【企業担当者向け】フリーランスの価格設定は発注時の決め手
~ 見積書の作業単価/人日単価で見極める本当の適正価格 ~
フリーランスは価格を自ら決める
個人事業主、自営業者、フリーランスを生業にする以上、見積計算は必須事項でしょう。見積を出すということ、それは、価格、料金、金額を自ら決めることでもあります。当然ですけど、その金額は相手から納得されなければなりません。見積書を例に、当方の価格設定の基本的な考え方をまとめました。
【1】見積書の価格設定
※数ある業界のなかでもちょっと特殊なコピーライターという業種、しかも細々と営むいちフリーランスのニッチな経験値がベースだという点、ご了承ください。
※フリーランスやコピーライターの相場については、別の視点となるので今回は言及していません。
見積書の基本項目
見積書の基本といえば単価(※)でしょう。請け負った作業項目が単発であっても、複数であっても、「単価」が決まらないと全体の金額感が出せません。反対にいうと、ぶっちゃけ単価さえ決まっていれば、1本なら「単価×1本」だし、複数なら「単価×本数」という感じで、見積の計算ができます。
※単価とは
商品やサービスなどの1単位あたりの価格。フリーランスの単価であれば、請け負った仕事・業務・作業などにおける1単位あたりの価格。値段設定の基本のひとつ。
2つの単価
単価は「作業単価」「人日単価」に大別できます。コピーライティングでいえば、前者なら「コピーライティング1本の単価」、後者なら「同じくその作業1本に要する稼働1日の単価」。後者は8時間を1日とする「人日」(にんにち)単位(※)で、作業に要する人日×人員=工数で考えるのが一般的です。
※人日とは
その仕事の1日に要する人員数(通例1日8時間)。見積などの計算で使われる。作業に要する人員×人日=工数で考えるのが一般的。3人で3日かかるなら3人×3日=9人日。
どちらの単価で計算するか
結論からいうと、当方は「人日単価」が主流です。元々は計算がシンプルな「作業単価」で見積を出していましたが、実際の作業負荷と価格のバランスが不釣り合いになり、次第に「人日単価」が多くなっていきました。その理由は後述するとして、まずは「作業単価」「人日単価」を解説してみましょう。
【2】見積書の例
~ 作業単価と人日単価という考え方 ~
文章だけではアレなので、見積書っぽい体裁で解説していきます。あ。以下に挙げる価格・金額・料金類はあくまで一例、フィクションでして、実際に当方が採用する価格設定、料金体系とは関係ありません(謎)。ちなみに、当方の料金表は掲示していますが、こちらはノンフィクションです(大謎)。
作業単価による見積書のポイント
・各作業の単価(A)
・各作業の数量(B)
・(A)×(B) = 作業小計(C)
・(C)の合計 = 見積金額合計(D)
※この見積書はフィクションです(謎)
こちらは作業単価を基準にした例。作業単価(A)×数量(B)=小計(C)、そしてその合計となる(D)と、見積計算の考え方としては、とてもシンプルなパターンです。
人日単価による見積書のポイント
・人日単価(A)
・人日小計(B)
・(A)×(B) = 見積金額合計(C)
※この見積書はフィクションです(謎)
一方、こちらは人日単価を基準にした例。こちらは、人日単価(A)×人日小計(B)=合計(C)となり、先の作業単価に対して、見積計算の考え方が少し異なるパターンです。
【3】作業単価と人日単価の違い
かかる作業時間の性質で見極める
一見似ていますが、作業単価と人日単価とでは、それぞれ計算時の考え方が異なります(※)。ざっくりいうと、同一作業において、かかる時間が一定的なら前者、不定的なら後者が適していると思われます。
※作業単価と人日単価の違いとは
・作業単価 ⇒ 同一作業において、かかる時間が一定的な場合に有効
・人日単価 ⇒ 同一作業において、かかる時間が不定的な場合に有効
言い換えるなら、両者ともに「定性的な作業内容」において、ある程度の「定量的な作業時間」に換算することで価格設定の均一化をはかる、みたいなイメージでしょうか。
ちなみに、紙媒体・ペーパーメディアでの編集者時代は、いわゆる「ペラ(原稿用紙一枚)単位」「一文字単位」というように、作業単価にあたる見積設定が主流でした(少なくとも当方周辺の場合)。
人日単価を使う理由
そんな流れから、フリーランス独立当初は作業単価での見積設定でした。ところが、同一作業でも案件によってかかる時間の差が大きく、作業単価の不釣り合いが頻発。このように同一作業にかかる時間がバラバラな場合は、時間(人日)を基準とする価格設定でなければ、価格を均一化できません。
バイトちゃんの時給と同じ
まあ、わかりやすくいうと、同じ作業内容であっても状況によってかかる時間がバラバラであれば時給換算にすることでバイト代は公平になる、みたいな考え方と同じかなと思っています。前述した人日単価を採用している理由は、こうした経緯によるものです。
【4】作業単価と人日単価の共通点
作業単価と人日単価の対比
このように、実は性質が大きく異なる2つの見積計算方法ですが、いずれの単価で計算しても同額にならなければいけない、というのが当方の考えです。前述の見積書を例に、今一度触れてみましょう。
作業単価の例
こちらは作業単価の例。①~⑥の単価は(A)で、それぞれの小計は(C)になります。
人日単価の例
一方、こちらは人日単価の例。(前述ではあえて伏せていましたが)実際の計算では、人日単価(A)×各作業人日(B’)が、それぞれの「作業価格小計」(C’)となります。ご覧のとおり、価格は前者の作業単価の作業小計(C)とそれぞれ同額となり、当然合計も同額となります。
例えば、作業単価を基準にしたなら、それを前提に「人日数」を想定。あるいは人日単価から想定した各人日数を基準にしたなら、それを前提に「作業単価」を設定、という具合です。上記例の③④⑤は一式のため両者同一ですが、作業単価(A)①②⑥は、人日単価の人日数(B’)から割り出されます。
作業単価と人日単価の併用
このように、いずれの単価で計算しても同額になる、というのが当方の考え方です。なぜなら、2つの計算とも同額になるという根拠が価格に説得力を与え、発注者が納得できる要素のひとつになるからです。実際、新規の取引など、両者の計算方法で2つの見積を出すパターンもときどきあったりします。
【5】価格交渉促進月間
フリーランスの価格・見積に触れた理由
ここまで解説しておいて、何だか当たり前、個人事業主、自営業者、フリーランスなら常識的な内容かもしれず恐縮です。ぶっちゃけ今どきの見積ソフトなら、設定次第で簡単に計算してくれるんでしょうし。ただ、フリーランスの価格設定・見積計算について、今回取り上げたかった理由がありまして。
価格交渉のためのさまざまな施策
というのも、本稿掲載の3月は「価格交渉促進月間」だからです。中小企業庁を中心に、発注企業と受注企業の間で適正価格に基づいた適正取引がなされるよう、価格交渉にまつわるさまざまな施策が行われるそうです。フリーランスにとっても価格交渉に関する知識はしっかり理解しておきたいものです。
※出典:2022年3月1日(火)/読売新聞/朝刊8面(全面広告)
フリーランスと企業担当者双方のために
いずれにせよ、根拠に乏しい価格設定や言い値の横行など、あってほしくない行為への抑止はもちろん、当方も含めた弱い立場のフリーランスにとって適正価格設定時の一助になるだけでなく、発注者となる企業担当者にとっても、見積の判断基準のひとつになれば、これほどうれしいことはありません。
(了)
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