。

もとより片付けが苦手だ。いつか「整理収納アドバイザー」なる人に来ていただき、ぐっちゃぐちゃになっている家をなんとかしていただきたい、と思いながら、散らかっている状態を見せるのが恥ずかしくて、今に至る。(あれ、どのタイミングで来ていただくものなんですかね。)

今の家に引っ越してからもうすぐ10年になる。片付けたり、素敵なインテリアにすればそれなりに良い家のはずが、なんとももったいない使い方をしてしまっている。

着物はこのスノコの棚だけでなく、和ダンスがなんとあと二棹ある。どれもいっぱいだ。趣味の落語で年に数回着る機会があるので、なんとなく数枚手元に置いていたら、知り合いが次々と「もう着ないけど、捨てるのはしのびなくて」と譲ってくださり、どんどん増えていった。まったくと言っていいほどお金をかけていないのに、この量があるのはすごいと思う。

着物は好きだ。着た時にピッと背筋が伸びる。独特の匂い。帯が思った形に決まると嬉しい。着物と帯の組み合わせを考えたり、古い着物を手にして、その時代のことを想像してみたり。それほど詳しくはないけれど、デザインや柄でいうと、大正や昭和初期のものが好きだ。なんとも言えない色の組み合わせや、大胆な柄があったりして面白い。

今週末は姪の卒業式。「着物で行こうかな〜」と姉が言うので、一式見繕って持って行き、着付けをすることになった。訪問着と袋帯、諸々小物、どこからいただいたものか分からないものの組み合わせで全部揃った。

どこの家も着物を持て余しているという。といって、私のもとに譲っていただいても、私も持て余している。宝の持ち腐れとはよく言ったものだと思う。着物だけでなく、色々、持て余している気がする。

着物を着ると、その瞬間だけでもその後ろめたさが払拭されるので、気分がいい。着るにはちょっとエイヤっと気合がいるけれど。他に持て余しているものは、どう気合いを入れたら良いか分からず、つくづくもったいない人生だなと思う。

ピアノが来て、ピアノも持て余さないようにしないと。

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