「羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来」をみた
ジブリ的な要素をベースに、幻獣や妖精が当たり前に存在する広大な世界を旅するロードムービー的な前半部分からナルト、アキラ、ドラゴンボールを全部ぶち込んだようなド派手なラストバトルという満干全席みたいな映画だった。
旅好きとか外出できなくてイライラしてるひとにオススメしたい。
ジブリイズムを一番感じた風の表現について
この映画は全編にわたって常に画面の中に風が吹いている
物理的な風だけじゃなくて”心理的な風”というものが吹いていて、一番分かりやすいのはラストシーン
ムゲンの髪を揺らしてるのは物理的な風ではなくて、こっちの”心理的な風”
少し分かりづらいけど、地下鉄のバトルシーンのあとにビルの屋上でシャオヘイと話すフーシーの髪を良く見てると”心のざわめき”みたいなものが髪の揺れ方で表現されてる
フーシーとムゲンはあまり感情を表に出すタイプではないので、こういう髪の揺れ方でサポートすることで変に感情的な演技をさせることなくキチンと心理描写がされていて、本当に芸が細かいなと感心した
あと、物理的なほうの風の話だとラストバトルが終わったときに地上→ビル屋上→上空の順番に風の強さが描き分けられてて、もはや”細かすぎて伝わらない”レベルの芸の細かさだった
いきなり出てくる”霊域”というナゾ空間も、ふわっとした説明しかないわりに「よく分からないが、なんか特殊な空間なんだな」というのが直感的にわかるのは何故かと言うと、ずっと風が吹いてるこの映画の中でこの空間の中にだけ風が一切吹いてないんだよ(空が描写されてないのもでかい)
線の太さによる遠近表現について
この映画、手前のものは輪郭線が太く、奥に行くほど細くなるんだけど、3D的な立体表現ではなく”線の太さ”という平面的なアプローチで遠近感が表現されてるのがすごく面白かった。
これ単純だけどデジタル作画じゃないと出てこない手法な気がする(鉛筆で作画すると線の太さがここまで変わることはないので)
バトルシーンについて
地味だし短いけど画虎さんとのバトルシーンが個人的にベストバウト
他のバトルシーンと比べるとカメラの動きは平面的なんだけど、キャラクターが縦横無尽に動き回ることで奥行きのある画面になってる
導入のやりとりだけで「理由は分からないけど絶対このあとめちゃくちゃバトルになるヤツだ!!」って分かるのがすごい
画虎さんの描く絵”ネコ科の動物はメチャ上手いのに鳥とかオタマジャクシはだいぶ残念”というバトルに全く関係ない絵描きあるあるが無駄に細かくて笑ってしまった
地下鉄のシーンはバトルシーンとして良く出来てるだけじゃなく前半のロードムービー展開と後半の最終決戦をつなげる橋渡しの役割を完璧にこなしてる
シャオヘイの、ムゲンと人間に対する距離感が決定的に変わる理由がバトルの中でキチンと説明されてるのがすごい
電車の屋根の上でシャオヘイが自分からムゲンの横に行って座るとか、
女の子に「ありがとう」と言われた瞬間に地下鉄が地上に出て窓の外がパッと明るくなってシャオヘイの心理描写を背景で説明するとか、
シャオヘイのために戦うムゲンと、良心に従って行動する人間の姿がちゃんと描かれるのでこの変化に不自然さが無い
人間を傷つけることを厭わないフーシーと人間を守りつつ戦うムゲンという対立構造をキッチリ描く
(分かりづらいけどツーブロックの能力でふさがれたトンネルをぶち抜いて進む前にムゲンがレールを曲げていて、多分アレは後から来る電車が激突しないためなんだな)
二回目視聴で気づいたこと
一回目には絶対気づかないんだけど前半でシャオヘイを襲撃する三人組、明らかにあの状況を作るために金髪に操られた人間なんだな
あと、町の紹介をしてくれるお姉さんと師弟の会話シーンで一瞬金髪とツーブロックがうつりこんでる
まとめ
ベースはジブリなんだけど、食い逃げのくだりの画面の簡潔さとか花の妖精がバイクで去るときの2コマループ作画とかジブリでは絶対にやらないだろうな~という要素もテンコ盛りで、このバランス感がおもしろい
あと、食事シーンはファーストフードが一番美味そうに見えるとか、
個人の感想なんだけど、なんか「無垢であること」の軽薄さやいやらしさを感じなかった。
映画の中で扱われる”無垢さって大人を感動させるためのギミックになりがちなんだけど、シャオヘイの無垢さはどちらかというとゴクウとかゴンみたいな”危うさも含んだ子供らしい無邪気さ”として描写されてたような気がする
あと、ロジュの声が山口勝平かと思ったらキメツのイノスケの声優さんでビックリした。声優さんってやっぱりすごい!と感じた
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