私の母の異色すぎる子育て(娘編←息子編はありませんw)
漫画家、作家のヤマザキマリさんの「ヴィオラ母さん 私を育てた破天荒な母・リョウコ 」を読んだ。
これを読んで自分の母親のことを思い出さずにはいられなかった。と同時に、最近娘を産んで「ちゃんとした子育てができるのか?」と不安に思っていた気持ちがいい意味でふっとんだ。
私の母親は、ヤマザキマリさんのお母さんリョウコさんの人生ほど波乱万丈な人生ではなかったけど、色々あってあの世代(現在60代)にしてはかなり変わった人生観・子育て観の持ち主で、それが今の私に大きな影響を与えている。
彼女(私の母)の子育て名言はいくつもある。例えば、
①「普通の何が面白いの?」(幼稚園児の私が普通のお洋服が着たい、と言ったとき)
②「女の子は真面目ないい子に育ててはいけない」(たぶん普通のお母さんは「まじめないい子」に育ってほしいのでは)
③「女の子は多少派手めに着飾っときなさい。その方が結果的に遊び人に騙されにくいから。」(普通のお母さんは、娘が派手な格好してたら「もーちょい地味な方が…」とか苦言を呈すと思う。しかもその理由が「遊び人に騙されにくい」って…)
④「進学校行ってもいいけど、それで普通の成績とるより、普通の高校に行ってトップ取れた方が、長い目で見たら自信が育っていいんじゃない?」(普通はより偏差値の高いとこに行ってほしがるのでは)
などなど。
でもよくよく聞いてみると、彼女なりに結構理屈が通ってたりする。
まず①「普通の何が面白いの?」という言葉。まぁ、面白いか面白くないかで言ったら、普通はあんまりおもしろくはない。
彼女は、声楽科に行って歌とピアノの先生になった人なのだけど、非常に偏った性格と才能なので、小さな町で「普通」を押し付けられることがいかに窮屈かをかなり小さいうちから身をもって感じていたらしい。
だから子供たちにはその窮屈を押し付けまい、と思っていたらしい。
私自身は子供の頃は「私は普通でいいのに」と思っていたが、大人になってみれば普通でなくてもいいというのはかなり楽だと気づいた。(そして私も母の血を受け継いであんまり普通ではない、らしい。)
②の「女の子は真面目ないい子に育ててはいけない」というのは、彼女のかなり強固な子育て信念だったようで、私も何度も聞いたし、周りの大人(彼女の夫=私たちの父含めw)が「もっとちゃんとした子に育てないと」とアドバイス?苦言?を呈してきても、頑として「私は娘たちを『真面目ないい子』に育てるつもりはない!」と抵抗していたらしい。
(その結果彼女の思惑通り?私も妹も「まじめないい子」からは程遠い子になった。)
幼いころから反逆児気味だった彼女には、仲の良い「まじめないい子」な友達が何人かいたらしい(あるよね、そういう組み合わせ)。そしてその「まじめないい子」な友人たちが、その「まじめでいい子」さゆえに、大人になってから夫に浮気されたり、借金されたり、姑にいびられても反撃も周りに助けを求めることもできなかったりと、散々な目に遭っているのを目の当たりにしてきたらしい。
そして、「まじめでいい子」だから、そんな夫や嫌な姑をさっさと捨てて離婚したり家をでたりもできない(それどころか、確か、彼女の一番の親友は苦労が祟って病気で亡くなったと言っていた気がする)。
そんなことがあってから、彼女は「世の中的には「まじめないい子(特に女の子)」が良しとされているが、まじめないい子が幸せになれるとは限らないらしい」、更に「まじめないい子にはなぜかダメ男が寄ってくるが、わがまま女には意外と優しくてしっかりした旦那(しかも奥さんを溺愛してる)が居たりするようだ(彼女自身もその例らしいが)」と悟ったようだ。
その結果、「自分の娘は、育てにくかろうが何だろうが、わがままに育てよう」と決意したらしい。(そしてそうなった。)
この例からもわかるように、うちの母は、(勉強はそんなに得意ではなかったようだが、)そういう「世の中の真理」のようなものを見抜くのは抜群にうまいのだ。長年反逆児として生きてきたから、いわゆる世間の「これが正解」みたいなことにうさん臭さや欺瞞を嗅ぎ取る能力に長けているのである。
③の名言「女の子は多少派手めに着飾っときなさい。その方が結果的に遊び人に騙されにくいから。」も、彼女なりに見つけたそういう「世の中の真理」の一つだった。
彼女の理論いわく、「遊び人は派手め女子ではなく、なぜか結局は地味で控えめな女子と結婚する。遊び人に騙されて苦労したくなかったら、派手め路線でいけ」と。
地味で控えめだと、男性とのお付き合いやお誘いも数が少なくなりがちだから、ここぞという結婚相手を選ぶときにダメ男でも気づけない(もしくは気づいてても「この人しかいないし…」ってなりがち?)けど、派手めだとなんだかんだ男性は言い寄ってくるから経験値が上がって、本当にダメな男は分かるようになるだろう、ということかな。
100%のケースにはもちろん当てはまらない(派手めでも遊び人と結婚して苦労してる人も芸能人とかいるし)けど、けっこう的をいてるなとも思う。
私は結局そんなに地味でもないけど派手にもならなかった(妹は昔は結構派手め)が、二人ともそれなりに交際経験を積んだうえでベストなパートナーを選べたのはこういう教えの効果もあった気はする。
最後の「進学校で普通の成績とるより、普通の高校に行ってトップ取れた方が、長い目で見たら自信が育っていいんじゃない?」も、よくある「えー○○さんとこの△△ちゃんって、XX進学校なのー?すごーい!」みたいな親同士のマウンティングにまったく興味のない母だから言えたことなんだろうなと思う。
そして、実際、地元の普通の高校の進学クラス(40人くらい)で、国公立orトップ私立大学進学を目指す友達と仲良く切磋琢磨できたことは、進学校に行って何百人という同級生と競うより、自分の精神衛生には何倍もよかった気がするし、成績の良しあしで自尊心を傷つけられる…みたいなこともなかった。
ヤマザキマリさんの「ヴィオラ母さん 私を育てた破天荒な母・リョウコ 」を読んで、「(ヤマザキマリさんのお母さん同様)うちの母こそ好きなことをずーっと続けて生きてきた人」だと気づいたし、自分の母親が、母親という以前に「好きなことをやり続けている一番身近な大人の女性」だったことは私の生き方にとてもいい影響を与えていると思えた(ヤマザキマリさんの場合もそうだと思う)。
読後、「好きに生きていいんだ」「好きなことをして生きていてもなんとかなるんだ」という安心感に包まれたし、そうすることが、娘への一番の人生のエールになるかもしれない、と勇気をもらった。
ヤマザキマリさんの「ヴィオラ母さん 私を育てた破天荒な母・リョウコ 」おすすめです!
(注)あくまでうちの母の話しなので、すべての人に当てはまるものでも、同じ育て方をおススメするわけでもありません。そして、母の育て方で娘として納得いかないことももちろん沢山あるので、私自身も「母の育て方スバラシイ!」と思っているわけでもありません。あくまで、「そんな育て方もあるのね」と面白く読んでもらえたら何よりです。