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【撮影テクニック】006 テーマ「錦鯉」

多くの日本人が忘れていた日本の「美」

「錦鯉」という一つのテーマと出会ったのは、長崎県島原市を訪れているときでした。城下町の路地にはいくつかの水路があり、そこに何匹もの錦鯉が泳いでいたのです。錦鯉がいる水路は日本では珍しくありません。この街の水路にだけときめいた理由は、「水」にありました。

こんこんと湧き出る地下水が流れているため、水がとてもクリアなのです。そんな透明度の高い水の中を泳ぐ錦鯉たちは、まるで空中を浮遊しているかのようでした。

長崎県島原市。赤や黄、金色の鯉たちは、太陽光に照らされてひときわ眩しく輝き、モノトーンの城下町に色彩のアクセントを与えていた。

ある日、湧水庭園四明荘の縁側に座り、目の前にある池に泳ぐ錦鯉たちを眺めてみました。赤、黄、橙、金、銀……と、実に鮮やかな色彩を持っています。ぬめりのある表皮が常に水で濡れているからでしょう、白や黒の魚たちでも艶やかに輝いて見えるのです。ゆっくりと動き回るカラフルな色彩が、日本家屋や日本庭園の美しさを引き出しているような気がしました。

私は、「錦鯉」はテーマになる、と確信したのです。

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