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おれはさびしくなるよ
Bob Dylanに「You're gonna make me lonesome when you go」という長いタイトルの曲がある。
原題はこのように長いのだが、邦題は「おれはさびしくなるよ」とシンプルである。
Dylanの1975年の「Blood on the tracks」というアルバムが初出なのだが、Dylan自身はこれをカントリーっぽく演奏している。
ただ、私は1dylanよりも、これをEverything but the Girlで後に有名になったことでも知られるBen Wattがカヴァーしたものの方が断然好きだ。こちらを最初に聴いたせいもあるかもしれないが。
先にも述べたように、Dylanのオリジナルはカントリータッチの味付けになっている。ナッシュヴィル辺りの郊外で、カントリーの好きなどっかの家族が楽しく演奏している、という感じがする。とても賑々しい。
これに引き換え、Ben Wattのそれは、スコットランドの、例えばアバディーンの北側にあるドンマスローカル自然保護区辺りの寂寥とした浜辺で、ギター一本抱えて1人で歌ってる、みたいな気がしてしまう。
実際、そういうアレンジだろうと思ってしまう。たぶん、Ben Wattの声質や歌い方も影響しているのかもしれない。
Ben Wattはこれを、Everything but the Girlの活動が本格化するより少し前にソロアルバム「North Marine Drive」に収録しているわけだが、この解釈にはBob Dylan本人すら敵わないのではないかと思っている。
いや、仮に彼が「私はそんな路線など目指していない」とでも言えば、話は別かもしれないが。
Ben Wattは今でこそダンスミュージック沼にハマってしまったが、元々こういうアコースティック風味のできる人。故にそれ自体は何ら驚くに値しないことだと思っている。
彼のアイディアならば、こういうことになるんだろう、という。
これが昇華すると、初期のEverything but the Girlにつながっていくわけだけど、そういうダンスミュージックの世界に行ってしまう前のBen Wattは、この際もっと評価されるべきだと思う。
なお、他にもカヴァーがある。Madeleine Peyrouxという人は、これをジャズ風に歌っている。
これはこれでなかなか面白い解釈だと思ったりする。私はこのジャズ風の解釈も嫌いではない。
これらのように、Bob Dylanの原曲が如何様にでも解釈を許容できるようなキャパシティがあったればこそ、様々な解釈が成り立つと思う。
やっぱり、Bob Dylanってとんでもない人なんだろう。
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