時計との出会い後編:SEIKO5の魔力。
G-SHOCKよりも安く、遠目にはなんか高そうに見える(アー写でそれっぽく見えればいい)くらいの理由で手にしたSEIKO5。
初めての機械式時計との出会いだった。
厳密には見ていたが気付いていなかった。
父や母が着けている時計が機械式なことに。
だからROLEXがうん十万とすることに理解ができなかったのだ。
時計をシャカシャカ振って動き出したときを今も憶えている。
秒針がカチッ、カチッ、ではなく
チチチチチ…と細かく動く様。
シースルーバックになっていて、歯車やテンプが元気に動いている。
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無機質な塊だと思っていた時計に生命を感じたのだ。
心臓の鼓動のように脈を打ち、小さな部品ひとつひとつが一生懸命に生きている。
ほっておくとやがて止まってしまう。
なんとも儚く美しい、まさに生命の輝きだろうか。
一瞬にして心を奪われた。沼にはまるのに時間はかからなかった。
それから腕時計について調べまくった。
なぜ動くのか?構造は?
どんなメーカーがある?歴史は?
…
そして後々思う、初めて手にしたのがSEIKO5だったことがもっとわたしを夢中にさせた。
自動巻きローターが着いているが手巻き機構はない。
止まったら時計を振らないと動かない。
また、2本の内の1本は内部的に壊れていた。
不特定なタイミングで止まるしパワーリザーブが極端に少なかった。
オーバーホールの重要性を理解したし、
使っていて不便に思う点がいくつか出てくる中で、
それを解消するにはさらに上のブランドを求めるようになってしまった。
そして某時計店を訪れる。
目的はBell&Rossのレッドレーダーだった。
時計について調べているうちに見つけたモデルで、そのデザインに心奪われた。
ついでに気になる時計も一緒に見せてもらった。
初めて数十万の時計をまじまじと見て、手に取った。
圧倒的だった。
それなりに機械式時計のことを勉強して、
いろんな時計を画像や動画で見て、
最低限の知識は持ち合わせたつもりだった。
それはまるでテレビの向こうで恋い焦がれていた女優に対面したような衝撃、とでも形容しようか。
まったく画像とは比べ物にならない情報量だ。
細かな仕上げ、光の反射、腕にのせたときの表情。
わかりやすく高級時計とはなんたるかを知らされた。そこに言葉は要らなかった。
それからも浮気性なわたしはいろんな時計を見て、触れて、恋い焦がれている。
これが時計沼にハマった男の、ハマるまでのストーリー。
沼から引きずり出してくれる一本に出会うのはいつになるだろうか。
いや、出会わなくてもよいのかもしれない。