千歳をテクノロジー産業が集積する国際都市に!
こんにちは。
ニューヨークで建築・都市デザイナーをしている道産子・カジーです。
少し時間は遡りますが、2023年9月1日、ラピダス社・千歳工場の起工式が開催されましたね。会場には、ベルギーの半導体研究機関imec、米Lam Research、さらにはオランダASMLといった半導体関連企業のCEOが多数出席したそう。今後の連携を匂わせる知らせに、胸が躍ります。
一方、千歳市内でも住宅需要活性化が進み、地価の上昇率が国内トップ(30.7%)と、ラピダス効果がまちにも波及してきています。今後も、関連企業の市内進出に伴う雇用・人口増が見込まれ、宅地需要の増大は続く可能性が高いと予想されます。
いよいよ工場建設が始まり、住宅需要も増え、街が変わっていく期待感が高まるなか、「ラピダスの工場建設がもたらす千歳市・北海道への恩恵が間接的なもので終わってしまうのではないか」という不安も個人的に感じています。言い換えると、単なる工場としてのハコが空港脇にでき、人口が多少増えるだけでまち自体は特に変わらない、という未来を想像してしまいます。
私はこの一連のプロジェクト成功のカギは、「千歳がいかに国際対応できる街として機能していけるか・魅力付けしていけるか」、にかかっていると考えています。なぜなら、優秀な人材を国内外から集め長く住み続けていただくためには、住みやすい環境づくりが不可欠であり、10年先・20年先の未来を見据えた計画を今の段階からしていく必要があると感じているためです。
では、「国際都市」として機能していくためには、どのような挑戦が求められるのか。わたしは、大きく分けて①街づくり②教育、の2つに集約されると考えています。
⑴世界中の人が独自の文化を表現できる都市計画
千歳市は人口約10万人、道内では10番目の街です。
北海道の玄関口である新千歳空港を抱え、自衛隊基地ないし駐屯地で最も広い面積(約10.6平方キロメートル)を誇る、航空自衛隊千歳基地また陸上自衛隊基地を併せ持っています。このように、空港関係者・自衛隊関係者によって人口の大部分を構成している点がユニークな特徴といえます。
(参照:千歳市人口ビジョン改訂版)
わたしは、地理的利便性・豊富な自然環境・食の美味しさから言っても、千歳が30万人都市となりうるポテンシャルを大いに感じています。
同時に、いくら考えても千歳市に長く住み続けたい理由を見つけられません。。。(筆者:生まれてから成人になるまでのほとんどを千歳で過ごしてきました)
空港・支笏湖・さけのふるさと館(道の駅サーモンパークちとせ)・氷濤まつり、などなど挙げられるものはあれど、どうしても「単なる通過点」としての位置づけを払拭できないでいるような気がします。
(札幌や小樽などの都市に流れる傾向が強い)
したがって、千歳に長く留まってもらうための工夫として、まち全体で計画を練る必要があります。
1つの案ではありますが、千歳市街地における土地不足や日本の文化的背景を鑑みると、外国人居住者と地域に住んでいる市民を無理に混ぜていくのではなく、新しい土地を開拓・造成したエリアに「アメリカ村・チャイナタウン・〇〇〇」のように各々の文化圏に適した区画を創っていく。
そうすることで、来日した人々が馴染みやすい環境、さらには千歳の新しい観光スポットとしてもデザインしていくことができると考えています。
簡潔にまとめると、「心地よい環境づくり」と「観光スポットとしての魅力向上」を、街づくりを通して実現していくことが重要になります。
⑵海外要素を取り入れた新しい教育
半導体関連企業の集積により、優秀な人材の確保・育成が大きな課題と言われている中、大学機関にばかり焦点が当てられている気がしています。実際に、千歳市には公立千歳科学技術大学があり、北海道全体でみても優秀な工業系の大学が数多くあるため、教育機関との連携はもちろん重要になってくると思います。
(北海道大学を半導体研究の司令塔に人材育成を推進:https://www.hkd.meti.go.jp/hokcm/semiconductor/result/20230602/data10.pdf)
ただ一方で、海外から移住してくる家族連れ、そしてその子供たちが通う「インターナショナルスクール」のような教育施設についても、同時に考える必要があるでしょう。それは単に受け皿としての学校ではなく、千歳の新しいアイデンティティとなるような、街の象徴にもなりうると感じています。
これは半分妄想ですが、ラピダスと連携が予想される半導体関連企業をみてみると、研究者として来日する外国人は多種多様で、ダイバーシティに富んだ学校環境となる可能性が高いです。それは見方を変えると、他の教育施設にはない独自性であり、北海道の子供たちにとっても、若いうちからグローバル経験を積むことができる非常にユニークな教育施設となるポテンシャルを秘めている気がします。
この「超ダイバーシティなインターナショナルスクール」が千歳にできることで、札幌からわざわざ千歳まで通うような学生、もっといえば全国からこのような環境を求めて千歳に引っ越してくる学生や家族が出てくるかもしれません。そして、この認知がじわじわと広がっていくことで国際化の基礎ができてくるのではないでしょうか。
(そして、前回の記事でもお話した「スタートアップ拠点」も実現すると、まちにどんどん面白いことが起きてきそうですね~)
結論
ラピダスの千歳進出を、単なる間接的な恩恵で終わらせないために、
①未来を見据えた、長く住み続けたくなる街づくり
②海外要素を組み込んだ教育機関・教育制度の導入
これら2つの挑戦を「役所・企業・住民」が一体となって推進していく必要があるのではないでしょうか。
それが結果的に、千歳・北海道が「国際都市」としてグローバルに花開いていくことに繋がる、と強く思いますし、国内でも類をみない新しい千歳を見てみたい、と心から思います。